おいしくて泣くとき (ハルキ文庫 も 4-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
4.38
  • (165)
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  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 1814
感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758444873

作品紹介・あらすじ

無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』。
店のオーナーの息子・心也は、怪我で大好きなサッカーができなくなり、中学最後の夏休みを前に晴れない気持ちを持て余している。
また心也は、時々こども飯を食べにくる同級生のことを気にしていた。
一人は夕花。クラスから疎外され、義父との折り合いも悪い。もう一人は金髪パーマの不良、石村。
友情と恋心、夏の逃避行。大人たちの深い想い。
〈子ども食堂〉から始まる思いやりの連鎖が、温かな奇跡を呼ぶ。傑作長篇、待望の文庫化! 

感想・レビュー・書評

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  • 2023.11.27 読了 9.6/10.0


    大好きな森沢明夫さん作品の6作目
    とても読みやすい文章なので軽快なテンポで読み進められるからサクサクと物語が進んでいきます


    主人公の心也は、貧困家庭の子どもたちに無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』のオーナーの息子。
    中学生の心也は、何度か「こども飯」を食べにくる幼馴染の夕花が気になっていました。
    夕花は、定職に就かずに家事の一切もやらない義理の父親から虐待を受けていました。


    物語は主に中学生の夕花と心也の目線からと、もう一人ゆり子という人物の目線で交互に紡がれていきます。


    きっと二つの物語はどこかで交差するのだろうと予想はされるのですが繋がりが見出せずに物語は進んでいき、クライマックスになって「なんと!!、こんな温かい繋がり方をするのか!!」と、その繋がりがわかった瞬間の驚きと同時に訪れる、やさしくて温かな、誰かに話したくなる幸せな読後感はたまりません。
    全て読み終わった後の気持ちは、きっと誰しもがほっこりと温かいです。



    幼い頃に母親を病気で亡くしつつも父親からの愛情に恵まれてる心也
    秀才だけど義理の父親からの虐待に怯え、家庭に恵まれない夕花


    そんな対照的な二人の心の叫びには辛い現実にも関わらず、どこか明るさや温かさがありました。

    エピローグの怒涛のような伏線の回収、そして二つのストーリーが最後はこう絡んでくるのかと驚かされ、夢中で読んでいる自分がいました。まさに森沢マジック!
    読んでいて逆に元気をもらってしまいました。
    また、このような作品に出会いたいな、と思いました。



    〜〜〜〜〜印象に残った言葉・フレーズ〜〜〜〜〜




    ”意識的に息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
    マイナスに傾きそうになった心を、一旦静止させるには、深呼吸が一番効果的なのだ。そして、心が静止している間に、私は自分の頭の中を「楽しいこと」に置き換える。些細なことでも、くだらないことでも、楽しければ何だっていい。思考がプラスになりさえすれば、後からついてくる心も自然とプラスに変換されるのだから。
    落ち込む前に深呼吸。そして、思考の入れ替え”




    ”人の幸せってのは、学歴や収入で決まるんじゃなくて、むしろ『自分の意思で判断しながら生きているかどうか』に左右されるんだって”




    ”約束ほど、結果的に人を傷つけるものはない。
    たとえそれが「優しい嘘」であろうとも”




    ”いいじゃない、弱くたって。自分のやりたいことをちゃんとやれているんだから。それだけで充分だと思うよ。

    あなたたちは、好きなことをたくさんやって、人生を楽しんでね”

  • フォロワーの皆様の評価が高かった為、Amazonでポチった一冊。

    うーん、とても読みやすい文章、そしてサクサクと物語が進んでいく。

    心也は、貧困家庭の子どもたちに無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』のオーナーの息子だ。
    中学生の心也は、「こども飯」を食べにくる幼馴染の夕花が気になっていた。
    夕花は義理の父親から虐待を受けていたのだ。

    夏のある日、学級新聞コンクールの編集責任者を、そんな家庭の事情からか?クラスメイトから虐められていた夕花が押し付けられたのだが、たまたま足を怪我してサッカー部を休部していた自分も一緒に任されることになった。
    それから少しずつ夕花と話すことが増えていた。
    そんなある日に事件が起きる。


    物語は主に夕花、心也の目線からと、もう一人ゆり子目線で交互に紡がれていく。

    きっと二つの物語はどこかで交差するのだろうと予想はされるのだが、あー、こんな温かい繋がり方をするのかと、読み終わった気持ちはほっこりと温かいものになった(*^▽^*)

    素敵な良いお話だった。
    みなさんの評価が高いことにも納得(*^▽^*)

  • 温かい気持ちが十重二十重とさざ波のようにわいてきました。なんて素敵な読後感なのでしょう。二つのストーリーが最後はこう絡んで来るのかと夢中で読んでいる自分がいました。まさに森沢マジック!

