すみれ飴 花暦 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-13 時代小説文庫)
- 角川春樹事務所 (2021年10月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758444378
作品紹介・あらすじ
「それは、そのうちね」お妙がにっこり笑う。
お花が「料理を教えて」というと、お妙はきまってそう有耶無耶にしてしまうのだ。
養い子のお花は、引き取ってくれた只次郎とお妙の役に立ちたいだけなのに──。
一方、かつてお妙と只次郎の世話になった薬問屋「俵屋」の小僧・熊吉は十八歳になり、手代へと昇進していた。
出世頭には違いないが、小僧とは距離ができ、年嵩には疎まれ、心労で胃が痛む……。
蕗の薹の芥子和え、タラの芽の天麩羅、ホクホク枸杞飯、そしてふわふわの鰻づくし!
彩り豊かな料理と共に、若い二人の成長を瑞々しく描く傑作人情時代小説、新装開店です!
感想・レビュー・書評
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花暦 居酒屋ぜんや 新シリーズ
只次郎は、長い間、恋焦がれていたお妙と、ようやく結ばれて5年。
お妙が切り盛りする居酒屋「ぜんや」の隣に「春告堂」を出し、鶯の世話や鳴き声指南、そして、商売指南などを商っている。
只次郎・お妙夫婦に引き取られた、お花は、2人の養女となって、3年。
お花は、実の母親から、愛されなかった過去があり、甘える方法を知らなかった。
何かと、気を使うばかりで「どうか嫌わないで…」と萎縮してしまう。
そんな花に、只次郎・お妙、そして、18歳になった熊吉らが、温かく包み込む。
新シリーズは、薬問屋「俵屋」の手代へと出世した熊吉と、お花の若い二人の成長を描く模様。
お花の不器用でいて、養い親の役に立ちたいと、健気な様子に、ついつい、ほろりとさせられる。
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「居酒屋ぜんや」“花暦 ”という事で、新シリーズにて再始動。
只次郎とお妙夫婦の養女となったお花の視点と、薬種問屋「俵屋」の手代になった熊吉の視点が、交互に展開する構成です。
前シリーズから5年後の設定で、お花は14歳、熊吉は18歳になりました。
実母から虐待&ネグレクトされた上に捨てられたことがトラウマになっているお花は、自己否定が強すぎて、お妙達に嫌われたくないと常に思い詰めている状態です。
一方、熊吉も手代に出世し、主人からも期待されているものの、先輩や同僚から妬まれて、そのストレスからでしょうか、時折胃が痛くなっている様子。
相変わらずお妙さんの料理は美味しそうで、常連の皆さま&只次郎が舌鼓を打っている様子は、読んでいてほっこりします。
升川屋とお志乃さんの息子・千寿や、おえんの娘・おかや等、前シリーズで生まれたばかりだった子らが成長しているのも眩しいですね。
お花は内面に、熊吉は外側にそれぞれ悩みを抱えていますが、彼らの成長を見守りたいです。 -
「居酒屋ぜんや」の新シリーズ始まる。
前作から五年後の設定で、母親に捨てられてお妙たちが預かっていたお花も14歳になった。
やはりお妙たちが目をかけていた子供、熊吉は18歳。
今度はこの若者たちの視点でお話が進むことになる。
爽やかに、若々しく再出発。
この先の進む道に、希望と悩み。恋も・・・あるのかな?
