中国の経済専門家たちが語るほんとうに危ない!中国経済

著者 :
  • 海竜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759311518

感想・レビュー・書評

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  • 2008年に起きた中国株の暴落前に全ての中国株を売り逃げして以来、中国の情報からは少し距離を置いていた。
    しかし、なんとなく本書は読んでおくべきという「感」が働いたので読んでみる事にした。

    中国に言論の自由がないとはよく言うが、こと経済に関してはかなり自由な発言ができるようになっている。
    社会主義国家において、資本経済を導入する際、海外で資本主義経済を学んできたエリート達の知能を活かすことで、巨大な経済を上手く操ろうとしたのだろう。
    本書は日本の学者達の視点からではなく、今や経済に関しては自由に発言する事ができるようになった中国国内の学者達の視点から中国経済の危機的な状況を読み解いている。
    2010年には日本を抜き、世界第二位のGDPを誇るまでに至った中国だか、その経済の発展はどのようにして生まれたものだったのか。
    そして、著しい発展を遂げてきた筈の中国において、経済破綻論が出てくる迄に至った主な要因は何なのか。
    その要因を多くの経済学者や政府、行政関係者の発言や論文などを引用する形で解説している。


    そもそも毎年二桁成長を成し遂げていた中国経済の基盤とはなんだったのか?
    それは「海外輸出産業」と「不動産投資」である。

    安い労働力と有利な為替レートを武器に中国は「世界の工場」というポジションを確立した。
    そして海外輸出産業による貿易黒字とそれに伴った工場などに対する設備投資は経済成長に大きく貢献した。
    しかし、そのような産業構造はいつしか中国経済の対外依存度を6割強に至るまで押し上げていた。
    同時に「産能過剰」という需要を上回る供給体制ができてしまったことで設備投資も頭打ちとなった。

    そんな最中に2008年のリーマンショックが起き、それを機に海外輸出が低迷したことで
    対外依存してきた製造業は大打撃を受け、多くの中小企業が倒産したという。
    そしてそれをカバーするためには「内需の拡大」が必要不可欠であった。

    しかし、貧富の差が拡大しすぎてしまったため、
    これまで低賃金で働いてきた労働者には消費余剰能力がなく、一方、少数のお金持ちは必要なものを揃えても、お金が余ってしまうという状況であり、中流階級のいない不均衡な状況で内需の拡大を見込むのは到底不可能であった。

    そのため、政府は一度引き締めた金融政策を止め、バラマキ景気対策と融資制限の撤廃を決める。
    これにより再び不動産市場が再燃するが、問題の発生を先延ばしにしたにすぎない。

    貨幣流通量が増えれば当然インフレは加速する。
    インフレにより食糧や生活必需品を買うのに苦しんでいるのは多くの貧困層である。
    そして彼らの中には大学を卒業しても就職できていないインテリ貧困層も多数いるのだ

    天安門事件で丸腰の学生や市民に対する「血の鎮圧」が中国共産党の正当性根拠をなくした。
    そして、その正当性を回復するために資本経済を導入し経済の発展自体が共産党の手柄であるかのように思わせて来た中国。
    しかし、今となってみれば経済成長は止まり、豊かになったのは共産党関係者をはじめとする一部の人だけである。


    なかでも驚いた数値がある。
    ・中国の1%の富裕層世帯に富の40.4%が集中。これはアメリカよりも一極集中が進んでいる。
    ・失業者は2億人。労働人口の9億6千万人に対し20%を超えている。

    そんな中国では、各地で暴動が多発している。
    国民の政府に対する不満が噴出しているのだ。

    しかし、共産党はそんな国民の目を逸らそうと外敵をつくりだそうとしている節もある。
    共産党への怒りを外的要因に向けたいのだ。
    軍備増強や周辺諸国に対する挑発的行動も関係がないとは言えない。


    これまでの中国の歴史で国が変わった要因は外圧ではなく、中からの革命である。
    今の中国はひょっとしたら革命前夜なのかも知れない。

    われわれ日本人もこの巨大で不安定な隣人の今後を注意深く見守って行く必要がありそうである。

  • 上海万博が終わって1ヶ月以上経過しましたが中国経済はいまどうなっているのでしょうか。私が勤務している会社の中国支社の打上げは好調で会社内では危機感はあまり無いように感じるのですが、中国での土地バブルはどうみてもバブルなのでいつ崩壊するのかが不安です。

    この本は中国経済の専門家である中国語が堪能な石氏が、中国内での経済専門家のコメントを調査した上で、このタイトルを付けて執筆されたものです。

    以前ソ連が崩壊したことがありましたが、崩壊した89年の5年程前からその手の本を見かけたのを覚えています。中国の場合はどうなるのでしょうか、今後の中国経済の動向に目が離せません。一方で中国を礼讃している本も探して読んでみたいと思いっています。

    以下は気になったポイントです。

    ・中国近年の高度成長は国外の需要によってもたらされた、国民の消費需要が殆ど増えていない中で、総需要が増えつづけたのは国外需要による、人民元引き上げ、サブプライムローンの危機顕在化で輸出が減少(p27)