    子ども食堂に以前から興味がありました。私の地域にもポツポツとチラシで紹介されていて目にすることが多かったんです。
    ですから、「子どもの7人に1人は貧困に陥っている。」こんなニュースも気になって仕方がありません。
    そこで貧困の実際を新書で読みましたがあまりにシビアでショックがしばらく消えませんでした。

    親の愛情に恵まれてる心也、秀才だけど家庭に恵まれずDVを受ける夕花。対照的な二人を軸に物語は展開していきます。二人の心の叫びには辛い現実にもどこか明るさや温かさがありました。
    エピローグの怒涛のような伏線の回収にはやられたと思いました。
    読んでいて逆に元気をもらってしまいました。
    また、このような作品に出会いたいな、と思いました。

  • よかった~ 間違いなく☆5つ。。。

    テーマがイジメ、虐待、そして子ども食堂。
    すごく興味があるテーマだったので、英語の勉強は一切出来ず、この本を読みました。(言い訳)
    森沢明夫さん すごいなぁ。
    どうなるの??って思っていたけれど、最後の収束感がすごすぎて。

    多くの人に読んでもらいたい、おすすめの一冊です。

  • エピローグの二人の会話、粋だなぁ。
    読みながらにやにやしてしまった。

    二つのストーリーがなかなか繋がらなくて、最後の最後にやっと関係性がわかった時はびっくり。
    えー、ヒントあったぁ?と見返してみたけど、夕花が理系が得意ということくらい?他にもあったのかな。
    色々考えながら読んだのに、全く気づかず。でも嬉しいサプライズだった。

    ちょっとできすぎな感じもしたが、やっぱりあったかくて泣けた。
    焼きうどん食べたくなったなー。

  • ヒーローって常に弱い者の味方。もちろん社会的弱者という意味の弱い者。
    今回の話もよかったな。
    15歳の夏は終わってほしくなかったけれど。

    今は読み終わったばかりなので余韻を味わいたい。
    龍浦のどこまでも青い海と、蝉の声と風鈴の音を思い浮かべながら。
    森沢明夫さんの大好きな小説『エミリの小さな包丁』とのリンクが嬉しくて。

    最後に全て繋がった時、胸の奥が熱くなった。
    あの夏の1日は二人にとって永遠の瞬間だったのは間違いない。
    母の夢も父の思いもずっと生きている。
    心也くんも夕花さんもゆり子さんもマスターも萌香ちゃんも阿久津くんもみんな魅力的だった。

    読後感最高です。
    森沢明夫さん、ありがとうございました。

  • ◇◆━━━━━━━━━━━━
    1.あらすじ 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    虐待、貧困、イジメに苦しむ「夕花」と、幼くして母を亡くし、父は子ども食堂のオーナーである「心也」を中心として、物語は展開していきます。心也、夕花、ゆり子の3人の視点で物語は展開していきます。


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    2.感想
    ━━━━━━━━━━━━◆
    森沢明夫さん6冊目。
    この作品も最高によかったです!!

    もう、読むのが辛いくらい、夕花の生活が苦しい。でも、その横にいる心也や登場人物がかっこいいです。
    涙が何度も滲んできて、とても悲しい気持ちになりましたが、同じぐらい微笑みが溢れる作品でした。最後に向けて、どんどん微笑みが増えていく感じですね。


    かっこいい人多くて、、、うん、すごいいい( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )

    虐待の事件が多く報道され、本当に悲しみと怒りがこみあげてくることが多いですが、この作品も夕花の父親は働きもせず、暴力を振います。もう、最悪ですが、そのダメ親父に向かっていく問題児の石村①がかっこいいです。いや〜、かっこいい。

    そして、心也の親父②がかっこいい。
    15歳の息子を一人の男として信じるシーンとか、ジーンときます。夕花との会話とか、すごいかっこいい。
    ちなみに、わが子も15歳でした。春休みに一人で2泊3日の京都旅行していたので、もう15歳は大人ですね。

