屋上で会いましょう (チョン・セランの本 02)

  • 亜紀書房
3.64
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本棚登録 : 468
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516523

感想・レビュー・書評

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  •  二〇一〇年から二〇一八年までの間に書かれた九作が収められた短編集。アンデッドになったり、耳がクッキーになったり、夫が人ならざるものだったり、ファンタジー(?)っぽいものも多い。
     収録作タイトルを備忘のためメモ。先頭マークは好きな順に◎→◯→・。

    ・ウェディングドレス44
    ◯ヒョジン
    ◎ご存じのように、ウニョル
    ・屋上で会いましょう
    ◯ボニ
    ・永遠にLサイズ
    ◯ハッピー・クッキー・イヤー
    ・離婚セール
    ◎ヒタイとスナ

  • コロナで忙しくなってしまい、昨年末から読んでいてやっと終了。平穏な日々早くもどって…。うまく時間をつくらなくては…。

    この本はとても新しい感じでとても興味深い。SF?短篇それぞれのタイトルが秀逸!!保健室のほうもよもうかなー。

    ウェディングドレス44 一着のレンタルドレスをめぐるおはなし。

    ヒョジン 孝行って本当に大変。韓国の親子関係は、とても見習えない…

    ご存じのように、ウニョル 日本絡みのおはなし。史実?とおもってしまうよ。

    屋上で会いましょう 表題のフェミニズム×SF。魔法に頼りたいよ…

    ボニ とにかくわたしも過労死しないよう気を付けないと…

    永遠にLサイズ これ一番すき!サスペンスかと思いきや笑

    ハッピークッキーイヤー イヤーってそっちか。

    離婚セール 離婚を、こうやって前向きに乗り越えていくのいいなとおもった。

    ヒタイとスナ ファンタジー。ふたつの文化が正反対の国の戦争と和解。かわいい誤解。


  • 韓国における社会や家庭の問題を織り込んでいるのに、重くなく、ポップに軽やかに描かれていて、共感できたり気持ちが軽くなるところが好き。
    SFっぽいものやファンタジーっぽいものもあり、いろいろな味わいの作品が楽しめました。

  • 日常がMサイズだとしたら、そこからはみだした余剰分がLサイズの非日常ってことになる。大抵は喜劇が悲劇のふりしてるだけなんだけど、見誤ることのほうが多いのかもしれない。奇妙な、というよりヘンテコなお話。読後は憑き物が落ちたようにすっきりします。
    街路灯の指先に背中を押されると、カードを広げるみたいにいくつもの影が足元から伸びていく。未来の選択肢ってこれくらいはある。もうだめ、崖っぷち、八方塞がり、打つ手なし、万事休す、絶体絶命って状況に陥ってからが、本当の勝負。
    人を好きになるのも、死ぬのも、一度きりじゃないよ。

  • とても良かった。帯に書かれた「私が去った席に次に来るあなたへ」が読後はいっそう沁みます。

  • 『ヒョジン』だけ

  • ウェディングドレス44
    韓国が特に家父長制の深刻な問題を抱えているということではなく、同じ問題に我々が目を向けていないだけかもしれないな。
    社会問題がちゃんと卑近なお話に落とし込めてるのってすごいよねぇ。

    「自分は怒っていたのではない。怖かったのだ。これまで気にしたことがなかったが、二人には圧倒的な力の差がある。」
    これなんかびっくりした。…そうか、と。


    ご存じのように、ウニョル
    「何の問題もない。論文にできないから歌にでも、冗談にでもすればいい。それを知っている以上は大丈夫だ。」

    なんかすごい好きな話。
    創作はこの世知辛い世の中を生き抜く術でもある
    これがあれば大丈夫。不幸な状況を俯瞰して見る。これは全人類の命綱かも知れない


    屋上で会いましょう
    まさかの展開、まさかの召喚。
    こういう話だと思わなかったが、こういう話こそ読みたいのだ。召喚した夫の木質触感が最高。宙に浮いてるし。
    寓話だろうか?いやそのまま受け取りたい。そのまま実際にあった面白いお話として。
    「屋上で会おう、シスター。」

    ボニ
    人の死はこんなふうに描けたら理想だ。ユーモラスで悲しくなりすぎず。だしぬけで間抜け。泣かそうとしてないのにかなしみが身近で手触りすら感じる生々しい感傷的でない悲しみ。突然死ドットネット 死の地図 このアイデアだけで面白い。


    永遠にLサイズ
    とにかく退屈だった が素晴らしかった。
    干し柿を食べると消滅するゾンビ話

    「女は、まだ干し柿を食べないでいる。」

    ハッピー・クッキー・イヤー
    韓国に来た中東系の留学生が断りきれずに行ったバイトで耳が吹っ飛び生えてきたら煎餅だった話 豆の成分が含まれていないことはアレルギーの彼女が絶頂のたびに食べても反応を起こさないので分かっている その彼女を連れて帰ることはできず 連絡は取らなくなった強い意志で 今でも「韓国に置いてきたサフランの減っていく音が聞こえることがある」

    離婚セール
    あるスター友達の離婚をめぐる話 あらゆる角度からこの友達のスター性にスポットが当たる いるよねこんな人。

    ヒタイとスナ
    寓話感のある話が良い
    日本では一つの単語でも、それを表す言葉が無数にある国もあり。
    言葉が変われば意味合いも変わってしまう。翻訳って難しいね。本当の意味でその国の言葉で話しているニュアンスはその言葉特有のもの。翻訳した途端その国の言葉になりその国のものになる。もう元のものではない。それがいいところでも悪いところでも。

