原発ジプシー 増補改訂版 ―被曝下請け労働者の記録

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768456590

作品紹介・あらすじ

人命を危険にさらさなければ維持できない「先端技術」。原発下請け労働者の視点から描写される放射能管理の実態。

感想・レビュー・書評

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  • この本は 30年ほどに著者が 原発施設で働いた内容の
    ルポルタージュである。
    ので、現状とは 少し異なるだろうけど
    とても凄いです。

    作業内容についていえば
    必ず行わなくてはならない定期検査をするべき場所が
    とても劣悪な状況であるのが 驚きました。
    構造上仕方のない事かもしれないけど、
    被爆する時間を短くするには もっと 工夫が必要なのでは?と
    思いました。
    (当時の原発施設なので 今は改善されている事を祈ります)

    さらに、実際現場で働く人達を使い捨てにしていた事。
    原発の親会社の人はあまり被爆しないですむ作業をして
    下請け 孫請けの 方達が 沢山の被爆量であった事。
    本来ならば 労災なのに、実費払うから 労災にしないでと言われたり、
    労災にしてもいいけど、違う場所で怪我したとしてと言われたり。

    そして、将来原発から離れて 病気になっても
    原因がはっきりしないから 保障もない。

    健康診断した 情報も教えてもらえないとか。

    ひどいですね。
    現在では 地元以外の人達が 流れ流れて働きに来る事はないそうですけど、
    でも 地元の人たちだって、ここ以外に職場がないからここで働くそうです。

    原発って 実際に働いている人たちをも 汚染しているんだし、
    放射能って どれだけ 悪影響するのか 本当に 安全な数値ってあるのか
    まだまだ わからないことばかりなのに。
    動かす利益って あるのでしょうか??
    地元の人達の 労働の場の提供というなら 
    なにも原発じゃなくても もっと安全な労働の場所を考えるべきでは
    ないでしょうか???

    そう、しみじみ思いました。

    後記になりますが 著書は日記形式だったんですけど、
    なんと著者が、作業員として 福島原発での潜入ルポをしていた 
    1976年3月11日  地震があったそうです。
    はじめこのページを読んだ時、あれ? このルポって この前の東北の震災?
    にしては その後の出来事が 日常だなぁ??こないだの地震じゃないの?
    とページをめくって 確認すると 1976年だった。
    てことは 30年程前にも 3月11日に地震があったのですね。
    偶然とは言え 少し不安を感じました。

    で、気になる 著者ですが、
    「死の淵からようよう舞い戻ってきたばかりの 太い人工血管を全身に埋め込まれ・・・」と 書かれていました。1948年生まれですから 今67歳のはずですのでそんなに弱っているのは どういう事なのでしょうか??
    原因が書かれていないので、推測の域を超えられませんが、7ヶ月に渡る潜入ルポで弱ってしまったのかもしれません。

    続けて 原発についての本を読みましたが
    良い事はひとつもありませんでした。

    少し この手の本を お休みします。。。。

  •  元本は1979年に刊行されたノンフィクションの名作で、私は初読。著者自らが3つの原発で下請け労働者として働いた体験を綴ったものだ。

     3月に起きた原発震災で再び注目を浴び、単行本と文庫で急遽復刊されている。本書の3分の1は、著者がまさに福島第一原発で働いた記録なのだ。

     文章表現などは、「ニュー・ジャーナリズム」台頭以前の古めかしいノンフィクションという感じで、野暮ったい。しかし、内容の迫力はすごい。
     原発労働者が過酷で危険な労働環境にあることを、私たちは「なんとなく知っている」だけで実態は知らない。本書ではその過酷さ危険さが、微に入り細を穿ってつぶさに描き出される。

     ゾッとしたのは、原発内部(管理区域)での仕事に配置転換される際、労働者たちがそのことを「良かったなあ」と表現するくだり。
     つまり、管理区域外の作業があまりにつらい(熱さなどで)ため、放射線を浴びる区域での仕事が「ラク」に思えてしまうということだ。

     また、末端労働者同士にはあたたかい感情の交流も生まれるのに対し、各電力会社の幹部社員たちは下請け労働者をモノのように扱い、傲慢だ。その非人間性に対する告発が、本書のもう1つの見所になっている。
     たとえば、次のような場面――。

