70歳、これからは湯豆腐——私の方丈記

著者 :
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 77
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516752

作品紹介・あらすじ

ついに、そのときが来た。——老後はカッコよくいこう!

70代を現在進行形で生きるなかでの飾らない気持ちや日々の気づきを綴ったエッセイ。
酒や人を長年描いてきた著者ならではの大人の分別、わきまえ方、引き算思考など「70代以降の日々をどう生きるか」「自分に納得のいく老い方」を考え、独りで生きることを楽しむヒントが満載の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • まえがきに、表題に込めた意図をしたためている。

    齢70を過ぎた。仕事、家族、自分の目標等、おおよそ形になった。これから我が人生に残された日々に求めるのは『心の安泰』。その安泰を保つには何かしらの『指標』が必要。その視線に先にあったのは『豆腐』。豆腐はそれ自体でも美味い。鍋には欠かせず、最初は清らかな姿、最後はいろんな出汁を吸って、色を纏い一番美味しい姿に変わる。

    それって人間の営みそのものではないか-。『肉はいらないから、残ったその豆腐をくれ!』という人もいる。脇役な豆腐であるが唯一主役を張るのが『湯豆腐』。昆布を敷いた鍋に豆腐を沈め、ことこと煮るだけ。単純ではあるが味は奥深く、食べ飽きない。70歳、これからは湯豆腐だ。

    一茶は蛙に、ノムさんは月見草に、市井の人は根性大根に自身の生きる様をなぞらえたり、奮起を促す対象物としてながめる。それは古人がイワシの頭を信心することと同根かも。

    さて、本書。
    著者も齢74。表題が物語るように著者もいよいよ
    『老境』に至り、この手の随筆なら定番の『これまでの来し方』、日々の暮らしでの愉しみ、社会に向けては忌憚の無い意見を開陳、シニア男性には『自立』『ひとり遊び』の稿で『独酌作法』を伝授し、自分を肯定する場所として居酒屋での一人飲みは最適であり、男たるものバーの止まり木でカクテルを飲まないでどうすると扇る…、いつもの居酒屋評論ではない多面的エッセイとなっている。

    この中で、興味深く読んだのはシニア男性に向けて『妻離れ』の提言。白洲次郎の夫婦円満の秘訣『できるだけ一緒にいないこと』に倣い、著者は安アパートで良いから自宅近所に自分のアジトを作れ、妻と旅に出ても日中は別行動、夜は居酒屋で一日の行動を報告し合うぐらいが良い。リタイアしたのだから、妻に世話を焼かしてならない。現に著者は自宅から徒歩15分程の場所に職場を持ち、朝9時半〜夜9時まで過ごす。昼夜の食事は自炊。自宅で夫婦で食事するのは年に10回程度。そう、ほとんど別居状態。それが太田家の円満の秘訣と語る。

    とは言え、著者の場合、居酒屋評論家の第一人者として執筆依頼も多く、年金とは別の収入がある。

    老齢になっても、お座敷(仕事)に声がかかるということは社会との接点があり、適度な緊張感が老化の抑止となる。

    結論として、齢70を超えて健やかに生きていくには…
    ①自身の趣味と飲み代を支える程度の一定の稼ぎ
    ②身の回りのことは自分でこなす
    ③ひとり時間を楽しめる趣味と空間

    なんだかんだと言っても、結局先立つものの確保に行き着く。仕事を通じて社会との接点を持つことは健康維持にもつながり、趣味や交友範囲が広く行動力のある妻に向ける眼差しも穏やかになり、それは夫婦円満に結びつく。

    ここまで書いて頭をよぎるのは『衣食足りて礼節を知る』の諺。繰り返すが、心がけではどうにもならない。肝腎要は『生活の充実』。これが余生をゴキゲンに過ごすことになるってこと。

    一気読みの感想が『人はパンのみにて生きるにあらず』の教えに背中を向けるような思いを抱いた一冊。

  • 70歳を過ぎた。晩年だ。残り少ない日々をどう生きてゆこうか?今、求めるのは心の安泰だ。それを何に託そう。その答えが「豆腐」だ。70歳これからは湯豆腐だ。

  • なるほど、方丈記。これからの70歳は、こんなに悠長な生活できるかな?まだ、ガンガン働いているのかも?と思いつつ読了。
    早く居酒屋ひとり飲みの生活が戻るといいな。
    居酒屋遺産も再度メモ_φ(・_・
    それに、おばさんは、70歳になる前から湯豆腐だけど。

  • こんな生活ができるだろうか。

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著者プロフィール

1946 年長野県生まれ。グラフィックデザイナー。居酒屋探訪の第一人者。近著に『75 歳、油揚げがある』(亜紀書房)『日本居酒屋遺産 東日本編』( トゥーヴァージンズ) など。戦後の映画・歌謡曲の造詣も深い。「ぶらり旅 新・居酒屋百選」BS11で放映中。

「2023年 『映画、幸福への招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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