六十一歳、免許をとって山暮らし

著者 :
  • 亜紀書房
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本棚登録 : 106
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517995

作品紹介・あらすじ

「仮免に合格した日はうれしくて、お赤飯を炊いた」──ますます充実するクルマと、猫と、私の毎日。

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〈『五十八歳、山の家で猫と暮らす』に続く名エッセイ・第二弾 〉

「その歳で」と言われそうな、還暦の少し前、運転免許を取得した。
最初はおっかなびっくり公道に出ていたが、少しずつ行動範囲は広がり、ホームセンターや道の駅、いままで自転車とご近所さんに頼っていた場所へ、いつでも行ける。
五年を過ぎた山での暮らしは、水の確保と排水と、スズメバチの巣の退治や、書庫づくりと、さらにはじんわり忍び込むコロナ禍と、用事には事欠かない。

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「運転を始めて三年経つのにまだ慣れないし、どうも得意ではない。かといって、運転が嫌でたまらないかというと、そんなこともない。山並みが見渡せる見晴らしのいい道路を走っていると、さすがに気分がいい。とくに、背後にも対向車線にも車のいないときは、心おきなく運転できて、ああ、車の運転も悪くないなあ、と思うのだ」(本文より)

少し不便だからこそ、一日一日が、季節の巡りが、いとおしい。
ますます充実するひとり暮らしを綴る珠玉のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 暦生活おすすめの本を、ご紹介します。/平野恵理子さん|暦生活
    https://www.543life.com/osusumebooks3/

    エッセイスト・平野恵理子 山で暮らす飼い猫「ドレミ」にインタビューしました : 読売新聞(2021/12/08)
    https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20211208-OKT8T319444/

    歳時記@くらし
    https://alohafrost.exblog.jp/

    【予約】六十一歳、免許をとって山暮らし – 亜紀書房のウェブショップ〈あき地の本屋さん〉
    https://akishoboshop.com/products/9784750517995y

  • 小淵沢で暮らし始めた著者のその後。電動自転車だけの生活は、なかなか大変。意を決して61歳にして免許をとったそうです。そんな著者のコロナ禍前後の日々。大晦日に家の中で転んで肋骨を骨折したというオチ(?)で終わった。
    なれない運転は、くれぐれもお気をつけいただきたい。

  • 前作に続いて、いいなぁと思う山暮らしの日々。
    58歳で免許証をとって、また少し幅が広がった自然の中での1人暮らし。
    年越しあばら骨折り損日記は、痛々しかったけど、この暮らしの続きがまた楽しみ。
    イラストもかわいくて、素敵。

  • 『五十八歳、山の家で猫と暮らす』に続く、平野恵理子さんの山暮らしエッセイ。

    この第二弾のタイトルに勝手に親近感を抱いていましたが、免許をめぐるあれこれは本当に親近感。

    やる気満々で問い合わせたら「今は学生の予約でいっぱいだから4月まで待て」と言われたとか、最初のうちはミラーを見る余裕なんてないから見るふりしているだけだったとか、若い人に「運転怖くないですか」と聞いたら「全然」と即答されたとか、今まで行った一番遠いところはディーラーだとか、ああ、よくわかる。

    「どこかで自分が車を運転していることに、いまだに確信を持てていないようなところがある」というのも共感。

    ローカルな地名がいっぱいでてきて、20号線から見える崖が「七里岩」だと初めて知りました。
    あの高台を列車が走っているので、どこへ行くにも登りと下りが発生するんですが、韮崎を先端とする台地だったと地形図を見て納得。
    こういうのって道路を意識するようになって初めて気がつくんですよね。

    お節をきっちり手作りしたり、アバラが痛むのに書き初めをするほどお正月教に入信しているのは笑ってしまったが、恵理子さんは結構ちゃんと「ていねいな暮らし」をしている。ご本人にその気負いがないのか、「やってます」感があまりないのがいい。

    小淵沢の山村でのひとり暮らしは楽なことではないはずなので、これくらいのマイペースがちょうどいいと思われる。

    高原ホテルのヨゲンノトリ甘納豆や、高原スキー場のハーブ市は私も行ってみたい。


    以下、引用。

    33
    今日は若い女性と帰りに送ってもらう車で乗り合いになった。
    「運転怖くないですか?」
    ときいたら、
    「いえ、全然」
    と即答されて、さすが若い人は違うなあと思った。彼女が先に降りてから、送迎の運転手さんは、
    「でも、多少怖いと思って気をつけて運転していた方が安全ですから」
    と慰めてくれたのだった。