    《「これからは、構内でケガをした人は電力(関西電力)さんにあやまりに行くことになりまして……」
     このひとことに、室内は急に静かになった。静かになったというより、険悪なムードになったと言ったほうが適切だろう。中年の労働者が立ち上がった。顔面を紅潮させた彼は、強い口調でしゃべり始めた。
    「だれだってケガしとうて、するんじゃないで。それなのに、だよ。いいですか、ケガして苦しむ本人が、そんな仕事をさせた電力に頭を下げにゃならんちゅうことは、どういうことですねん。ふざけちゃいけんよ。そんなことは、わしら下っ端に言うことじゃなくて、わしらを監督してる者に言うことやろ……」》

     これは美浜原発での一コマだが、どの原発でも、「電力さん」と末端労働者の関係はこんな感じなのだろう。たぶんいまでも……。

     刊行後32年を経たいまなお(というより、いまこそ)読む価値のあるノンフィクションだ。

  • 『原発ジプシー』で加藤登紀子さんが歌ったこの世界が真実という事を知って衝撃を受けた頃に本書を知りました。筆者が原発労働に従事していたのは70年代ですが、実態は今もさして変わらないものだと思っています。

    「見えない光体に受けて 赤いブザーの鳴り響くまで…」という歌い出しで始まる加藤登紀子の「原発ジプシー」という曲を僕は最近知って、この歌に描かれている世界を実際に記した本があるということを聞いて、それが最近再販されたということを知って、手に入れて読みました。

    この本は幾度となく再販されており、そのたびに削除された箇所があったりしているのを福島原発の原子力発電所の原発事故を機に新たに「跋文」というあとがきを書き下ろされて復刻したという経緯を持っています。内容はというと、筆者自身が原発の下請け労働者として美浜・福島・敦賀で働いた経験を元に、そこで見聞きしたものや、実際に感じたことを赤裸々に記したルポルタージュの傑作ともいうべき本であると思います。

    「先端技術」と知って将来が期待された原子力発電が、日雇い労働者や、農民、漁民などの労働力なしには成り立たず、彼らは放射能の危険性もろくに知らされないまま、完全武装の防護服を着、狭く、暑苦しい現場ですさまじいばかりの放射能を浴びながら過酷な労働に従事し、被曝の度合いが一定以上を超えれば、文字通り「棄民」として打ち捨てられる…。そのプロセスが事細かに書かれてあったり、電力会社の社員と、下請け、孫請け、ひ孫請けの「協力会社」が使うものが違ったりと露骨なまでの差別が描かれ、彼らの存在を「犠牲」にして、原発というものが成り立っているのだということを改めて思い知りました。

    一番印象に残っているのは筆者が作業中にマンホールの穴に落ちて肋骨を折る重傷を負ったときに彼の上役である親方や、電力会社の社員があの手この手を使って事故を「労災」扱いにさせないための「懐柔策」を打ってくる場面の描写は、読んでいて戦慄が走るほどでした。原発における無事故記録はこうして表に出なかったからこそ成り立っていたのだ、ということを同僚の労働者がつぶやく描写に、原発における労働者被曝の問題を追い続けている樋口健二氏の『本当のことは労働者が一番よくわかっている』という言葉が頭をよぎりました。

    現在も福島の原発事故の現場では文字通り命を賭して事故の復旧にと止めている原発作業員や、ほかにも、日本全国で原発労働の現場で働いている方々のことを想像してしまうと、気持ちが重くなります。ここには『安全神話』の裏側にある『真実』が描かれております。そこには絶句するほどのものがありますが、それに目をそむけてはいけなくなってしまったと、最近とみにそう感じております。

