オリエンタル・ファンタジー -アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界- (Pie × Hiroshi Unno Art)

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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756248169

感想・レビュー・書評

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  • 異国情緒満載で、幻想的で、エロティックで、享楽的。
    西洋からみた「アラビアン・ナイト」のそんな世界観を、フルカラーの豊富な視覚的資料と、簡潔かつ体系的な解説によって説明した作品集。

    国際博覧会(万博)が始まったことで、異なる文化圏に属する物の一定の視覚化と、それに伴うイメージ喚起がなされるようになった19世紀。
    ヨーロッパでは、オリエントへの憧れと「子どもの時代」の到来による絵本の流行とが相まって、数々のイラストレーターが、イスラムの説話集「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」の挿絵を描いた豪華な「絵入り本」が発表されるようになります。

    エドマンド・デュラック、カイ・ニールセン、オーブリー・ビアズリー等々…当代の挿絵画家たちは、限られた情報と、持ち前の想像力、そして、各々得意とする技法を駆使して、挿絵を書きます。
    そして出来上がった数々のアラビアン・ナイトはといえば、決して、アラビア風(イスラム風)とは限らない。

    あるものは中国的、またあるものは東南アジア的、またあるものは、北斎に代表されるジャポニズムの影響を受け、一部的には日本風だったりする。それらの融合というか、チャンポンなものも多くある。

    でも、そのズレと、画家の凝らした意匠と個性は、アラビアン・ナイトの「幻想性」かつ「異世界性」を強調しており、鑑賞者の心を躍らせる。
    そんな、稀代の挿絵画家たちの優れた作品を、B5大のフルカラーで、たっぷり楽しめます。

    そして、チャンポンな「異文化」受容は、絵にとどまらず、ファッションや映画、バレエ等の異なるジャンルへも強い影響を与えていく。
    この辺の歴史的な系譜は、海野さんの簡潔な説明のおかげで、スルスルと頭に入ってきます。

    異文化の受容は、理解よりも、憧憬と誤解によって始まり、「ファンタジー」として形に現れるものなのかもしれないと、強く思わされた、なんとも美しく、楽しい作品集でした。

    こんなにも緻密で美しい挿絵が入った「アラビアン・ナイト」が、どれか一つでも手に入るなら、喜んで買うのですが…残念ながら、今はどれも手に入らない様子。まあ、19世紀のヨーロッパの本ですしね…。

    個人的には、アラビア風というよりは、中国と東南アジア感がごちゃ混ぜのエドマンド・デュラックのファンタジックな作品と、アラビア風な情景を細かく書き込んだルネ・ブルの作品が好みでした。

  • 「千一夜物語」は惹き寄せて止まない魅力があってバートン版でもマルドリュス版でも味読しています。マルドリュス版はヴァン・ドンゲンの挿絵で、バートン版は古沢岩美という日本人画家によるものでした。開いてみるとオリエンタリズム溢れる蠱惑的な作品に出会います。デュラックのパドゥーラ姫とかいいですね。本書を拡げて読み返したくなりました。

  • 図書館で一目惚れして借りてきた本。母まで「かして~」と、言わせた華麗な挿絵たち。絵だけでアラビアンナイトの世界に引き込まれる!

  • とにかく贅沢な一冊。
    アラビアンナイトの世界にどっぷり浸かれる。
    アラビアンなのに、けっこう中華風だったり、ミュシャの影響があったりと解説も楽しい。
    こんな挿絵で本を読んでみたくなる。

  • &パン、で見かけて

  • 読書日:2017年4月13日-4月14日.

    多くの画家達が、中東の大河物語である『千夜一夜物語』の挿絵を描いています。
    総じて王に物語を語って聴かせたشهرزاد‎(Šahrzād)‎への憧憬が感じられます。
    描かれ始めた頃はIndiaよりもChina風のimageやIndiaとChinaを混ぜて描かれている事が多く、
    Europa人にとっても東方はChinaなのだと強く感じられます。

    各表現方法で印象に残った画家は以下です。
    ・白黒
     William HARVE. Henry Justice FORD.
     両作家共、中東の世界を忠実に伝え様と写実的に描いた点が良かったです。

    ・白黒赤
     Ronald BALFOUR.
     彩色作品もありますが、この3色だけだと塗り絵をしたいと思う程表現が細やかです。人物だけではなく背景に描かれている建物や花々等、服の皺等微細に描かれていて綺麗です。

    ・彩色
     Edmund DULAC.
     最も印象に残った作品は『第二の遊行僧の話』に登場する魔神Afrītと姫の戦いの様子で、姫君が両手から火を放っている姿に、彼女の勇猛さを感じました。

     William Andrew POGANY.
     所々に点描の様な技法を用いています。
     『カマラルザマンとバドゥーラ姫の物語2』で、夫のCamaralzamanとアルヌフス姫の歓談中に、中央に男装して立っているBadura姫の表情が印象的です。

     Virginia Frances STERRETT.
     女性らしい感性を色彩にも線にも感じます。
     線を細く、陰影を落とし表現する所はしっかり表現しています。

     Thomas MACKENZIE.
     女性が描いたと思わせる色彩や細部が細やかで、色彩表現やVTERRETT女史と同様に、ぼかした表現を用いています。
     『アラジンと魔法のランプ1』にて、孔雀と戯れる王女様の容姿が中国の姫君の様に描かれています。

     Rune BULL.
     海外通信人であったので、これまでの画家よりも現地の風景や服装に詳しいので、作風に活かされています。
     所々Alfons Maria Muchaの技法を取り入れていますが、中東らしい風景は決して損なわれていません。

    画家だけではなく、本文の文字をArabic風に描かれた作品や、『青髭』等Europaで広く知れ渡っている物語の登場人物を中東風に描かれていて、頁を捲る度に面白い内容となっております。

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