    心也の母③も素敵。この言葉は心に残りました。
    「人の幸せってのは、学歴や収入で決まるんじゃなくて、むしろ自分の意思で判断しながら生きているかどうかに左右される」
    自分の意思で判断できる余地がないくらい人生が苦しい人はいるでしょうが、多くの人は選択ができます。自分の意思で選択して生きていくことが幸せとは、ほんと、そうですね。

    心也④はその一つ一つの言動や行動がかっこいいです。

    夕花⑤も、かっこいい。辛いことがあると、「深呼吸をして良い思考に切り替えていく」なんて、大人でも難しいです。

    そして、阿久津⑥がかっこいい。終盤で、阿久津…まじか…と、じわっと涙が滲みました…。


    この作品でも龍浦がでてきます!
    途中ででてくるおばあさんとかも、別作品の登場人物かもしれませんが、私は分からなかったです…

    龍浦に到着した時の一言
    「宇宙が透けて見えそうなくらいに青く、」
    龍浦に行きたい(笑)

    そして、青い孤島で登場するざわざわブランコも出てきます。ここは多くの涙を吸収する場所なのかな…


    ◇◆━━━━━━━━━━━━
    3.主な登場人物 
    ━━━━━━━━━━━━◆
    風間心也 小3〜

    (大衆食堂かざま)
    風間耕平 心也父
    風間南  心也母

    夕花 中3 〜
    幸太 夕花の弟 小4 〜

    景子 店の配膳係

    石村蓮二 問題児 中3


    ーーーーー

    (カフェレストランミナミ)
    ゆり子 52歳
    マスター 52歳 ゆり子の夫

    内藤さん
    みゆちゃん

    高梨萌香 26歳 高梨工務店
    阿久津…
    反町

  • ありきたりな感想だけれど良いお話だった。いつからかきかれるようになった(子供食堂)
    様々な事情で、食事を充分とれない子供達の為に始められた勇気ある善意の行い。そこには(偽善者)と言う心無い陰口が起こる事も当然知った上での事だったはず。こんな飽食とも言える時代に、育ち盛りの子供がひもじい思いで生きなければならない社会がまだまだ日本にも存在している事実。それでも温かい輪が広がり(子供食堂)がそんな子供達を応援してくれている。そしてそこではお腹を満たしてくれるだけでなく優しい心も育ててくれるのかもしれない。

  •  「人の幸せっていうのは、学歴や収入で決まるんじゃなくて、むしろ『自分の意志で判断しながら生きているかどうか』に左右されるんだって。」

     「大衆食堂かざま」では、家でご飯を満足に食べられない子どもたちのために無料で食事を提供している。お腹がすいてどうしようもないときに予約をとり、食べにくるというシステムだ。その中には主人公の心也のクラスメイトの夕花や、隣のクラスの問題児、石村もいた。
     ある日、登校した心也の机の上に「偽善者のムスコ」の文字。「偽善者」は、店への電話で、手紙で、何度も見聞きしてきた言葉だ。もう「こども飯」をやめないか、という心也に父が言った言葉がそれだった。そして「俺は自分の意志を尊重しながら生きる、やりたいようにやる。」でも「心也が不幸になるんだったら、俺は『こども飯』をやめるよ。それがやりたいようにやると決めている俺が、自分で決めた意志だ。」

     息子への深い愛情、他人の言動に左右されるのではない自分自身の強い思い。この父の考えはまた、心也に受け継がれていく。とても心温まるお話だ。

     夕花の義父のDVや貧困、転校、施設に入るおばあちゃん。むしろ「自分の意志で判断しながら生きる」ことができるのは幸せなことなのではないか、とも思った。境遇とか年齢とかのために、自分の居場所を決めることも難しかったりするのではないか。そんなことも思った。また、夕花が、義父にとびかかっていってくれた石村や、泣いている幸太を置いていってしまったことや、先生が机の落書きをそのままにしていたことが気になってしまった。

  • こちらも子ども食堂のお話。
    子供たちのその後までお話が続いていたのが良かったです。
    無力なままの子供時代のお話だけでは少し寂しさが残ってしまう。
    今いる場所で精一杯生きた子供たちが大人になりその思いを忘れずに叶えていきます。
    生きていくのは大変。けれども生きていかなければその先の幸せにも出会えない。
    そんな事を教えてくれるお話です。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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