我々は、みな孤独である

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413619

作品紹介・あらすじ

探偵・茶畑徹朗(ちゃばたけ・てつろう)の元にもたらされた、
「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。
前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、
調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。
果たして犯人の正体を暴くことはできるのか? 誰もが抱える人生の孤独――死よりも恐ろしいものは何ですか。
鬼才がいま描く、死生観とは。著者7年ぶり熱望の傑作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 前世で自分を殺した人物を探してほしいとの依頼を受けた探偵。探っていくうちに、夢に出てくる光景と一致していき、さらに深く調べていくことになる。従業員の借金に端を発したマフィアからの逃走というバイオレンスも含みながら、真実を探していく。

    主人公のキャラのせいか、ちょっと雰囲気が違うなと思いながらも、悪の教典や新世界よりでもみられるバイオレンス描写と現実と異世界が混じるように話が進むところは、作者らしい感じがした。

    前世をめぐる話と借金をめぐる抗争が、ちょっとパラレルな感じがした。話が交わらないわけではないが、ちょっと落ち着かない展開に思えた。

    突き詰めていった結果は、ちょっとどうかなと思ってしまったし、これまでもない話ではないかと思うが、おもしろいと思った。



  • 貴志祐介先生の著作ということで期待しすぎなほど期待してしまったけど、いや、面白かったんだけど、推理小説と思って読まない方がよかったな。
    SFとスプラッタ。
    そう思って読めば、なかなか面白い。

  • 敬愛する貴志祐介さんの作品。作品は全部読んだと思っていたのに「単行本」というまだ見ぬ世界があったとは、、、赤面赤面。若輩者には100年かかってもこの世界のことはわからなそうだ。さてこの作品だが「我々はみな孤独である」そんなの当たり前だ。一生かかっても誰とも分かり合えるもんか!ひねくれ坊やはそう思っていた。だって簡単に分かり合えるなら人類みな兄弟を超えて一卵性双生児であるからだ。

    タイトルからは想像がつかないが、これは探偵モノである。しかし探偵モノとはいっても「密室」も「トリック」も「証拠」もない、雲を掴むような説明しかできない物語である。頭のいい諸君ならもうわかったかもしれないが、そう、これは依頼者の前世を調べる探偵のお話なのだ。ちなみに貴志祐介既読者に補足しておくと榎本探偵シリーズとは別物なので悪しからず。

    この作品では、たとえば頭の良さを存分に活かした読者を唖然とさせる名推理も、姑息にも行間の隙間をつくような叙述トリックもなく、ただ独特で奇妙な世界観と、気づいたらいつの間にか繋がっている狸に化かされたような感覚が広がっているだけである。世界観を詳しく話したいのだが未読者の楽しみを奪ってしまうのは忍びないので泣く泣く我慢する。が、実際のところ自分も前世について全く同じように考えたことがあり、同じことを考える奇人がこんなに身近(一方的に)にいたのかと感動したものである。しかしよく考えると僕の考えの元になっているのは子供の頃に読み耽った本達であり、その中に貴志祐介先生もど真ん中にあぐらをかいて座っているのだから影響を受けていただけだろうと思い直すことにした。

    この本を通して前世はあるのかないのか、あるとしたらどんな仕組みなのか、思考の深みにはまっていくところまでがこの本の遠足です。たまには「そんなこと考えても意味がない!」「なんの価値にもならないじゃないか!」とかつまんないことは言わずに、無駄なことを考えてみても良いのではないだろうか。

  • これは面白い!題名や表紙の絵柄から想像できる以上にハードな内容であるが、貴志祐介らしい作品。ちょっと変わった探偵ものかなと思いながら読み進めると大傑作『新世界より』を彷彿とさせる広がりを感じさせる世界観が表れるところは、身震いしてしまう。哲学的な展開になっていくが、SF的な広がりの中で語られるので何となく納得感をもって読み終える。一気読み必至の傑作。

  • 前世の犯人を探してと依頼をされた探偵、茶畑。
    腐れ縁のヤクザ、怪しい占い師など様々な人と出会いながら調査を進めていきます。中には依頼人と同じ前世を見たという人も現れ、話がなんだかごちゃごちゃしていきます。
    夢で見たとされるあまりにも鮮明な出来事の情報を頼りに茶畑はある真実に触れることになります。

    途中、グロテスクな表現が出てくるので、苦手な人は気をつけた方がいいかもしれませんね。

    後半、茶畑は最後にある結論に至るわけですが、冒頭に占い師が言っていた意味深な言葉などは何だったのか解明されていきます。
    それを受けて、今度は読み手に降りかかって来るように思えましたね。
    物語のラストもふわっとしているので人によって捉え方が変わりそうです。私は読んだ後、流石に引き摺ってしまいました。

