菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿 (ハルキ文庫 ほ 5-3)

  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758443463

作品紹介・あらすじ

同じ造りの二軒の家の片方が焼失して十余年。残された〈二軒家〉は川越の「町づくりの会」によって、
昭和の生活を紹介する資料館として改修されることに。
片付けのボランティアに参加した守人は、家の声の導きで、天袋に収められた七段飾りのお雛さまを見つける。
しかしなぜか、三人官女のひとつが欠けていた。雛飾りの持ち主を探す守人たちは、二軒の家に暮らした家族の想いに寄りそってゆく。
過去を知り、未来に向き合う力へと変えつつある守人の歩みを描く。シリーズ第三作。

感想・レビュー・書評

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  • 家の声が聞こえる、不思議な能力を持つ守人を主人公にしたシリーズ第3弾。
    2作目で登場した「二軒家」を街づくりの為、改修するところから始まる。
    改修しようと、「二軒家」の中を片付けるボランティアに参加した守人は、天袋に隠されていたひな人形を発見する。
    以前、住んでいた家族には女の子の子供はおらず、しかも三人官女の一人が欠けていた。
    そんな謎だらけのひな人形を、せっかくだからと月光荘に飾ることに。その飾りを観つつ、昔ながらの遊び「貝合わせ」を作るワークショップを開催することにした守人たち。
    「貝合わせ」自体は記憶にないが、自分が子供の頃は、毎年近所の家でお雛様の飾りつけをしたことを思い出す。お雛様や鯉のぼりを飾る習慣はいつから無くなってしまったのかと、感慨にふけりながら、読んだ。
    2作目では、守人の同級生・田辺の祖父母にまつわるエピソード。3作目では以前は料亭だった「新井」と言うお店をリノベーションして、旅館にするに当たり、リーフレットを作成すると言うエピソードが語られる。
    ここまでで、守人が川越に来て、約1年。
    自分が何がしたいか、悩んでいた守人だったが、川越に来て、様々な人に出会い、様々な経験をして、自分の道を見つける。
    と、ここできっとこの作者さんのことなので、このシリーズは終了なのだろう。
    最後のエピソードでは思い切り「三日月堂」や「桐一葉」も登場し、「活版印刷」から読んでいるファンには嬉しい限り。
    そして、今シリーズでも川越と言う街を舞台に、人と人との繋がりの大切さ、温かさを考えさせられた。
    古くからの友人とでさえ、簡単に会えない時間が続き、ふさぎ込んでいた私の心にも「文鳥」がふらっと飛んできた。そんな感じのするラストだった。
    コロナが終息したら、川越に行って、この作品と「活版印刷」を堪能しよう。

  • シリーズ第三弾。

    守人の“家とのコミュニケーション”が、巻を追うごとに進化していますね。
    最初は家の声が聞こえるだけだったのが、前巻では〈月光荘〉と“会話”をするようになり、この巻では〈月光荘〉以外の家とも会話ができるようになっていました。
    そして第二話「オカイコサマ」で、守人の大学時代の友人・田辺さんの祖母・喜代さんも“家の声が聞こえる”お仲間ということが判明。
    しかも、田辺さんの祖父母の家を建てた人が守人の血縁だったという素敵なサプライズ展開でした。
    このような“人の縁”の連鎖が心地よく、出てくる人達が良い人ばかりなので安心して読めますね。
    表題作の第三話「文鳥の宿」では、ついに〈三日月堂〉が登場して“おおっ♪”と、テンション上がりました。
    第一話「雛の家」で行われた“貝合わせ”のワークショップなど〈月光荘〉で行われるイベントも魅力的で、企画する皆さんがすごく楽しそうなのが良いですね。
    (それで毎回大盛況。ちょっとご都合主義な感じがしないでもないですが、この安定感が良いので問題なし)
    進路に悩んでいた守人も、人々と交流していくうちに川越で働くという方向が見えてきた様子です。
    今後、どのような縁が繋がっていくのか楽しみです。

  • 前巻の「二軒家」で焼け残った家は、昭和の生活資料館として保存されることになった。片付けボランティアをしていた、守人やべんてんちゃんたちが天袋から見つけたのは、段飾りの雛人形。しかも三人官女の一人がなくなっていた・・・(「雛の家」)というミステリーから始まった3冊目。「オカイコサマ」で守人は、家の声を聞く重要な人と出会う。
    そして、「文鳥の宿」では守人にある決心が・・・。
    今回も、桐一葉や、三日月堂とのエピソードが出てきて、ますます嬉しい展開に。守人のこれからを、もっと見ていたいシリーズです。