    ・2008年までは、対外輸出の継続的拡大と並んで、不動産投資を中心とする国内投資が「2つのエンジン」として経済成長の役割として果たしてきた(p33)

    ・多くの学者が2008年以来の中国経済減速の原因を「2つのエンジン」が弱まってきたとしたのに対して、王氏は中国国内の「消費不足」をあげた(p35)

    ・国民の消費需要が抑制されていたので、「高度成長+低インフレ率」が達成されていた(p37)

    ・2007年度において、経済全体の成長率は11.4%であったのに対して、固定資産投資の伸び率は24.8%(p48)

    ・2005年11月の段階で、都市部住民と農村部住民を含めた国民の85%は、いっさいの医療保険に入っていない(p54)

    ・UBS金融グループによれば、現在の中国で中流階級と認定できるのは、2500万人程度(2%)、1%のの富裕層に41%の個人資産が集中する(p57)

    ・労働市場から吐き出された百数十万人の大卒者と、年間1200万人を超える都市部の新規失業者、農村にいる失業状態にある1.2億人が中国にはいる(p62)

    ・2009年現在、中国の中小企業は全国の雇用機会の8割を産み出して、売上総額は国のGDPの6割を占める(p93)

    ・中国にある4200万以上の中小企業のうち、40%が既に倒産、40%が倒産の危機に直面している(p95)

    ・不動産が売れなくなるということは、不動産への新規投資が止まるばかりか、関連する、鉄鋼・セメント・建材・家具などの60以上の産業が不景気に覆われる(p114)

    ・中国の輸出の主力商品は低付加価値のものなので、低価格戦略しかない、中国政府が人民元を低く抑えているのはそのため(p118)

    ・2009年上半期に行われた新規融資の総額は105兆円(7.4兆元)であり、国民総生産の半分以上に達している(p123)

    ・中国経済の対外依存度はすでに65~70%(日本の場合は30%程度)、大都会の不動産物件の平均価格は一般家庭の可処分所得の15倍(先進国は6倍)であり重症である(p145)

    ・現在の中国と以前の日本の決定的な違いは、バブル崩壊の前に、貧富の格差と都市部と農村部の経済格差を解消したこと(p148)

    ・中国経済は、1)輸出の拡大、2)人口の優勢、3)不動産業の急速発展、という3つの幸運によって発展した(p152)

    ・2009年における全国の不動産購入額は、年間個人消費総額の半分:約6兆元(p169)

    ・2007年度において、12,9%の経済成長をあげながら、大学卒業生の約3割が就職できなかったことは中国政府も認めている(p207)

    ・2006年時点において、中国の0~26歳の若年層は、男が女よりも3402万人多い、一般の出生比率は100:103~107だが、中国では100:120である(p215)

    ・中国が先進国に入れない理由として、GDP総額でなく国民一人当たりの国力、資源占有量の問題をあげた、人口は5億人程度が妥当(p218)

    ・2010年3月22日、中国温家宝首相みずからが、中国の失業者は2億人と発言した(p236)

    ・日本社会の強靭さには、1億総中流といわれる中産階級の存在、社会保障システムの完備等が社会安定の基盤を形つくっていること(p238)

    2010/12/5作成

  • 率直にすばらしい本だ。

    中国経済の発展のロジック,中国独自の経済構造が実によくわかる。
    07年〜10年初頭までの状況が書かれているが,08年のインフレ発生状況と,現在のインフレ状況と経済成長率は中身はどのように違うのか?色々と考えさせられる。

    池上彰のよくわかる中国みたいな本を読むくらいなら本書を読みましょう。

    断っておくと,私も本書ですべてが分かっているわけではない。
    でも,メディアで断片的に報道される中国の状況が本書のタイムラインの解説で物語としてつながったのは確か。
    いい本に出会えた。

  • 楽しみにして読んだのだが期待はずれ。確かにいろいろなところから情報を引っ張ってきてはいるが・・・だから?といった感じ。悪いところばかり探せばこういう本になるし、いいところばかり(あるのか!?というのは置いといて)集めればまた別の本ができそう。

  • 読みかけ、いまいち弾みがつかない、、、

  • 1月6日読了。日本人が「なんとなく」スゲースゲーと思いがちな中国経済が「ほんとはこんなにブラックなんだよ」ということを、中国経済の専門家の論説を多く引用しながら解説する書。中国の経済の好況を支える不動産投資はまさにバブルでありすでにその下落は始まっている点、コストの上昇により「世界の工場」としての優位性はなくなっている点、貧富の差が極端であり消費力のある中流階級が存在せず内需の拡大も見込めない点、沸点が低く爆発寸前の民衆を政府がコントロールし切れていない点。確かに、中国の未来は必ずしも明るくはないようだ・・・。極端な論説ばかりを集めているため読めば読むほど悲観的な気分にもなるが、情報の一つとして参考にしたい。

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著者プロフィール

評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。2014年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に『漫画でわかった! 習近平と中国』(かや書房)、『世界史に記録される2020年の真実 内患外憂、四面楚歌の習近平独裁』(ビジネス社)、『中国五千年の虚言史』(徳間書店)、『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)などがある。

「2021年 『中国 vs. 世界 最終戦争論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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