過激な隠遁―高島野十郎評伝

著者 :
  • 求龍堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763008183

感想・レビュー・書評

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  • 「誰にしろ「楽しい」と感じる仕事に向けては、自分では制御できぬ道筋と資質によっていざなわれる。いうまでもなく、そこにはしばしば苦悩もまちかまえているが。」

    また、代表的作品の《蝋燭》は「絵馬」だと画家が言っていたというのが印象的だった。
    神は自分の中にいる。
    凡夫の中の仏性に奉納し続けた《蝋燭》に、私も釘付けになってしまったのです。

  • 「NHK日曜美術館展」のカタログを鑑賞し、
    この画家に興味を持ち、探して読んだ本。
    過酷な創作活動で終始した果ての、この画業。
    まるで、修行した仙人の境地に達したような静謐。
    才能とは?努力とは?
    考えさせられました。

  • 長い間、埋もれていた画家ですが、その作品を前にすると、とことんまで突き詰めた極限描写にこちらの息も詰まります。

    世俗から離れたところで、一人、修行僧のように描いていたのだろうと想像していたのですが、実は、マネージャー的な人もいないなか、個展から絵の販売、不動産の交渉まで、全て自身でやりつつ、作品を制作していたと知り、頭が下がった。
    俗世にいながらにして、自分の生き方を貫いた、凄まじい人生を送られた方です。
    反面、作品からは、ただただ、静謐さしか感じられません。描くことが画家の宗教的行為であるかのようで、風景画も静物画も、宗教画のように感じられました。

    画家の思考の行き着く先は、「慈悲」だった。

  • 高島野十郎が64歳、著者が24歳の時の運命的な出会い。それ以後、著者の外国留学時期を除いての交流は、高島に「息子のような者」と言わしめてきた。
    野十郎の言動、そして哲学的思想について、学者である著者の明晰で敬愛あふれる分析が胸を打つ。いくつかの野十郎評伝の中でも出色だ。

    過去即未来
    時間即無
    未来即過去
    空間亦復如是

    仏教的思想背景への考察も深く心に差し込まれる。

    写実を超えた写実の「蝋燭」や「月」の作品が示すもの。
    本当のアバンギャルド、過激な隠遁を支えた個の自覚に、言葉もない。

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著者プロフィール

1930年、福岡生まれ。早稲田大学文学部博士課程修了。ロシア文学専攻。早稲田大学教育学部教員を経て、現在は翻訳、著述に携わる。著書に『複眼のモスクワ日記』(中央公論社)『ペレストロイカの現場を行く』(岩波同時代ライブラリー)『カタストロイカへの旅』(岩波書店)『ロシアのユーモア』(講談社)など。訳書にロープシン『蒼ざめた馬』(岩波同時代ライブラリー)サヴァインコフ『テロリスト群像』(現代思潮社)アンドレイ・サハロフ『進歩・平和共存および知的自由』(みすず書房)など。

「2003年 『ある零戦パイロットの軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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