チグリジアの雨

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.84
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本棚登録 : 313
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758413954

作品紹介・あらすじ

命の重さの重要性を問いかけ、連鎖する“いじめ問題〟に一石を投じる、青春ミステリ小説。
東京の進学校に通っていた、高校一年の成瀬航基は、母の再婚をきっかけに、ある田舎町に引っ越すことになった。
転入して間もない学校生活は順調に進んでいたが、そんな状況が一変し、突然いじめのターゲットになってしまう。
いじめは次第にエスカレートしていき、航基は身も心も耐えられなくなっていく。
不条理な目に遭うたびに心は削られ、誰にも相談できずに、我慢の限界を迎えた航基が出した結論は「死」。
地元で『ゴーストリバー』と呼ばれる河を自殺の場所に選ぶが、
その河でほとんど学校にも登校せず、真面目に授業も受けない、クラスメイトの月島咲真と出会う。
そんな咲真が航基に対し、「報復ゲームに参加しないか」という衝撃的な一言を放つ――。

感想・レビュー・書評

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  • どれほど残酷な記憶だとしても、
    君と一緒に過ごした日々を、
    僕は永遠に忘れることはできないだろう。

    今も世界のどこかで、
    紫色の雨が降り続いているはずだから。


    東京の中高一貫校から母の再婚によって転校した成瀬航基は転校先の高校の体育教師である継父が生徒の安藤菜々子にセクハラをしたという噂が流れ、クラス中の酷いいじめに遭います。
    いじめの首謀者は絹川淳也で菜々子に好意を寄せる男子生徒です。

    家族とも上手くいかなくなった航基は、遺書を書いて自殺をはかろうとしたところ、同じクラスの月島咲真に止められます。

    そして航基は咲真の手引きによって同じくいじめに遭っていた青柳麻衣と共に三人で淳也を殺す一歩手前まで痛めつけます。

    咲真は、11月25日を「世界報復デー」として理不尽に人を苦しめた奴らに同等の痛みを感じさせる日にするのだと言い放ち、航基のパソコンから世界中の子どもたちにメールを送っています。

    全部ストーリーを紹介したいくらいですが、無理なので端折りますが、咲真はなぜか学校に来なくなり、航基は咲真の言葉によって真実を知ろうとし、継父の無実を知り、いじめていた生徒たちに自力で反撃します。

    そして最後の第四章は涙腺のそれほど緩くない私でも涙なしには読めませんでした。
    描いてある言葉、すべて書き写したいくらいですが、この作品に興味を持たれた方は読んでみてくださいとしか言えません。

    航基と咲真の間にはこれ以上ない絆が結ばれていました。
    咲真の世界に発信した想いも届けられるようにと願ってやみません。

    私は日本の15歳から20歳の死因のトップがまさか自殺だとは知りませんでした。
    そうした子どもたちにも是非読んで欲しい本です。
    小林由香さんの本はこれで4冊目ですが、一番よかったです。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんばんは♪
      まことさんのレビューで読んだ時のあの涙と思いがよみがえりました。

      本当にあの手紙といい、グッとくるものがありまし...
      まことさん♪こんばんは♪
      まことさんのレビューで読んだ時のあの涙と思いがよみがえりました。

      本当にあの手紙といい、グッとくるものがありましたね。
      この作品で救われる中高生が一人でも多く増えますように、私もそう願います。
      2021/12/01
    • まことさん
      くるたんさん。
      あの手紙は、涙なしには読めなかったですよね。
      思春期の子どもの死因が自殺とは、知りませんでした。

      そして、くるたんさんがお...
      くるたんさん。
      あの手紙は、涙なしには読めなかったですよね。
      思春期の子どもの死因が自殺とは、知りませんでした。

      そして、くるたんさんがお元気でよかったです(*^^*)
      2021/12/01
  • 多くの読友さん推薦本。これまでも居た堪れない小林由香さんの強烈な社会風刺、それだけではない命の大切さ、大人に「辛い」というのを伝える大切さ、また友人への感謝。色んなメッセージが込められていた。母親の離婚、再婚、これに伴う壮絶な苛めをうける成瀬。彼は自死を決意する。しかしそこに現れた同級生・咲真。彼らが「復讐」を決意する。咲真の過去の経験が明らかになるにつれ、成瀬、咲真を応援している。人の痛みとは何か?それは痛みを知るまで分からないという矛盾を秘めているのかもしれない。誰かに役立つ人生、素晴らしい。⑤↑↑

  • 涙が満ち溢れた一冊。

    なんて苦しみ、哀しみ、涙が切実に聴こえてくる物語なんだろう。
    今、抱える苦しみの世界。
    それはとてつもなく大きな無限の苦しみの世界。

    それが小さな出会いで変わる。
    意味ある大きな世界へと変わる。

    そんな想いと願いが満ち溢れていた時間に涙が満ち溢れる。

    終盤は思わず自分も叫び出しそうな衝動に駆られた。
    どうか叫びの声を大切にして。
    そして自分の心を苦しみの殻から救い出し、息をつかせてあげて。

    発信した言葉一つが想いが枝葉になりやがて大きな救いの森になるはず。

    そんな希望と救いの雨が涙と共に心に強く降り注ぐ。

    • まことさん
      くるたんさん。こんばんは!

