パリのすてきなおじさん

著者 :
  • 柏書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149117

感想・レビュー・書評

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  • 人生経験豊かな"おじさん"。
    そんな"おじさん"をこよなく愛する作者の金井真紀さんが、パリ在住のジャーナリスト広岡裕児さんと共に、パリのおじさん達へインタビューをしていく。
    実にそのおじさんの数67人!
    インタビューした、おじさん達の似顔絵も毎度描かれており、イメージがしやすく、端的に纏まった文章は、とてもわかりやすかった。

    様々なおじさん達の人生、生き様に、私自身もいつからか魅せられていた...
    日本とは違い、多数の移民や難民を受け入れているフランスでは、様々な宗教や文化が入り乱れており、その人たちを本当に理解するためには、歴史を理解する必要がある。本編とは別に、そういった歴史的背景も記載されているため、勉強になった。

    おじさんは偉大だ...

  • この本は著者と、通訳ジャーナリストと共に、パリのおじさんに話を聞いていくノンフィクション本である。
    街で気になるおじさんに声をかけ、生い立ちや文化、時事問題などからそれぞれの人生観に迫っていく本だ。

    タイトルの通り、どのおじさんもすてきだ。

    パリの普通のおじさんが何を考えてどういう生活をしているのか、興味があったためとても面白く読めた。

    印象に残っているのは、モンマルトルで画家をやっているおじさん。
    かつて有名画家たちの溜まり場だったこの場所での最後の画家だという。彼は絵を直接販売している。絵の価値は決して経済としての価値ではない。そして彼の絵にまつわるエピソードで人生や生命、そしてアートについてを考えさせられた。

    1人のおじさんにつき5-6ページとなっておりとても読みやすい。
    ただその反面、興味のあるおじさんについてもう少し深く知りたいところで終わってしまうのが残念なところ。

    人生の節目でまた読み返したい。


  • 著者の金井真紀(1974年~)は作家・イラストレーター。
    本書は、パリ在住40年のフリージャーナリスト広岡裕児(1954年~)と組んで、二人の共通の商売道具である好奇心と、金井氏の選おじさん眼と、広岡氏が自在に操るフランス語の3つを武器に、パリの街を2週間歩き回り、捉まえた67人のおじさんを“陳列”したものである。それぞれのおじさんについて、話に加えて、著者の描いたすてきな似顔絵が添えられている。
    67人のおじさんは、ルーツ・民族・宗教・職業・年齢・・・実にバラエティに富んでいる。カリブ海諸国からの移民を両親に持つ絵描き(50歳)、世界中を旅するスペイン人のギター作り職人(76歳)、チュニジア移民二世の老舗クスクス屋の店主(50歳)、休日にサッカーに興じるアルジェリア移民二世のベルベル人(45歳)、人気サッカーチームのパリ・サンジェルマンのファンが集まるバーの店主(53歳)、毎日競馬場に通う引退したアルジェリア移民(92歳)、西アフリカ・マリからの出稼ぎのスーツが似合うコンシェルジュ(56歳)、フランス系ユダヤ人とチュニジア系ユダヤ人を両親に持つチュニジア生まれのお菓子屋(72歳)、中国浙江省生まれの小さな出版社を経営する中国人(50歳)、ホロコーストで両親と3人の弟妹をなくしたポーランド系フランス人(87歳)、在仏クルド人自治区領事館に勤めるイラクから逃げてきたクルド人(29歳)、キュリー研究所で長年ガンの研究をしてきたベトナム人(76歳)、等々。
    私は知命を過ぎた、まさに著者のメインターゲットとなるおじさんで、「“すてきなおじさん”になるためのヒントが得られるといいな~」くらいの気持ちで本書を手に取ったのだが、登場するのは期待に違わぬ味のあるおじさんばかりであった。
    しかし、それにも増して印象に残ったのは、たった2週間の滞在でこれほど多彩なおじさんに出会う、パリという街の奥深さであった。パリはやはり、様々な歴史・地理的要因を背景にした人種のるつぼであり、ある意味、世界の縮図なのだ。(東京で同じことをやろうとしても絶対にできない)
    すてきなおじさん達の話を聞きながら、世界の多様性を感じることができる良書である。
    (2018年2月了)