    36
    路上教習に出るとき、先生によっては、
    「じゃあドライブに行きましょうか」
    と言って出発する。それがこちらの緊張した気持ちを少し和らげてもくれて、ありがたい。とはいえ、そのドライブを楽しむ余裕はこちらには全くないのだが。

    62
    こんなふうに自分が使っている燃料のことを考えるのも悪くないな、と思うのだ。逆にいえば、いかにこれまで電気ガス水道を、それこそ湯水のように使っていたかということでもある。

    76
    山の家に住むようになってから、東京に出かけることを「上京」と表現するようになった。実際そんな気分なのだ。緑濃い山村からビルの林立する大都会へ出かけるとなると、前日から「明日は東京だぞ」と少しだけ緊張する。日帰りとはいえ、やはりそこは小旅行なのだ。

    109
    『ストレイト・ストーリー』、デヴィット・リンチ監督による一九九九年の映画だ。
    この映画を見た当時は自分で車の運転をするとは思っていなかったし、ましてや鹿の出るような山の中の道など、と他人事で終わらせていたが、どうして、鹿の闊歩する山村の道を自分の運転する車で走る身の上になろうとは。

    110
    「シカさん、シカさん、こっちにおいでよ~」
    真っ白い世界に凛と立っている鹿は、神々しかった。よかったらうちに来てお茶でも飲んでいってもらいたい気持ちだったが、やはり鹿にも都合があるらしい。

    151
    こんな年齢になってから免許を取ったので、どこか自分が車を運転していることに、いまだに確信を持てていないようなところはある。こんな自分が運転しているなんてすみません、という気持ちがあるのだ。

    183
    列車、中央本線で山の家に通っていたころは、韮崎から小淵沢に向かう途中に長く続く岩壁を見るのが楽しみだった。なかなかに迫力のある景観に、「韮崎グランキャニオン」と勝手に名付けて、韮崎駅を過ぎると必ず北側の車窓を熱心に眺めた。本家本元のアメリカはアリゾナ州にある「グランドキャニオン」に遠慮して、「ド」抜きでグランキャニオン。
    これは、八ヶ岳から流れてきた岩屑なだれがつくった台地なのだそう。小淵沢のあたりから韮崎まで続くその細長い台地は、韮崎辺で細くなり終わっている。その細く尖った形がニラの葉っぱの先に似ているので、「韮崎」の地名の由来になったのだとか。
    その「グランキャニオン」は「七里岩」という名であったことを、道路地図を見るようになってようやく知った。七里岩ラインは、そのグランキャニオンの上をひたすら走る県道一七号線だ。

    219
    家族そろってのお正月が何よりも幸せだったが、気がつけば一人で年迎えするようになって早や十年。で、一人になってもまだみっちりお正月はしたいと思っている。なにしろお正月教に一人入信しているので。

  • 様々なアクシデントもありながら 丁寧な暮らしに好感がもてます。運転免許取得で更に山暮らしが充実されますように。とはいえ 冬は厳しいですね。

  • 初めての作家さん。
    星3.5
    山の中での一人暮らしなど、よほど強い精神の持ち主なんだろうなと思うが、早起きができなかったり、苗を次から次へと買っても、そのまま放置したりと、親しみがわく。
    お正月教の信者ともいえるほど、きっちりお正月の準備をほぼし終えたところで、転んで怪我したところなど、私も転んだばかりなので、人ごとと思えなかった。

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著者プロフィール

1961年、静岡県生まれ、横浜育ち。イラストレーター、エッセイスト。山歩きや旅、歳時記についてのイラストとエッセイの作品が多数ある。
著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『わたしはドレミ』(亜紀書房)、『にっぽんの歳時記ずかん』(幻冬舎)、『手づくり二十四節気』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、『草木愛しや 花の折々』(三月書房)、『こんな、季節の味ばなし』(天夢人)、『きょうはなんの記念日? 366日じてん』(偕成社)、『あのころ、うちのテレビは白黒だった』(海竜社)、『庭のない園芸家』(晶文社)、『平野恵理子の身辺雑貨』(中央公論新社)、『私の東京散歩術』『散歩の気分で山歩き』(山と溪谷社)、『きもの、着ようよ!』(筑摩書房)など、絵本・児童書に『ごはん』『おひなまつりのちらしずし』(福音館書店)、『和菓子の絵本』(あすなろ書房)など、共著に『料理図鑑』『生活図鑑』(越智登代子、福音館書店)、『イラストで見る 昭和の消えた仕事図鑑』(澤宮優、角川ソフィア文庫)など多数がある。

「2023年 『六十一歳、免許をとって山暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平野恵理子の作品

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