      なんか、しばらくお見かけしない気がしていたので、心配していました。具合でも、悪いのか、それとも、止めちゃったの...
      くるたんさん。こんばんは!

      なんか、しばらくお見かけしない気がしていたので、心配していました。具合でも、悪いのか、それとも、止めちゃったのかな?とか。
      また、久しぶりにレビューが拝見できて、嬉しいです♪
      この作品は、私も読みましたが、小林由香さんの今まで読んだなかで、一番よかったです。
      最後は、私も涙しました。

      私も、最近、目が疲れるので、読書量を減らそうかと、思っていますが、ブクログには来るつもりなので、また、よろしくお願いいたします。
      2021/12/01
    • くるたんさん
      まことさん♪お久しぶりです♪ありがとうございます♡

      私は身体は元気なんですが、ちょっと家族の心配事に見舞われてまして。>_<。
      なかなか読...
      まことさん♪お久しぶりです♪ありがとうございます♡

      私は身体は元気なんですが、ちょっと家族の心配事に見舞われてまして。>_<。
      なかなか読む気力がなかったのです。
      あ、しばらく読書から離れていたら目の調子も良かったです。
      労らないとな〜、って感じました。
      まことさんも目を労わりつつ読書を楽しんでくださいね。

      この作品、すごいメッセージを感じましたね。読んで良かったです¨̮♡
      2021/12/01
  • 母親の再婚で田舎の高校に転校して、いじめに遭う。
    継父である高校教師が生徒にセクハラをしているという理由で…。
    不条理な目に遭うたび心は削られ、誰にも相談出来ずに我慢の限界。
    選んだのは「死」。
    5つの遺書を書き、誕生日に河で死を決意した時にクラスメイトと会い、そこから報復ゲームへ参加させられることとなる。

    いじめ問題というのは、テーマが重くて暗く心の中がもやもやとしてくるので好んで読まないのだが、これは自殺を少しでも考えたら手にしてほしいと思う本。

    正直、本当に心が荒んでる時に読書はしないのかもしれないが…。

    ここに書かれている遺書は、他人に向けた悪意なんて少しもなく、自分の変わりたい目標が綴られている。
    だからかもしれないが、救いがある。

    誰ひとりとして不要な人間なんていないと伝わってくる。

  • 主人公は高校1年成瀬航基、母の再婚により転校した先でいじめの標的になってしまう。今後に絶望した航基は自殺したいと思い詰め遺書をしたためたが、決行日にクラスメイトの月島咲真と出逢い踏みとどまる…。
    読み終えていじめだけではない…人々の苦しみは声を上げることが遠いようでも一番の近道であること、そんなときに声をあげた人々に寄り添える人になりたいなぁ…と感じました。航基のおじいちゃんのキャラも個人的には好きです。航基が咲真と出会えてよかった、最後は涙なしでは読めませんでした。小林由香さん、初読みでしたが他の作品も読んでみたい…この作品はおすすめです!

  •  咲真。この物語の素晴らしさは彼の存在に尽きる。

     高校生の航基は母親の再婚をきっかけに田舎町に引っ越しをし、継父の勤める高校に通っている。 
     最初は順調にいっていた高校生活も、継父が女子高生にセクハラをしたという噂が広まりイジメのターゲットとされ、悲惨な毎日を過ごしていた。

     航基は遺書が5枚になったら自殺をしようと決意し、5枚となった翌日、河で入水自殺を試みるが、石をぶつけてくる不思議な少年、咲真がいた。

     同じクラスの咲真は、アンタッチャブルな存在で、誰も咲真を見えないように接していた。

     そんな咲真が一緒に復讐をしないかと誘ってきた。


    【ここからネタバレ】

     やっぱりとは思ったが、咲真が病死する。自分は読者だということを忘れて、ホントはもっと色々伝えたいことがあったのに、なんで待っててくれないのか、時間が戻せないのかと悔やんでしまう。
     もっともっと咲真との時間を共有したかった。
     いつも素直に気持ちを表さない不器用な咲真の手紙には泣けた。

