頭の中は最強の実験室: 学問の常識を揺るがした思考実験

著者 :
  • 化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759815238

感想・レビュー・書評

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  • 転職する前は研究分野で仕事をしていたので、計画を立てて実験をしていたものです。多くの変数があるので、無計画に実験をしても時間は過ぎていくばかりです。そこで計画することの重要性を私は学んだのですが、この本では、頭の中で思考実験をすることの有用性を紹介しています。

    いくら綿密な計画をたてても、実際に実験をしてみないと結果がわからないという受け身な状態ではなく、数多くの実験を繰り返すことで無駄な作業を減らすことができるようです。

    特に、この考え方は、ビジネス戦略を考える場合や、プレゼンをどのようにすべきかを考える場合に、役立つと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ベルヌーイの概念:x円もらったときの効用 log xを考えると、無限に足していっても、効用の和は有限にとどまる(p31)

    ・アリストテレスの自然学が説明する天文現象(天動説等)も、日常生活に困ることはなかった。古代ギリシャの天文学者アリスタルコスは地動説を採っていたが、それは受け入れられなかった(p34)

    ・アメリカでは、進化論は受け入れられにくく「進化論を学校で教えてはいけない」と訴えた有名な裁判もある、今でも、インテリジェント・デザインと名を変えて勢力を保っている(p76)

    ・考察の対象になっている全ての存在のうちで仮説に現れる対象の占める割合が問題となる、カラスとカラスでないものとでは、カラスでないもののほうが圧倒的に多いから。特別なある生物(カラス)→特別な色(黒)(p127)

    ・外部からエネルギーの供給を受けずに仕事をし続ける装置を「第1種永久機関」という、これを作れないといい表したのが「エネルギー保存の法則」、熱的現象を使って外部に仕事をし続ける装置を「第2種永久機関」といい、熱源は使っても良いが、その熱エネルギーを外部に捨てることなく、力学的エネルギーに変換して動作し続ける装置。熱力学の第二法則は、第2種永久機関が作れないことを主張している(p142)

    ・たがいに等速で運動している座標系では、どちらも同じ物理法則が成り立つ、回転運動の場合は、絶対空間に対して回っているかどうかは「遠心力」のあるなしでわかるとニュートンは考えた(p152)

    ・アリストテレス主義者は、地球がもし動いているなら、塔の上かモノを落下させたら、常に風の影響を受けるので物体は塔から離れたところに落ちるとした、地動説では、空気も地球と一緒に動いていると考える(p160)

    ・動いていると時計が遅れるの:t'=t0/(1-v^2/c^2))^0.5(p166)

    ・特殊相対性理論は、慣性系という特殊な系の間の座標変換だけを取り扱っているが、一般相対性理論は、加速度運動をしている座標系での座標変換まで扱えるようにしたもの、これはニュートン力学では記述できないもの(p175)

    ・GPSで位置を決めるためには、人工衛星上の時刻の精密測定が必要なので、高速で飛んでいるための特殊相対論的補正のほかに、一般相対論的補正が必要になる。人工衛星は地上より地球の重力の弱い高度空間を飛んでいるので、時間の進み方が地上よりもごくわずか速いから(p176)

    2012年11月10日作成

  • 心理学的なこととか興味があったけど知らなかった分野。でも計算はムズカシイ。

  • 誠実な本.幅広い分野の思考実験を取り上げているにもかかわらず,限られたスペースにそれぞれ丁寧な説明がなされており,著者の知識力の高さを感じる.残念ながら初心者向きではないが,盛り沢山な感じ.良書.

  • 幼い頃から、自分が見ているように相手に見えてないだろうな、と思ってた。当たり前だけど、みんなそれを教えてくれなかった。
    僕には、頭の中と世の中で起こっていることはどっちも同じように大事なこと(あるいは、どうでもいいこと)なので、思考実験はとてもおもしろいけれど、それを論じてどうこうするのは趣味ではない。ひとり悶々と読みたい本。「コウモリであることはどのようなことか」だとか「クオリアの逆転」みたいな話は好きです。別にどっちでもいい思考実験も載っているけど、含めて楽しめる本です。

  •  あなたも思考実験をしてみようといわれてもこの本の内容がいまいち頭の中でまとまってくれないのにできるわけないと叫びながら勝手に解釈するのが面白いのか

  • 確率の思考実験は特に面白い.期待以上に中身が充実していた.

  • 本の表紙が違う((((;゚Д゚)))))))

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著者プロフィール

慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。家業の旅館経営と慶應義塾大学研究員を経て、1987年~2002年同大学非常勤講師。1991年、静岡理工科大学設置準備室を経て、同大学理工学部講師に着任。現在は同大学情報学部講師。専攻は科学哲学、科学基礎論、物理学。著書に『頭の中は最強の実験室』『シュレーディンガー方程式入門』、訳書に『数字マニアック』(いずれも化学同人)がある。


「2022年 『思考実験 科学が生まれるとき 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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