- 本 ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757102453
感想・レビュー・書評
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かなり面白かった。
ここでは生態系は、エコシステムみたいな自然の摂理みたいなことが、いわゆるWebサービスでも使う人達によって色々決まりやルール的な構造=アーキテクチャで変わっていく、ということを書いている。
2ちゃんねるやニコニコ動画、Winnyなどは今見ると古典的な感じもするが、ニコニコ動画は今もあるし、2ちゃんねるは死んでいない。Twitterやmixiなどの話もあるので面白い。
ユーザーとして、そしてそれらを社会学的?な分析を経て考えるとこうなるのだなあと、非常に面白く読める。
では、翻ってWebサービスを作る側はここまで考えているかというところで、考えればいいわけでもないし、最初からそこまで設計できるかはおいておいて、非常にこういうUIUXに直結するルールやサービスの面白さは大事だなと言えそう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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かなり面白く読むことが出来ました。
「アーキテクチャ」というものを分かり易く解説した一冊です。
文化は「場」に依存します。
そこで出来ることしか、文化として熟成することが不可能だからです。
そして、ITという世界に於ける場というものが「アーキテクチャ」です。
つまり、その「場」で何が起きるのかは、「アーキテクチャ」によって決定されると言っても過言ではないのです。
それくらい重要な概念にも関わらず、あまり重視されていないというのが現実だと思います。
本書は、その実例を提示していきながら、アーキテクチャが及ぼす影響というものを紐解いていきます。
ITというのは。その特性上、どうしても特殊なものとして捉えられがちです。
しかし、そこで行われている営みは、これまで行われてきたものと、それほど大きな違いはありません。
単に、その「場」を形成する前提となるものが、これまでの「場」とは違っているという、ただそれだけのこと。
つまり重要なのは、この新しい「場」だけをピックアップして論じるのではなく、過去との対比として検証していく事だと思います。
本書は、アーキテクチャという概念を主題に置くことで、新しい場の特性を見事に抽出して見せてくれています。
あとは、その特性を過去と対比し、より適切な方向性を見出していくことが重要だと思います。
その過程を経ず、単に新しいものとして枠を作成していくことは、いずれ取り返しの付かない断絶を産み出すことになる。
いまでも既に、その兆しは見え始めてきていると感じています。
ウェブは、「世界」を変えるためのツールだと思います。
その事を忘れてはいけないと思うのです。
変えるために必要なことは、そこが「自由」であるということです。
「慣習」には、本当の意味で人を縛り付ける力はありません。
しかし、それが法となり、アーキテクチャとして浸透してしまったとき、それは人を縛り付けます。
その為には、その「場」にいる人たちの自覚が重要になってきます。
自分たちの自由を守ることが出来るのは、自分たちしかいないのですから。
その自覚を得るためには、アーキテクチャというものを理解することが重要だと思います。
ここまで利用者が増えてしまうと、もはや明示的に統制を取ることは難しいでしょう。
しかし、優れたアーキテクチャを導入することによって、暗黙的に統制を促すことは可能です。
弱者を詰るのではなく、弱者を生み出さないような仕組みを構築すること。
それが、世界を変えるということだと思いますし、先駆者たちの使命だと思います。
literacyの有無を問題にするのではなく、literacyが不要となる社会を形成するべきなのです。
本書を読むことで、既存サービスを支えるアーキテクチャの概要は理解できると思います。
それを踏まえて、「次」を考えることが大切なのでしょうね。 -
mixiや2ちゃんねるといった日本特有のサービスの仕組みや技術的なアーキテクチャを解説した良書でした。
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現代の情報化社会を独自の視点で捉えている.
いろいろなネタがたくさん出てくるが,結論は何なのかいまいち判然としない.
自分で考えろということか. -
「すでに分析したように、ニコニコ動画の特徴は、実際には同じ時間を共有していない(=非同期的な)ユーザー同士が、あたかも同じ現在を共有(=同期的な)コミュニケーションを交わしている〈かのような〉錯覚を得ることができる点にありました。」
内容は、特にニコニコ動画の話は、感心した。mixi、ニコニコ動画、『恋空』を中心に書かれた本で、facebookやgoogleに関する説明はあっさりしていた。
この本を読む上で気になったのが、全体を通して回りくどく、わざと難しい言葉を使っていることだ。これから教養を身につけようとする人にとって、この本はとても知的に見えるのだと思う。
なぜ、日本のit企業と海外のit企業のクールさはこれほどまでに違うのか。 -
アーキテクチャと日本文化の絡みが面白い。著者はmixiが寡占する日本市場でFBは拡がらないと予測したがこれは外れましたね。その理由を考えてみるのも一興。おそらくは,招待制と足跡がポイントなんだろうな。
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社会学の観点で、日本におけるオンラインサービスにおける、情報設計を理解できる。
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mixiやWinny、ニコニコ動画やケータイ小説のように、日本には独自の進化を遂げたインターネット文化が多数存在している。それらを読み解き、日本におけるインターネットでのコミュニケーションを読み解く本。
『希望論』という本をきっかけに濱野智史さんに興味を抱き、卒業論文の参考文献探しを兼ねて読んでみた本です。
内容は、引用欄を読めばおおよそわかるかと思います。
2008年発行ということもあり、LINEに関する直接的な言及はありませんが、
"いうなれば、ミクシィは「足あと」機能というアーキテクチャ上の仕掛けによって、「儀礼的無関心」という規範的な振る舞いを、「強制的関心」―誰が誰に関心を示しているのかをすべて明らかにしてしまう―へと変換してしまうわけです。"
という言及は、既読表示機能という形で関心の有無を可視化する、というLINEの構造的特徴を彷彿とさせます。
また、
"たしかに、ミクシィ上の日記やコメントや足あとといった一つ一つのコミュニケーションは、さしたる内容を含んでおらず、まさに「繋がり」を確認するために行われているにすぎない。しかし、そのコミュニケーションを行うことを通じて、人間関係の微細な「距離感」を計測するということ。これこそが、ミクシィを利用する人々の隠れた(無意識的な)「利用目的」の一つだといえるのではないでしょうか。"
という言及も、外部との交流をほとんど前提としない環境で内容をあまり含まないスタンプのようなコミュニケーションを行うことで「繋がり」を確認させる、というLINEの特徴をやはり彷彿とさせます。
私は正直、
「mixiはタバコと呑みとパチンコの話にか流れてこない無内容な空間」("飲み"ではないところがポイント)
「LINEは暇つぶしのための雑談空間」
のように思い日本発のサービスをあまり積極的に使っていないので、筆者の立場に強く共感することができました。
ですが、進化の原動力が「繋がりの社会性」という言及が作中であるように、日本では内容よりも繋がっているといういう事実自体にコミュニケーションの重点を置くことが少なくありません。
日本に生まれ、日本語と日本人としてのアイデンティティをベースに成果物を出す上、こういった日本特有のアーキテクチャを理解した上で人々に影響を与えられる枠組みを考えていきたいと感じました。
著者プロフィール
濱野智史の作品





