3000万語の格差――赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ

  • 明石書店
4.13
  • (51)
  • (38)
  • (20)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 814
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750346663

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ”3000万語”、”格差”など、タイトルが強烈で目を引きます。

    筆者はアメリカの医師であり、この本は翻訳本であるため文章が少し堅苦しく感じる本かもしれません。

    ですが子どもに対してどのような態度でどのような言葉をかければよいかなどの具体的な方法もしっかり紹介してくれますし、なにより著者から子どもたちへの愛情が感じられ、冷静な文章の中にもあたたかく丁寧な気持ちが織り込まれています。

    この本を読むと、なぜ言葉の発達が子どもの成長において重要なのか、言葉の発達のために親や保育者はどんなことができるかといった問いへの答えが書いてあります。

    全部を読まずとも、まずは具体的な行動の仕方が書かれている第5章から読んでみるのも良いと思います。

  • 3歳までの子どもを持つ親として必ず読んでおきたかった本。
    生後すぐから3歳までに保護者が話しかける量が脳の成長に大きく影響する。
    単なるハウツー本ではなく、淡々と研究、実践に基づいた結果について書かれている。

    まとめとしては保育園等でどんなに保育者が尽力しても一対一で関わり合える親子での対話には及ばない。子育て支援の場では、親子の関係性や応答性の質を高める支援内容が重要。
    本書はいわゆる早期教育を勧めるものではない。チューンインしていなければトークモアもテイクターンズも意味がない。
    子供がふと何かに気づき、これは?と思って周りを見たとき、チューンインしてあげられる大人がすぐそばにいることが大切。

    淡々とした文章の中に、著者の今を生きる子供達、未来の子供達への愛情が感じられた。


    以下各章ごとの大まかな内容をメモ。

    第1章
    保護者が話す言葉は子どもにとって最も価値のあるもの。
    小児人工内耳外科医である著者の経験より、3歳までに子どもが聞く言葉の量と質(言葉環境)が最終的な学業到達度の差につながるとわかってきた。

    第2章
    異なる社会経済レベルに属する家族の子供の語彙力を生後9ヶ月から3歳まで追跡観察。4歳時点の言葉の数を積算すると、社会経済レベルが高いグループと生活保護グループには保護者から聞く言葉の数に3000万語の差があった。
    ここでいう3000万語は語彙数ではなく話された言葉の総数。
    ただし、社会経済レベルが高い=言葉の量が多いというのは表面上の相関。実際には将来の学びの到達点を決めるのに最も重要なのは社会経済レベルではなく、初期の言葉環境である。
    加えて言葉の質も重要。
    1番重要なのは肯定的で、応援する意味合いのある言葉。
    それに加えて、靴を履いて、ここを降りて、といったビジネストークではなく、大きな木だね、アイス美味しいね、と言ったおまけの会話や、始まった会話がやり取りとして続くかどうかが脳の発達に必要な栄養。

    第3章
    脳は4歳ごろ、臓器としてはほぼ育ち終える。
    脳が発達するために不可欠な要素は安定。
    赤ちゃん言葉は音が誇張されており、赤ちゃんが音を理解し、言語を学んでいく手助けになる。

    第4章
    頭が良いといった人中心の褒め方よりも、頑張ったといった過程中心の褒め方をされた子供達の方が、グリット(取り組み続ける強さと意欲)を持っている。

    第5章
    言葉環境作りに大切なのは3つのT
    Tune In
    子供が集中している対象に気付き、その対象について子供と一緒に話す
    Talk More
    子供と話す保護者の言葉を増やす
    ex.このアイス、美味しい→この苺アイスはとても美味しいね、だけどすごく冷たい
    子供が話や想像を豊かにすることができるように話をする
    ex.子供が小さな穴を見つめている→丸い穴が空いているね、ふしぎだね、誰が住んでいるんだろうね?
    Take Turns
    子供を対話のやりとりの中に引き込んでいく
    何色?何?と言った?→既に知っている単語を思い出すように促しているだけ
    どうする?なぜ?→たくさんの単語を考え、思考のプロセスが始まる
    生後最初の数年間子供に本を読むかは学校入学時の準備度に影響を与える。
    正しい読み聞かせではなく、こでチューンインやトークモアの絶好のチャンスとなる。
    目標は内容の理解ではないため、子供向けの本を選ぶ必要はない。新聞、小説など何でも良いので声を出して読んであげる。
    テレビは3つのTどれを満たすこともなく、一方的であり、脳の学びには良い影響を与えない。

