さぶ (ハルキ文庫 や 7-8 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 198
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758434652

感想・レビュー・書評

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  • 題名はさぶだけど、主役はさぶじゃない?
    素直だけど、要領があまりよくないさぶと、手際はいいが、自分でも少し持て余すぐらいのプライドとちょっぴりのやんちゃ度を持つ栄二は同じ店で働く親友同士。
    どちらかと言うと、栄二を主役に物語は織られていく。

    栄二は或る時、無実の罪を着せられて、店を放免となってしまう。心の底から心配するさぶを横目に、プライドが邪魔をして世間をうまく渡りきれない栄二。意地を張りとおして、最終的に、人足寄せ場で働くこととなる。

    最初は長年働いた自分の話を聞く事も無く自分を駆逐した店の関係者を恨んだり、目付を恨んだりするが、同じく社会からのはみ出し者が集められた寄せ場での経験を踏まえて、事情を知り、栄二に親切な役員や仲間達と出会い成長していく。

    人足寄せ場は世間より理不尽な事が、実は少なかった。そこから出たくないと怯える人足も多くいる。栄二もそう思い始めたが、ついに、自分を見舞うことで店をくびとなり、さらに余裕のない実家でも冷遇されるさぶ、そして思いを寄せる女性と人足寄せ場の外に出て、立ち上がる決心をする。

    その頃には、栄二の心から復讐心がなくなっていた。そんな時、嫁として迎えたおすえが、嫉妬心から栄二を陥れた張本人だと発覚。おすえを許す栄二。

    犯人がおすえにした理由って、人生は想像しているほど悪くもないってことかな?さぶをタイトルにした理由は、栄二目線から見た物語で栄二にとって大切な存在だからだろうか?

    いい本だったし、読む人はみんな栄二の幸せを願いながら読む本だと思うけど、うまく感想がまとめにくい本。世の中、ままならぬ事が多いけど、一生懸命生きていれば、それなりに悪くない世界であるってことかな?

  • 栄二の成長物語。さぶの一途な友情に泣けました。心に残るフレーズも多々あり。しみじみさせられます。

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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