    好き嫌いはあると思いますが、私はどっぷりはまって一気読みでした。

  • 久しぶりの貴志祐介の作品だった。個人的に思うことだが、この作者はアイデンティティに関する内容が入る作品があると感じる。

    高校生の時に初めて読んだが、何となく自分という存在が不思議に感じた、現実から離れた気持ちになったのを覚えている。

    現代では孤独感が高まっていると思う。時代が変わり、環境が変わり地域、世帯など感じる機会は多いのではないか。そんな中でこの作品はそれに対して「孤独である」という言葉、内容を通じてある種の温かさを感じた。

    思想的な要素は入るが学生、また大人でも自分を見つめ直す本として、貴志祐介はいいなと思う。

  • 久々の貴志作品。

    いやぁ~丹野狂ってましたねぇ~。

    人間が活け造りにされるって...本の世界でしか体験したくないです(><)

    あっ、でも本作の主人公は狂った丹野ではなく(いや、ある意味では丹野も主人公なのだが...)、丹野の小学生時代の同級生でもある探偵の茶畑。

    貴志作品でまさかの謎解きミステリー?って、そんな訳ないです。

    いや、でも確かに謎解きの要素も.........

    殺人は起こります。

    探偵茶畑がそこに隠された謎を解き明かし...ってな普通のミステリーでない???

    でも...茶畑は結局自分の中で答えを見つけるんだよなぁ...

    う~ん......

    物語の前半で私が生まれ育った地方の方言が出てきただけでなく、本作にはチョイ役で私の本名も登場!

    貴志先生ありがとう!

    読み終えたからこそ「我々は、みな孤独である」の意味と、カバーデザインの旨さに納得も、やはり待ち受けていたのはまさかの真実。

    この世には現世を生きる自分しかいないとなれば、自我を持った各人は全て同一人物...

    それって絶対的に絶望的な孤独ですよね...

    普段から孤独感に苛まれている私なんてまだまだあまっちょろいってことかな。

    輪廻転生...過去(ここで言う過去とは過去世)の記憶...テレパシー...たった43,200,000,000年先で亜未と再開するまで600,000,000人の72年の生涯を経験しながらこの物語は語り継がれていく。

    壮大過ぎる...


    説明
    内容紹介
    探偵・茶畑徹朗(ちゃばたけ・てつろう)の元にもたらされた、
    「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。
    前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、
    調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。
    果たして犯人の正体を暴くことはできるのか? 誰もが抱える人生の孤独――死よりも恐ろしいものは何ですか。
    鬼才がいま描く、死生観とは。著者7年ぶり熱望の傑作長篇。
    内容(「BOOK」データベースより)
    探偵・茶畑徹朗の元にもたらされた、「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。果たして犯人の正体を暴くことはできるのか?
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    貴志/祐介
    1959年大阪府生まれ。京都大学経済学部卒。96年「ISOLA」で日本ホラー小説大賞長編賞佳作を受賞し、『十三番目の人格ISOLA』と改題して刊行される。97年『黒い家』で日本ホラー小説大賞、2005年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞、11年『ダークゾーン』で将棋ペンクラブ大賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 著者七年ぶりの長編!これは読まなくては!と勢いで借りて読んだわけだが、傑作感がなかった。新世界より、悪の教典、クリムゾンの迷宮、天使の囀り、ダークゾーン、ISOLA…過去作が偉大過ぎる。

    偶然先日読了した「夢魔の牢獄」と同様に”夢”が鍵になっている。前世の夢を見た人が、前世で自分を殺した人物を探してくれと探偵の茶畑に依頼するところから物語は始まる。現実主義の茶畑はそんなもの信じていないのだが、経営状態からその依頼を受けることにする。調査していくと前世の存在を肯定する方向になっていく。真理を知るという人物の存在。ヤクザやマフィアが絡んだ暴力シーンもある。

    サクサク読めて面白いのだが、何か腑に落ちない部分が。過去の傑作を超えることはない。

  • しがない探偵の茶畑は、クライアントから、(夢に見たという)自分の前世で起こった殺人事件の捜査を依頼される。それは、播磨の農村で五百年前に起こった水争いを巡る事件だった。多額の報酬を提示され、受けざるを得ない茶畑だったが…。

    ハードボイルドタッチのオカルトミステリー。東日本大震災モノでもある。

    茶畑の助手でシルバーキラーの毬子、不気味なサイコパスのヤクザ、丹野、世の真理を知る霊能者、賀茂禮子、メキシコ・マフィア等が絡んで、物語はスリリングな展開を見せるが、謎は深まる一方。読んでいてドンドン引き込まれていく。

    ただ、ラストはちょっと失速ギミ。確かに突拍子もないオチではあったが、知ってしまうととても正気ではいられなくなる、という程でもなかったかな。宇宙の深淵を描くのであれば、もうちょっとページを割いて欲しかったし。なので星4つ。

  • 特殊設定の論理的なミステリーかと思いきや途中からオカルト、そしてスプラッタホラーテイスト。終盤は哲学的。グロさも超越した貴志祐介“らしい”死生観が描かれる。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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