    第6章
    子供の知的な可能性に対して親がプラスの影響を与えると信じる心の枠組みが、子育てに影響する。

    第7章
    予防接種率や未熟児出生率といった健康バロメーターの公衆衛生指標に、言葉環境も追跡されるべき。

  • 一瞬かたっ苦しい論文調の本かと思いましたが、意外と読みやすかった。我が子はすくすく成長しておりこの本の中心ターゲットからは既にフェードアウトしてますが、自分と我が子とのいままでの関わりを思い返すのにちょうど良いきっかけになったし、今後の関わり方についても示唆に富んでおりました。

    ・始まった会話のやり取りが続くおまけの話通称「社交ダンス」が、言葉の複雑さを増し、姿勢の発達を促す。

    ・「頭が良い」と「グリットを備えている」人の違い。「頭が良い」と思っている人は何かで上手くいかないと、自分の頭が悪い、誰かが自分をワナにかけた、あるいは、そもそもこれは自分にとって大事なことでないと諦める。「グリッドをそ備えている」人は、何度も試してみようと、より真剣に取り組んでみるまでは諦めない。

    ・命令:子どもの意見を制限する。叱責や命令。
     提案と促し:子どもの意見や主張、選択を引き出す。

    ・4つの「T」Tune in, Talk more, Take turns, Turn off

    ・Talk moreは子どもが言っている内容を穴埋めして言い直すこと。

    ・命令するのではなく、「なぜなら思考」。何かするには理由があるのだと子どもが理解していく手助けをする。

  • 子どもを預けて、女性も社会で働く
    と言う風潮が強い中
    自宅で子どもを見るよさについてでも実は書かれた本。
    保育園では浴び切れない3000万語の言葉のシャワーを浴びることについて書かれた本。


    ちなみに3000万語は、
    3000万の異なる言葉ではない。
    同じ言葉が繰り返し使われることを前提とした
    話されている言葉の総数。



    生まれてから3歳までの間
    1秒間に
    700から1000の
    新たな神経細胞のつながりができる。
    これは、脳の働き全て
    例えば記憶、感情、行動で運動能力、もちろん言葉にも影響する。

    そして、弱いつながりや
    あまり使われないつながりを切り捨てつつ、
    よく使われるつながりは微調整し
    機能に特化した脳の領域を、つくっていく。







    保護者の話し言葉が
    知性
    子どもの安定
    粘り強さ
    自己制御
    さらにバイリンガルといったものに及ぼす。


    命令ではなく提案や促しを
    命令→子どもの意見を制限する、叱責や命令。
    提案と促し→子どもの意見や主張、選択を引き出す


    親が話しかけることが多いと、
    子どもの語彙は早く増えた。

    命令や禁止の言葉が
    言葉を取得する子どもの能力を
    抑えていることがわかった。


    聞いている語彙が豊かでないと、
    3歳時の達人が低かった。
    もう一つ家族の会話習慣。
    親同士があまり話さない家庭では
    子どももあまり話さないと言う結果が得られた。


    言葉の量が多い家庭は、
    量だけでなく
    言葉の豊かさ
    複雑さ
    多様性といった要素も見られた。
    さらに
    肯定的なフィードバックもあった。


    知性は男女差によって決まっており、
    変えらないと思っているのは女子生徒だけ



    数の話をするのも大事
    数字を数える、
    形の話をする
    図る(大小、いっぱい、空、長短、重さ、高低)
    など




    人中心の褒め方か過程中心の褒め方か。

    人中心褒め方(頭が良いなど)と言われた子と
    頑張った(過程中心)の褒められ方をした子。

    難しいけれどもたくさん学べるパズルと
    最初のパズルと同程度のパズルどちらかを選ぶように言われたら、
    頭が良いと褒められた子は優しい課題(後者)を選び
    がんばったと褒められた子は難しい課題(前者)を選んだ。




    3つのT

    tune in 子どもと一緒に話す
        1観察2解釈3行動
        「おいでおいで。積み木を積む面白いよ」
    保護者も物理的に子供と同じ高さになると効果的
    反対にコンピューター、タブレットスマホは依存を引き起こし、大人の注意を奪うから、良くない