『菫の香』
お花は、只次郎・お妙夫婦の正式な養女となっているが、いまだにお妙を「おっかさん」と呼ぶことができない。
実母のお槇はお花のトラウマである。
お妙もお花も、心から相手を大切に思っているのに遠慮しあってギクシャクするのが切ない。
『酒の薬』
熊吉は、奉公する薬種問屋・俵屋で、若くして手代に出世した。当然、妬まれる。
『枸杞の葉』
お妙に子ができたら、自分はもう要らなくなるのでは?と悩むお花。
おえんの実の子である、おかやの気楽さ、図々しさが気に障る。
『烏柄杓』
俵屋はお妙の父が作っていた薬・龍気養生丹を復活させて商売しようと考えた。
熊吉は、俵屋から目をかけられていることは分かっているが、それは養女として大切にされているお花とは違う、自分の立場に悩んでいる。
『夏土用』
お花が只次郎に拾われたのは、「大暑(二十四節気)」の日だったと思い出す。
只次郎が、どうしてもお妙のうなぎ料理が食べたいと言い出して、常連の旦那衆に声をかけて「鰻づくし」の会を開くことになった。
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お花を大切に思うからこそ、無理に居酒屋の仕事を押し付けたくないお妙の気持ちは、もしかしたら血がつながらないからこそできる配慮なのかも。
お妙の料理はどれも美味しそうなのでいちいち触れないけれど、鰻づくしは悶絶である。
食えない、どこか怖いところのある俵屋の旦那は、とても魅力的。
おえんの娘・おかやは、まだ7歳ながら頭の中は男と女のことでいっぱいなのが母親そっくり。
そして、升川屋はまたやらかした!一方、息子の千寿は8歳で出来たイケメンに成長。
お妙(35歳)と只次郎(29歳)が、見守る立場の大人となり、若者たちの目を通して描かれるというのも新鮮なもの。
魅力的なキャラクターたちを、ずっと見守っていきたい。 -
居酒屋ぜんやの新世代シリーズ花暦篇の1巻目。お妙や只次郎などの前作の面々をそのままに、主人公をお花と熊吉という次世代に設定した続篇。あのまったりとした「ぜんや」の雰囲気がまた味わえてなかなか良い感じ。本巻では前作から5年の歳月がたっておりその間を埋めるべく、お花、熊吉の状況を丁寧に描き出す。設定は江戸時代だが内容的には出世競争やネグレクトされた子供など現代っぽい問題を取り扱っている。もとのシリーズが好きだっただけに本シリーズも今後のお花・熊吉の成長を楽しみに読みたい。
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居酒屋ぜんや、新装開店。
新しいシリーズが始まります。
今度はお花が主人公?
お花、只次郎とお妙。
薬問屋「俵屋」の小僧の熊吉は十八歳になり、手代へと昇進。
蕗の薹の芥子和え、タラの芽の天麩羅、ホクホク枸杞飯、ふわふわの鰻づくし。
若い二人の成長が描かれます。 -
居酒屋ぜんやの新シリーズ。
お妙さんと只治郎の養い子となったお花、俵屋の熊吉も成長し、世代交代の様な感はあるが、お妙さんのお料理は相変わらず美味しそう。
最後の鰻料理には涎が出そう。
お花の気持ちが本当に解れるのはまだ先かもしれないが、中良い3人の生活に心温まる。
鶯指南はどうなる?
俵屋の熊吉は上手く乗り越えられるのか?
次回が待ち遠しい。 -
居酒屋ぜんや新シーズンは、お妙さんと只次郎から子ども世代のお花と熊吉が主役になりました。
お花がお妙さんと只次郎夫妻に引き取られ5年後くらいの設定の新シーズンで、ティーンが主役ということで、ジュブナイルの要素も加味された読後感でした。
お妙只次郎夫妻に愛情を注がれる暮らしを得ても、お花は不安定で卑屈な思考言動が目立ち、虐待の傷は深いと心が痛みました。
お花の不安定で卑屈な思考言動は彼女が思春期に入り、自分の状況を把握したからこそでもあるのかなとも思いました。
お花の思考言動が虐待の傷から脱却できる新シーズンの今後を願います。
お花の成長と並行して、熊吉の成長も描かれるようです。
薬問屋に小僧として奉公に出ていた熊吉は、手代に抜擢され周りのやっかみ等々に対峙する立場になりました。
新シーズンでは、彼が大人へと成長する姿も描かれるのがたのしみです。