動物園から未来を変える―ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン

  • 亜紀書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515670

作品紹介・あらすじ

ただ「動物を見せて終わり」じゃない。メッセージを伝えなければ――
世界を驚かせた革新的な展示の数々は、どのように作られているのか


来園者の行動を、意識を変えていく
アメリカの動物園で活躍する
日本人デザイナーの仕事に迫る


「動物園に来た人の首根っこを摑んで、自然の側に放り投げるような仕事をしたいんです」
革新的な展示を数多く世に送り出し、今も世界の動物園のお手本と評されるニューヨークのブロンクス動物園。その展示グラフィックス部門を牽引する日本人デザイナー・本田公夫に作家の川端裕人が聞く。日米両方の動物園を見てきたふたりが語る、これまで、そしてこれからの動物園。

感想・レビュー・書評

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  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB27879392

  • 読了時間約3時間40分。

     『動物園にできること』とともに、多くの動物園・水族館関係者に読んで欲しい本。

     動物園はどうあるべきか、動物園に何ができるか、日本とは違う米国動物園ならではの取り組みや悩み(展示チームと飼育チームの緊張感など)、動物園で教育活動ができているのか、教育活動が出来ていたとして人々の行動を変えているか野生生物保全の力になっているのか、といったことなどについて書かれている。

     特に印象に残ったところとしては、
     都市生活者に対し、自然に触れる体験を提供すべきであること。
     展示デベロッパーは展示意図として、なぜこの動物種をこの動物園で飼育するのか、そのメッセージは何かを定義し、一貫性にあるものにしなければならない。しかし、日本では展示設計に関わった人でも、これを説明できる人は少ないこと。
     日本では、動物を飼育して見せる環境を作って終わり、展示完成と思われていることも多い。しかし、野生生物をわざわざ遠く離れた地で飼育し、個体の福祉の犠牲を伴う可能性があり、数多くの種が絶滅の危機に瀕していることなどから、ただたんに野生動物を飼育展示するだけというのは、もはや正当化できるものではないこと。
     展示の意図がどれだけ伝わっているか評価が大切であること。
     習慣化した行動を変えることは難しく、知識として理解していても行動にできるかは不明であり、ならば行動を変えるために動物園水族館はどんなことができるのか、などの話である。

  • ふむ

  • 「動物翻訳家」→「動物園にできること」関連本。
    ブロンクス動物園の展示グラフィック部門の第一人者である本田公夫さんと、「動物園にできること」著者の川端裕人さん。日本とアメリカの両方を知り、エンリッチメント大賞の審査員でもある2人が、ブロンクス動物園をめぐりながら、動物園の展示の役割やコンセプト、動物園の社会的役割などを語る本。

    まずブロンクス動物園がすばらしい。コンゴ・ゴリラの森、マダガスカル、ジャングルワールド。現地の景観を再現しようとしている草原、動物との出会いにいたるまでの演出、工夫をこらした展示。動物や展示グラフィックの写真もたくさん挿入されており、今すぐ見に行きたい気持ちになる。

    革新的にみえるブロンクス動物園でさえ、不景気にともなう予算抑制、自然保護団体でもあるがゆえの部門間対立などの問題をかかえ、いまは停滞期とのこと。
    ましてや、ブロンクス動物園と比べると遠い遠いところにいる日本の動物園は、予算も専門職も運営自治体の理解もすべて不足しており、熱意ある飼育員が局地戦をしている状況。

    動物園は好きだし、だいぶ助けられた。あれがないと子育て詰んでた。
    なくなってほしくはない。
    これは、動物園をひとつ支えられるくらい大金持ちになるしかない!
    それができないうちは、少しでもお金を落とし、もの言う市民になろうと思う。

    ・ビッグ・アイデア
    ・エコフォビア
    ・保全心理学

  • 展示を作るにあたってひとつのテーマに結びつくという『ザ・ビッグ・アイデア』という概念は考え方として汎用性を感じる。

    主語・述語・結論を伴い、複合的ではなく簡潔であり、必ず1つだけにする。

    ここでは来園者だけれでも、人に何かを伝える提案書や企画書、はたまた会議のテーマでもこれは大事な考え方ですよね。

  • 革新的な展示を数多く世に送り出し、今も世界の動物園のお手本と評されるニューヨークのブロンクス動物園。その展示グラフィックス部門を牽引する日本人デザイナー・本田公夫に作家の川端裕人が聞く。日米両方の動物園を見てきたふたりが語る、これまで、そしてこれからの動物園。
    めちゃくちゃ面白かった。動物園なんて子供の時行って以来で、保全に興味はあるものの、具体的に自分には何ができるかといったら募金くらいしか思いつかない残念なヒトである。ブロンクスの展示を例にとりながら、先進的な動物園の取り組みや展示企画の裏側がどうなっているのかを川端さんが本田さんから聞きだすような構成になっているのだが、何もかも新鮮で、うわあー今すぐ見に行きたい!と思ってしまう。ブロンクス、NY行ったときに寄れば良かったなぁ。前半だけだとアメリカのブロンクス=最高と思ってしまいがちだけど、それだけで終わらず内部にいる人だからこそ分かる実情と課題、どう日本の動物園に置き換えていくかという話も興味深い。知識だけではなく、自然のために行動できるよう、まずは久しぶりに動物園へ行こうかな!

  • 著者の本田さん、川端さんと一緒に、動物園の展示というものを考えつつブロンクス動物園を巡っているような感覚に。この本が亜紀書房から出版されたということにも若干の驚き。

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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