  • いじめの話は、本当に読んでいて辛い。
    親の離婚・再婚により引っ越した先の高校で、酷いいじめにあう主人公の航基。
    航基が増水した川に入り死のうとした時に出会った、謎のクラスメートの咲真。

    咲真は言う。「誰の役にも立てなかった奴は天国に行けない」「選択しろ。今すぐ死ぬか、それとも誰かの役に立ってから死ぬか」

    生と死、いじめの連鎖、重いテーマを若者向けのタッチで描いていて、とても読みやすかったし、咲真に感情移入して泣きそうになりました…。

  • 説明 (Amazonより)
    命の重さの重要性を問いかけ、連鎖する“いじめ問題〟に一石を投じる、青春ミステリ小説。
    東京の進学校に通っていた、高校一年の成瀬航基は、母の再婚をきっかけに、ある田舎町に引っ越すことになった。
    転入して間もない学校生活は順調に進んでいたが、そんな状況が一変し、突然いじめのターゲットになってしまう。
    いじめは次第にエスカレートしていき、航基は身も心も耐えられなくなっていく。
    不条理な目に遭うたびに心は削られ、誰にも相談できずに、我慢の限界を迎えた航基が出した結論は「死」。
    地元で『ゴーストリバー』と呼ばれる河を自殺の場所に選ぶが、
    その河でほとんど学校にも登校せず、真面目に授業も受けない、クラスメイトの月島咲真と出会う。
    そんな咲真が航基に対し、「報復ゲームに参加しないか」という衝撃的な一言を放つ――。



    連鎖するいじめってなくなることないような気がします。
    みんな自分事とは深く考えてないだろうから...
    関わりたくないってのもわかるし...
    咲真と出会えて航基は変われたと思うと やっぱり人には人が必要なんだと思う。
    たった1人でもいいから理解してくれる人がいたら 人は生きていけると思う。

  • 学生はこれを読んで「いじめ」のダサさを再認識したらいい。
    学校は「みんな仲良く」だけじゃなく「合わない相手には無関心可」と「いじめは犯罪行為で処罰の対象となること」を教えなければならないと思う。

    主人公、よく生き残ってくれた。
    悲惨な状況下でも心の拠り所があれば生き抜けること、そして最大の武器は信頼できる大人とやはり法の知識だった。

    主人公が名刺でせまるところ、感動したしふるえた。
    私は「それだけで許すん?優しっ」って思ったけど、作家さんは加害者にもやり直しのチャンスを与えたかったのかな、と。いや私は同等の痛みを味わってからの話でしょ派ですが。

    加害者が、自分がいじめられた経験から先にいじめの対象を作っていたって話。これが人間の本質だよね。だからやっぱり幼稚園とかの集団生活をする頃から人との距離感を教えなあかん。もちろん親にも。

    これは絶望と希望のお話。でも生きることが希望っておかしい。病気とか自然災害じゃなく、心や体を傷つけないでほしい。無関心を推奨ではなく傷つけるなら無関心ありってことです。
    いじめのお話は毎回しんどいですね。

  • 虐めに遭い、自殺しようとした高校生・航基。彼を救ったのは、謎めいたクラスメイトの咲真だった。咲真の提案した「報復ゲーム」を実行するため、それまではとりあえず生きることにした航基。しかしいったい何をしようと、させようとしているのかがわからない咲真の態度は不気味にも思えたり。この物語にどのような結末が待ち受けているのか、目の離せない作品です。
    こういう題材を扱っているのだから当然といえるかもしれないけれど、とても痛々しい物語です。理不尽な理由から虐めに遭い、身も心も削られていく航基の気持ちがあまりに痛くて辛くて、「死ぬなんて考えないで頑張れ」とも言えない状態。とはいえ彼のことを親身になって心配してくれる人もいるのだから、そのために生きてほしいと願う気持ちでした。
    しかし咲真と行動するうちに、自分と同じように苦しむ人の姿を目の当たりにし、痛みを抱えているのは自分だけではないのだと徐々に知る航基。苦しみの最中にいるときは自分のことしか見えないのでそれは当然だし、人と比べられるようなものでもないけれど。自分ひとりが不幸なのだと思いこむことの苦しみから解放されることは救いになるのかもしれません。
    そして咲真が抱えていた痛みの正体がわかるに従い、物語は重みをぐっと増します。彼がなぜあのような行動を取っていたのか、その謎が解けると同時に訪れるどうしようもない結末。だけれど、決して後味の悪い物語ではありません。生きるうえでの苦しみが完全になくなることはないだろうし、生きるのがつらいことも確かにあるのだけれど。それでも簡単に諦めたくはない気になりました。

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著者プロフィール

1976年長野県生まれ。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。2016年、同作で単行本デビュー。他の著書に『罪人が祈るとき』『救いの森』がある。

「2020年 『イノセンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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