  • ほしおさなえの菓子屋横丁月光荘文鳥の宿を読みました。
    今回は雛の家、オカイコサマ、文鳥の宿の三部作です。
    雛の家は前回片方が家事で焼け落ちた二軒家続きで、残った片方の天袋からお雛様がでてきた。
    そして三人官女の一人が足りない。
    その謎がわかってきます。
    オカイコサマは主人公遠野の友人のお祖母さんが昔は多くの農家がやっていた養蚕にまつわる話です。
    文鳥の宿は、廃業した料亭を孫娘が朝飯だけの宿としてリフォームして始めるのですが、そのリーフレットを作りたいと古書店浮き草に依頼してきます。
    どれも温かい話です。
    全部で何作あるのかなと思って調べたら6作でした。
    あと三作も読まないと

  • 活版印刷三日月堂の世界とどんどん繋がってゆくので1巻より巻が重なった近巻の方が読むのがたのしいです。
    旅館のお話はコンセプトがふわふわしていて高めの値段設定とサービスが見合うか正直微妙な印象を受けました。
    物語だとそこまで現実的には考えなくていいのでふわふわしたコンセプトで盛り上がっている彼らがたのしそうでよかったです。
    ただ仲間内だけで盛り上がっている感が強くて現実では泊りたい宿には思えませんでした。
    オープンしたらまた違った描写になるといいなと思います。
    この本を読むと川越がとても魅力的な街に感じられます。
    そんな川越で仕事をしたいと主人公の心が決まる今巻でした。
    彼はどんな仕事をするのでしょうか。

  • 「菓子屋横丁月光荘」の3冊目。

    大したことは起きないが、登場人物が善い人ばかりでイヤな人が出て来ないのはこの本の値打ち。
    最初のお雛様の話も、どうということもないが、なかなか泣かせる。

    2話目では舞台が川越を離れて隣の川島町まで行ってしまったが、川越だけではネタが尽きてきたのかしらん。
    土地勘がないのだけど、川越の北のほうということで、地図を写真にしてみると確かに田んぼばかりみたいね。
    だけども、この町も遠山記念館をはじめとして見どころはたっぷり。ネットで見る遠山記念館はいや本当に素晴らしい。
    見学できる醤油屋さんは「金笛しょうゆパーク」というんだな。前に川越に行った時に松本醤油商店を見学しなかったのが悔やまれる。
    こうして読んでいると、本当に川越はいい町だと思える。また行ってみたいな。
    で、前作あたり、家が喋るということについて物語の中での意味合いが多少薄くなってきていたように思ったが、この話では他にも家の声が聞こえる人が出て来たり、棟木に書かれた守人の曽祖父の名前を家が呼んだりで、今回はまだ謎めいたままだが、これから続くだろう話へ興を惹く。

    3話目になると今度は浮草が出て来て三日月堂とリンク。サービス満点。
    モラトリアムの守人くん、ようやく自分の居場所について朧げにだが見えてきたかな。
    それにしても、この料亭のモデルはどこかにあるんだろうかなぁ?その料亭変じて宿の朝食からまた川島町へと話が展開しそう。
    色んな意味で続きが楽しみ。(続くよね?)

  • 読んでいて心地よい。

  • ほしおさんの本は読後のほっこりするので好きです。家との会話も3巻目にもなるとかわいくてたまりません。モノが喋る系は結構あるように思いますが、優しい優しいお話です。
    横丁の街並みやお家の様子とかワークショップの様子とかリアルで読みながら想像がふくらみます。
    ほんとにワークショップ、私も参加したーい!!(笑)

  • シリーズ第三作。

    将来に対してあれこれ悩む守人が印象的。
    何を自分の生きる道としていくか、たとえ就職した後でも悩むことだから、年齢は違うけどガッツリ共感しちゃいました。

    家の声を聞ける喜代さんとの出会い
    曽祖父が建てた家との邂逅など
    今回も続きが気になる展開。

    川島町にも行ってみたくなりました。
    遠山記念館が魅力的!

  • 確かに、日帰りだから川越の夜の風景は知らない。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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