- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784759815641
感想・レビュー・書評
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本書は、序文のゴーギャン『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』についての考察で始まる。そして、この絵に描かれているのは答えではない、問いなのである」で序文を終える。超クール。その問い掛けの著者からの回答は最終章にあるのだけど、これがまた素晴らしい。
本書はハキリアリなどの生き物たちの社会性を詳細に描きつつ、常に人間社会を視覚の端で捉えている。それらを意識せずにいられないように書かれていると言ってもよい。難易度は各章でばらつきはあるものの、おおむね平らな道が続く感じ。6つの大きな章の中で興味のある章をいくつか読むだけでも、十分に自分の考え方が大きく変わったと思う。
我々が何者なのかというと、我々は社会性のある生物である。そしてどこから来て、どこへ行くのか?かというと、つまりは「社会性とは何か、その社会性はどのように今後進化していくのか?」という問い掛けへの回答である。進化の予測は不可能であるので、当然ながら予測できないが、昆虫は人間以上に社会性を獲得しているという捉え方から、その先を少し知ることができる。ただ、それでゴーギャンや我々の苦悩が昇華されることはない。本書にあるとおり、我々は石器時代からの感情と、中世からの社会システムと、神のごときテクノロジーをもつ、いわば『スターウォーズ』の文明を作り上げてきた。人はいま、あがき苦しんでいるのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
複雑な文化の敷居へと導いた原動力はなんだったのか?それはグループ選択だったようだ競合するグループの行動を予測しながらメンバーが仲間内で意図を読んで協力できるようなグループは、そこまでその能力がないグループよりはるかに有利だっただろう。グループのメンバー間でも競合があったのは間違いなく、それはある個体を他より有利にするような形質の自然選択をもたらしたはずだった。しかし新しい環境へ進出して強力なライバルと張り合う種にとって、もっと重要なのはグループ内の結束や協力だった。
社会の複雑性が増すにつれて社会の安定を維持する神の責任もました。神の代理人である人間の聖職者がそれをトップダウン式の政治的支配によって成し遂げた。政治的軍事的宗教的な指導者が協力してこの目的を遂行した時、教義は伝統的で揺るぎないものとなった。政治革命が起こって成功すると宗教指導者は状況に合わせるすべを大抵見出した。多くの場合、反乱者側について古い体制の教義を軟化させた。 -
140222 中央図書館
原題は『The Social Conquest of Earth』。ホモ・サピエンスはいかにして社会的種属として地球を覆うにいたったのか、その鍵は何かを、提示しようとしたもの。
ただし、そのテーマの部分は近年の人類学の成果を紹介しただけのように思える。著者の実際の専門は、ハキリアリやマルハナバチのコロニーにかかわる領域か。