    あとがき「過去の空気感を懸命に再現し、実在していそうな人物がそのなかで暮らしていく話を、たくさん書いていきたい。歴史は、いつだって私の拠り所だ。〜失恋と失業の時期がたまたま重なってしまっててんやわんやしていたある日、とつぜん「干し柿は、実はアンデッドなんだよ!」と叫び、その訳もわからない発想をもとに築き上げた小説だからだ。今考えると、心のバランスを相当失ってしまっている状態だった気がするけれど、たまには干し柿のために、200字詰め原稿用紙280枚位、書いても良いのではないか。」
    後書きも納得の面白さ
    訳者あとがき 「〜落選の理由はいつも、「主人公に悩みがなく、明るい」から。〜読者が作品を「読む」ことによって、主人公との共感を得られる仕掛けになっている。〜あるべき4の人物の資料から、その人物がどのような生き方をしていたかと言う物語が語られる。しかしそれを語る主人公は、そんなものは自分が勝手に作り上げた「旅行」だと自覚する。「資料」は主人公に「読まれる」ことで、ある虚構の物語を生み出す。小説と言うのもまた、つながることで「虚構の物語」として生み出されるのではないかと言う気がしてくる。〜これはやはり、作品は読者に「読まれる」ことで成立するという意識によるもうだろうし、それは、作品を書き手と読み手とという「開かれたつながり」のなかにおいて流出させ続ける試みなのだろう。」すごいねー。さすが翻訳者ものすごく理解が深く楽し感心。

    ゾンビも召喚した異形の運命の夫も何度も生える耳もちゃんとある話だ。絵空事でなく、これは現実の話だ。ああ楽しい。

  • あらすじを読んで、何だかわかりにくい話なのかな?と思って読まずにいた1冊。
    読んでみて、書いてあることすべては理解できなくても「ああ、わかるかも」という感覚がどの作品にもあった。フェミニズムについての知識や感応性がない人が読んだらどういう感想なのかは気になる。

  • ファンタジー小説、なのかな。ちょっと面白さがわからなかった。

  • この、"屋上で会いましょう"は、短編。
    "フィフティ・ピープル"は短い話がいくつも合わさってるけど、群像劇のような作りで、最後みんなが同じところにいるというまとめのような章もありました。

    これはいろんなテイストがあるほんとうの意味の短編集。
    9作品入ってます。
    私が特に好きだったのは
    "ウエディングドレス44"
    1枚の飾りのないシンプルなウエディングドレスを、レンタルしていく女性たちの話。1人目、2人目…最後の遊びでレンタルしていく高校生までのこれも群像ストーリー。1人数行の話もあったり、何ページかの話もあったり。
    うなじにタトゥーを入れている六番目の女性は、最初はファンデーションで隠すか髪を下ろすかするつもりだったけど、男に偉そうに「ちゃんとした大人なら普通消すだろ」とかいろいろ言われて、平行線をたどった結果、『そのタトゥーはやはりクールで、ドレスともよく似合っていた。私の身体だもの。自分の好きにするから見たけりゃどうぞご勝手に。』と44人の中で最もクールなウォーキングを見せて式場に入る。
    男性との結婚するきっかけのストーリーもあるし、ジェンダーな目線で描かれているところも面白い。

    "離婚セール"
    離婚することになった友人が、持ち物をセールするというので家に集まった女友達数名。その間の友人との会話、仕事や結婚についてなどの話がしんみりして楽しい。
    最後はその離婚する人からみんなにプレゼント。彼女が作った美味しい漬物を作っていた漬物石も!

    "ヒタイとスナ"
    これは昔の物語。タイショクコクとショウショクコク
    大食で食べ物を作ったり食べることが大好きな海沿いに住む民族と、砂漠と山の方面に住む、落雁のみを食べているような民族。
    その民族が争いになり、相手国の言語が話せるからと駆り出されたヒタイという中年女性とスナという少年。言葉も習慣も違うから、例えばショウショクコクは宝物を贈っても食べることしか興味ないタイショクコクには意味のないことだったり。
    面白くてものがたりっぽいところが好きでした。

    ところで、このチョン・セラン

    「主人公に悩みがなく、明るい」という理由で「文壇」から落選させられているらしい。最終選考で落選し、「逃した賞金が、二億五千万ウォンにのぼる」
    私がこの作家を好きな理由はここなのかも。


    表題作の"屋上で会いましょう"は、会社の人たちとお昼時屋上で仕事や家のことやいろいろ話をしていたら、おまじないで結婚相手が出てくると言う…出てきたのは人ではなく、絶望を吸い取ってくれる生き物…
    うーむ。この作者、ホラーも書くんですよね。ホラーでもないけど、かなり変わった話。


    そんな変わった話も少し。そしてシスターフッド的な話も含めて、おすすめ!

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著者プロフィール

1984年ソウル生まれ。編集者として働いた後、2010年に雑誌『ファンタスティック』に「ドリーム、ドリーム、ドリーム」を発表してデビュー。13年『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳、クオン)で第7回チャンビ長編小説賞、17年に『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳、亜紀書房)で第50回韓国日報文学賞を受賞。純文学、SF、ファンタジー、ホラーなどジャンルを超えて多彩な作品を発表し、幅広い世代から愛され続けている。他の小説作品に『保健室のアン・ウニョン先生』(斎藤真理子訳)、『屋上で会いましょう』(すんみ訳)、『声をあげます』(斎藤真理子訳)、『シソンから、』(斎藤真理子訳)、『地球でハナだけ』(すんみ訳、以上、亜紀書房)などがある。

「2023年 『八重歯が見たい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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