- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750354484
作品紹介・あらすじ
日本には、正規の滞在が認められない外国人を収容する入管収容施設がある。収容の可否に司法は関与せず、無期限収容も追放も可能な場所だ。差別と暴力が支配するこの施設は、私たちの社会の一部である。「不法な外国人」に対する眼差しにも迫る、果敢な試み。
感想・レビュー・書評
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スリランカ人女性収容者の死亡などで問題になっている入管(入国管理局)収容施設。いったい何が起きているのか。
研究者や弁護士、支援者、小説家といったさまざまな立場の人々が入管施設の現状や問題点について述べる。
入管施設では、以前から長期収容や不適切な環境なども問題視されている。
一方で、収容施設からの仮放免が認められても、移動の制限があり、仮放免許可期間延長のために出頭義務があり、また、就労の禁止が課せられる。
外国人の不法入国を防ぐためとはいっても、当事者には相当厳しい処置である。
政治的な理由などで自国にいられずに逃れてきた人であっても、日本の難民認定は著しく困難である。難民にもなれない、入管施設に入れられれば長期に出られないかもしれない、出たところで働けもしない、となると、「普通の暮らし」は手には入らない。誰かの支援に頼るしかない。息をひそめるように暮らしていても、強制送還される恐れは常にある。
入国管理法自体、かなり古いものである。敗戦後、多数の引揚げ(出国・入国双方を含む)があり、これに伴い、非正規な人や物資の移動もあった。不法入国や密貿易である。これを取り締まるために、入管法なり外国人登録令なりが出てきた背景がある。ある意味、最初から性悪説というか、「悪」を排除する発想から出てきていることになる。
近年はなくなってきているようだが、以前は子供であっても入管施設に収容される例もあったようだ。過剰な暴力が問題になったこともある。
そうでなくてもいつまで収容されるのか、この先どうなるのか、将来が見えない中では、心を壊す人が出るのも無理のないことだろう。
また、家族の中で誰かだけが強制送還され、再会までに時間を要した例や、結果的に他国に移住しなければならなくなり、人間関係や言語習得などを一からやり直さなければならない例もある。
コロナ禍で長期収容者が減った側面もあるが、そうはいってもまだ長期収容されている人もいる。
支援者の中には四半世紀以上活動している人もおり、一朝一夕で事態は変わらないのだろう。
時代の流れの中で、状況は変わってきているのに、法律や制度が追いついていない部分も多いように見える。
本書は入管を非難する側の視点のみであり、入管側の言い分も聞いてみたいような気はするが、それはまた別の話ということになるのだろう。
本1冊読んだだけで何か語るには難しい問題だが、難民認定制度と入管施設自体のあり方の両面から、改善がなされていくべきであるように思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても 信じ難いことが
この国で 起きている
弱い立場に追い込まれた
人たちの人権が侵害されている
しかも それが
「入管収容施設」という密接であることが
なお 悲しい
弱い立場の人たちが 救われない
その構造は あらゆるところで
噴出してくることだろう
なにもしなければ
なにも見ようとしなければ
なにも聴こうとしなければ
その 悪の手は
私たち自身にも 迫ってくることだろう -
考えてみれば生まれてこの方、この入管問題というものにちゃんと触れたのはこれが初めてだった。
ウィシュマさんという外国人が入管に収容されている間に死亡したという事件を耳にしたときはなんで病院に連れて行くなり医者に来てもらうなり出来なかったのだろうくらいしか、考えられず、この本を今回読んで衝撃的だったが、十数年も弁護士さんが問題に取り組んでも、少しは変わっても根本的なことは変わっていないとご本人が言うように、事はもう国の問題に違いなく、そしてその国は結局何事もなかったことのようにしてしまう輩が政権を握っている国なのだから、もう、ある意味絶望的なのだけれど、それでも読んでる間、さあ!オマエには何ができるんだ?って問いかける自分の思いが絶えず心臓を叩いているような気がしてた。
明日からまたこの問題については忘れたかのようになってしまうのか。お金も必要だけどお金だけではなさそうなこの問題に、自分は何をすればいいのだろうか?
苦しいよな… -
岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00630699
日本には、正規の滞在が認められない外国人を収容する入管収容施設がある。収容の可否に司法は関与せず、無期限収容も追放も可能な場所だ。差別と暴力が支配するこの施設は、私たちの社会の一部である。「不法な外国人」に対する眼差しにも迫る、果敢な試み。
(出版社HPより) -
知るべきことが、知らなくてはいけないことが、変えなくてはいけないことが丁寧に一冊の書籍にまとまっている。この書籍の出版だけで終わらせてはいけない。
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入管収容施設内で発生したスリランカ人女性の死亡事件に端を発して、近年大いに話題となっている入管問題について、歴史や法律の観点、また不当に扱われている外国人の人権を守ろうと戦う人々や団体の活動を紹介した一冊。
不法滞在。在留資格がないのに無許可で日本に隠れ住み働いている。日本で犯罪を犯した。そんな人だけが収容されるのだろうと本を読むまでは単純に考えていた。
しかし祖国で迫害され日本に逃れてきた難民や、長年日本で暮らしてきて自分の子ども日本の小学校に通っているような人々が様々な理由で在留資格を失い、司法による判断もなく入管の恣意的な判断で突然、施設に収容される。
過去には非常に劣悪な環境下で子どもまで収容され自由を奪われた事件も多数あり、今でも施設から出られず苦しんでいる人が大勢いる。これが本当に自身の住む日本で行われていることだろうかと目を疑った。
移民・難民に関する問題は様々な視点から考えなければならない。一方的に善悪で判断できない問題だと思う。ただ、その問題を問う前に日本人でも外国人でも同じように人権は守られなければならない。外国人だから、不法滞在者だからと暴力や不当に扱っていいわけでは断じてない。(そもそも不法かどうかも一方的な決めつけである場合もある)
この本を読んで、もっと入管問題について知りたくなった。特にウクライナ問題で日本にも多くの避難所や難民が訪れている今だからこそ学ばなければならないと強く感じさせる本でした。
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東2法経図・6F開架:329.9A/Su96n//K