  • 堀江さんはフリーのジャーナリストである。原発については、電力会社に聞けば「安全だ、安全だ」としか言わないし、そこで働く労働者は口をつぐんで黙ってしまう。外からの情報のまどろっこしさに耐えられなくなった堀江さんがとった方法は、自ら原発労働者として働き、その実態を知ることであった。堀江さんは美浜原発を皮切りに、福島第一、さらにもっとも過酷と言われた敦賀原発を渡り歩く。今は差別用語となっているが、それはかつて呼ばれた「原発ジプシー」を体をはって実践したのである。現場の労働は過酷であった。それは、原発の構造が点検する人のことを考えないしくみになっていたこともあるし、つねに被爆の恐怖と戦わなくてはならなかったからである。原発の直接の犠牲者は東海のJCOで2名出ただけであり、大騒ぎすることはないという声もあるが、現場の労働者たちはつねにその恐怖と戦っているのである。原発といえば時代の先端を行っているようにみえるが、蒸気タービンをまわすのに原子力という、処理のできない死の灰を生み出すウランを使っているのであるし、圧力容器にもっとも近い現場で働く人たちの労働は人間性をまったく無視したものなのである。原発の立地が、その生み出す電気を使用しない地域の犠牲の上に成り立っているだけでなく、そこで働く人々はまさに差別構造の最下層にいるのである。これが未来のエネルギーだろうか。こういうものをよく40年間もやってきたと思う。堀江さんは、一年近くを現場ですごし、労働者たちと心の交流をし、この報告を書いた。それは、もの言わぬ原発労働者の声の代弁でもあった。本書が出ると、大きな反響がおこったが、電力会社は、バカらしくて反論する気がしなかったと言ったそうだ。悲しい人たちである。

  • 基本的に専門家ではない労働者の手作業によって原発が維持されている現実にゾッとする。また、被曝と悪環境で労働者が使い捨てされている。正に現代の蟹工船のよう。こんな状況で事故が起こらない訳はない。

  •  まず著者の勇気に感服する。ジャーナリストとして、原発を外からでなく、実際の一労働者として働くことで原発が果たして政府や電力会社の言う通り安全なものなのかを取材・検証している。この本が1979年に出版された時代、私は生まれていないが、反原発運動がすでに起こっていたという事実は知っている。福島の事故があって、放射能の危険性があったにかかわらず、なぜ政府や電力会社は安全と言うことができるのか、疑問に思っていた。そして、この著書を読んで、改めて原発について知らなかった事実を知ることとなった。
     電力会社の下請けとして、線量計やアラーム・メーターを装着し、会社の規定の線量を気にしながら働く労働者。働かなければ生きていけない故、病院にも行けず、転職さえもできない日雇い労働者。原発誘致を拒否できず、原発で仕事を請け負うことでしか生活ができない原発中心の社会に住む市民。常に服は黒く汚され、濁った空気の中でマスクをしても容赦なく襲ってくる粉塵。電力会社に頭が上がらず、労災さえも適用させない下請け会社。そしてたまにしか現場に現れない電力会社の社員。こうした原発ムラが存在し、テレビでは報道されない事実が数多く存在する。
     そして、驚くことに、放射能が人体に与える影響のほどについては、最先端の現代知識を持ってもしても。じつはまだ十分に解明されていないということだ。子どもに影響があるやら甲状腺がんがふえるといった情報が飛び交うが、それがわかるのは数十年先のことであろう。それなのに今まで、なぜ原発が安全だと謳われて信じられ、推進されてきたのか。こんな不遇な労働環境のもと運転されていたことのどこに危険性がないと言い切れるのか。

     

  •  フリーライターが1978年から半年間、日雇い労働者として原発で働いた記録をまとめたノンフィクション。

     本当に半年間の労働を日記の様に書き連ねてるのでやや読みづらいが、だからこそ伝わる生の姿が書かれている。
     原発労働が下請けの不安定な雇用で行われているという現実(しかもとてつもなくピンハネされてる)。安全や労働者の健康への配慮も問題点だらけで、大勢の労働者が被爆している。
     この本は原発の本であるが、いわゆる日雇い労働者のあまりにひどい扱いについても問題提起している本でもある。

     原発というのは設置される地元からそこで働く労働者、今後決まる(?)最終処分場に関することまで、弱者をつくりだしてその人たちに不利益を押し付けるという構図がないと成り立たないのではないかと思う。

  • みんなに読んでもらいたい一冊。

  • これもまた数十年来読みたかった本。
    日本国民はみな読むべし。
    今はどうなっているのかわからないが、恐らく旧態然として変わらぬであろう。
    今福島で起きている被爆隠しを見れば、その本質は全く変わらない。

  • 脱原発とかいうけれど原発がなくなればそこで働く人たちの仕事がなくなってしまうからよくないのでは的な意見を聞いたことがある。
    この本を読んだらそんなこと言うてられへんようになる。
    好きで働いてる人はいないでしょう。
    命かけるだけの賃金を支払われているとも思えない。
    儲かっているのは現場にいない人たち。
    安らかに暮らせれば貧乏でも構わない、と金儲け好きな人も思てくれへんかな。

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