    talk more ナレーションする、並行で自分がしていることを保護者が実況中継する
    こそあど言葉を取り除く



    子ども話す保護者の言葉を増やす
    ×保護者が子どもに向かって言う言葉


    言葉を膨らませる
    子どもが単語1つ言ったら
    保護者は2語、3語で答える。

    子どもが2語、3語使ったら
    保護者は短い文章を使う。
    「わんわん、悲しい」
    →「あなたの犬が悲しんでいるんだね」

    「ねんね」
    →「眠いんだね。もう遅いし、疲れているよね」


    take turns 開かれた質問(何、なぜ、どうやって)を使う
    閉ざされた質問(はいいいえで答えられる質問)は新しいことを教えたりする効果は限られる



    子どもと一緒に本を読むよさ
    ・印刷された文字に対する意識を高める
    ・物語を語る



    米国文化では物の説明を細くする
    色や形、大きさ数など
    日本の場合、物の関係や感情の話をする

    例えば熊の人形が2つ並んでいて
    1つの熊がもう1つの熊に手をかけていると
    米国では、
    色がとか形がとか大きさ同じと言う

    日本だったら、
    くまちゃんたち仲良しだねとかこっちのくまちゃんくまちゃんついてるのかななどと言う



    否定形では子供は育たない。提案、など



    ☆こそあど言葉を使わない方が良い理由

    子どもが語彙を増やす上でも、
    こそあど言葉を使わず、
    1つずつ別々の言葉を使って話そう。

    モノやコトの名前は、
    それぞれが別の言葉であり、
    別々の知識なので
    子どもにとっては、
    それぞれが別々の学び、育ちの後押しになる。

    子どもは何歳であっても、何の話題であっても語彙は応用できるのが素晴らしいところ。

    豊かな言葉に囲まれれば囲まれるほど、
    子どもはいっそうたくさんの言葉を聞いて
    言葉の意味をいっそう学び、
    学んだことを難なく
    使えるようになるでしょう。

  • 脳の発達、成長に基づく子供に関する様々な研究が行われ、明らかになった事実がたくさん書かれていて、育児をする上での参考になった。
    全保育士に読んでほしい。

    3歳までの子への声掛け、デジタルとの付き合い方、基数原理を身につけさせる等、とても大切なことであり知るべきことがたくさんあった。

  • 子供は生まれてから3年間のうちにどれだけ保護者から話しかけられたかでその後の知力、グリップ、粘り強さが決まる。定期的に読み直したい。

  • 「語りかけ育児」とともに、1年に1回くらい読み返したい良著。

    タイトルは、話しかけを積極的にしている親としてない親とでは3歳までに3000万語格差が出てしまい、その言葉の格差がその子の一生の頭の良さを決めるというもの。

    「語りかけ育児」が子供の月齢に合わせた内容であるのに対し、こちらの本はテクニックとして子供との向き合い方を主としている。
    自分の子供だけではなく、社会全ての子供に対してすべきだというところに懐の大きさを感じました。ついつい自分の子供に有利になるようにしたいと思いがちだけど、将来子供が大きくなった時によりいい社会になってるのは全ての子供に対する働きかけだもんね。
    できる範囲でやっていきたいものです。

    ところで、この本で主張されている「Tune in」って仕事場で後輩を育てる時に私が気をつけていることでもある。話しかけられた時はその人の顔をきちんと見て対応していくことが成長を早める気がしてます。子供も一緒よね。

  • 新米パパママにおすすめの一冊です。赤ちゃんの脳がどうなっているのか、どう発達していくのかが分かりやすく面白く説明してくれています。是非是非読んでみてください。

  • 結果をほめるのか過程をほめるのかでグリット(粘り強さ)の性質に影響が出る。「嘘をつくな」と「嘘つきになるな」という呼びかけだと、後者のほうが嘘をつきにくい。修正可能な余白を与えた呼びかけをするべき。

    ストレス量は自己制御の能力へ明らかに悪影響を及ぼす。独り言を言うこどもほど自己制御の能力が高い。

    (遊び終わった時に)「おもちゃを片付けて」と「おもちゃをどうすればいい?」は、後者がより実行機能の発達を促す


    Tune in = 子供の関心(世界)にTuneを合わせた行動
    Talk more = こどもが集中していることに対して言葉を増やす(ナレーションなど)。こそあど(代名詞)を除く。
    Take turns = 子供に話す機会(turn)を与える

  • 生まれてから3年間に子どもが触れる言葉の量・質が子どもの話す言葉の量や学習に繋がること。子どもに話しかけるだけが重要な訳ではなく、大人の話す言葉が多く語彙が豊かであることが大切であると思った。子どもの将来の可能性を広げるために、大人が子どもにできることをしなければならないと思った。

著者プロフィール

医学博士。シカゴ大学医科大学院小児外科教授、小児人工内耳移植プログラム・ディレクター。「子ども期初期の学びと健康のためのTMWセンター」(http://tmwcenter.uchicago.edu/)の創設者であり、共同ディレクター。著書に『3000万語の格差:赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』(2015年。邦訳は明石書店、2018年)。

「2022年 『ペアレント・ネイション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダナ・サスキンドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×