  • 著者の金井真紀さんと案内人の広岡裕児さんが、フランスで出会ったおじさんたちを紹介したもの。
    おじさんたちはみな平凡で素朴ながらも、その人生経験からさまざまな金言やモットーが出てくる。
    金井さんの筆致、好きだなぁ。

  • パリ在住の素敵なおじさんたちをインタビュー。パリといえばまずは華やかなイメージを思い浮かべるけれど、歴史、難民、テロ、華やかでない面もあり、インタビューされた方の心に影を落としていた。それをうまく引き出して書いている。素敵な絵とともに、目の前で話を聞いているようで、時にはああたたかく、時にはじんわり、時には寂しさが伝わってくる。移民の国でもあり、おじさんたちは、宗教もバラバラで、インタビューされたのはごくごく一握りの人だけれど、一人一人がパリを作っているんだなあと。ユダヤ人のお話しなど、歴史を語るところもあり、一面ではあるが、ガイド本とは違うパリを知れる本ではないかな。また、哲学的なセリフもあるので、心がブルーな時に読んでも。それにしても素敵なおじさん集めてきたね。

  • パリのお洒落おじさんを紹介してくれる本かと思ったら、それ以上の考えさせられる本だった。
    フランスの移民問題、戦争の歴史、宗教、人種…
    おじさん(というかひとりひとりの人)を通して、その背景を知る。
    とても深い本でした。

  • 色んな人の人生が一冊に詰まっていた。
    世界は救えないけど、ただひとりの人に向き合うだけ。わたしたちはそれしかできない。
    でもそれが大事なんだと思っていますという言葉が
    響きました。

  • 2021.3.7
    「ひらめいた。パリでおじさんを集めよう」
    なんてキャッチコピーが素敵で、ワクワクして読み進めたら想像以上に深い本で、色々考えさせられてしまった。

    パリの道端で集めたおじさんコレクションの本なんだけど、そこから見えてくるパリという街、フランスという国の現状は、日本でのほほんと暮らしてるわたしのような人間には想像できないほどたくさんの苦悩、問題に溢れていた。


    お気に入りのおじさんたち
    ・モンマルトルの画家の最後のひとりのおじさん
    ・フリーメイソンのおじさん
    ・癌の研究をしてたベトナム人のおじさん

  • パリのおじさんから見る世界。深くてとってもおもしろかった!

  • 帯が四種類。それぞれ別のおじさんと言葉がかかれている。
    https://www.kashiwashobo.co.jp/book/9784760149117
    より転載
    目次
    はじめに(金井真紀)
    第1章 おしゃれなおじさん
     白と黒にこだわる絵描き/イタリアに通う弁護士/十着しか服を持たない男/アフリカ人街のか
     つら屋/LGBTセンターのボランティア
     <ちょっと寄り道>カルチェ・ラタンの古本屋


    第2章 アートなおじさん
     旅するギター作家/下町の彫金師/小劇場の喜劇役者/モンマルトルの老画家
     <ちょっと寄り道>フリーメイソン博物館


    第3章 おいしいおじさん
     元マーケターのワイン屋/老舗クスクス屋の店主/星付きレストランのシェフ/カレー屋街のタ
     ミル人
     <ちょっと寄り道>パリの地下散歩


    第4章 あそぶおじさん
     ボールを蹴るベルベル人/PSGファンが集まるバーの店主/カフェで出会った競馬の達人/パリ
     在住四十年の日本人ジャーナリスト/競馬場に通う元警官
     <ちょっと寄り道>大統領選挙、候補者集会めぐり


    第5章 はたらくおじさん
     マリの出稼ぎコンシェルジュ/アラブのお菓子を売るユダヤ人/ポルトガルから来た塗装工/中
     国・青田出身の出版人
     <ちょっと寄り道>同時多発テロの現場へ


    第6章 いまを生きるおじさん
     「隠れた子ども」だった人/難民申請中のスーダン人/難民支援団体の事務局長/イラクから逃
     げてきたクルド人/大衆紙「パリジャン」の記者/癌の研究をしていたベトナム人
     <ちょっと寄り道>泡沫候補!

    取材後記(広岡裕児)
    あとがき(金井真紀)

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著者プロフィール

1974年千葉県生まれ。文筆家・イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を任務とする。著書に『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)、『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)、『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)、『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)など。難民・移民フェス実行委員。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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