ピンク・トライアングルの男たち: ナチ強制収容所を生き残ったあるゲイの記録 1939-1945

  • パンドラ
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768477755

作品紹介・あらすじ

封印された歴史に迫る衝撃の書!同性愛ホロコーストの実態が、いま明らかに。

感想・レビュー・書評

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  • 1997年のイギリス映画『ベント 堕ちた饗宴』を見た友人から、「ほとんど知られていないけれど、ナチスはユダヤ人だけでなく同性愛者も捕らえ、ピンクの三角形がついた囚人服を着せて迫害した」と教わりました。
    衝撃的なその事実の詳細が書かれている本が、この『ピンク・トライアングルの男たち』。著者はオーストリア人の同性愛者。恋人がナチ国家高官の息子だったのが、ある日突然ゲシュタボに連行され、そのまま強制収容所送りとなります。

    常に差別に満ちた蔑みの中、強制労働を強いられ、衰弱して死んでいった同性愛者の数は、はっきりとした記録が残っていないものの、数十万人はいたのではないかと言われています。

    自分が実際に受けた体験から、歴史の中に葬られた人々にフォーカスを当てている貴重な資料。

    ナチスにとらえられたのは、ユダヤ人のほかに囚人 非社会分子、政治囚、エホバの証人、刑事囚、亡命者、同性愛者、ジプシーなどがおり、その中でも同性愛者は最下位の扱いを受けたそうです。

    著者は、さまざまな状況の中、生き延びることを目的に時には手段を択ばず、さまざまの人の助けを得て、生きながらえていきます。

    当時、同性愛は法律で認められず、虐げられるばかりだった人々。
    人体実験の被験者にもさせられていました。

    おどろいたのは、収容所内で、同性愛者のいないブロックの同性愛行為は頻繁に行われ、代償行為とみなされていたものの、同性愛者同士は忌み嫌われて迫害されていたとのこと。明らかな矛盾を感じます。

    また、同性愛者であっても、女性同士のレズビアンは非合法ではなく、ホモのみが非合法として弾劾されたとのこと。

    そうした不条理の中、6年間の収容所生活から、なんとか生還した著者。
    この人の記録があるからこそ、どのような仕打ちを受けたのかが後世に残されることとなったわけです。

    極力感情は廃され、淡々とした記述がなされていますが、あまりにもずっしりと重い内容。
    人権がないということのおそろしさがまざまざと感じられる本です。

  • きっかけは演劇のBENTを見たこと。ナチの強制収用所に同性愛者(男)が連行されピンクの三角形の印をつけ最下層の入所者として扱われた、とはほとんどの日本人が知らないのではないか。私も知らなかった。後書きによると数万人は逮捕されて収容所に送られたそうだ。
    ホロコースト、ユダヤ人迫害については写真や映像や文字で多くが語られており、ユダヤ人が黄色い星を着けたことは有名だ。ナチ政権下では政治犯刑事犯ロマらも収容所に送られた、そこまでは知っている。その中でランクが分けられており、刑事犯が上、同性愛者が最下位。
    おそらく、ユダヤ人と比べてこの問題についての書籍やメディアは極端に少ない。しかも日本語のものは僅かだろう。本書は希少な記録だと思われる。

    ナチスの残虐さ、強制労働や拷問のありようは、非道だが「ユダヤ人の場合と同じ」とはいえる。今まで語られてこなかったのは、強制所での性ではないか。作者は当時若くおそらく美しく、囚人長らの愛人となり、目をかけられたことで生存者となった。少年を囲うのも当たり前だった。女性囚人が送り込まれた買春所もあり、やつれ果てた囚人らまで押し寄せ、用済みとなった女性は絶滅収容所に送られたという。
    同性愛者差別についても問いを投げかける。ユダヤ人のケースと違って一時的な異常事態ではなく一般人の意識に根付き現在まで続いている。だから声を上げられず、知られないままになっている。
    なお、女性の同性愛者については後書きで触れられている。ナチの逮捕対象は男性のみだったそうだ。

    筆者の語りには、ユダヤ人ばかり注目され日陰扱いになったことへの怨嗟が滲む。「ゲイはナチスからこんな酷い扱いを受けた、ユダヤ人と同等だった」という表現が何度も登場するが、ユダヤ人迫害に反対するようなコメントはみられない。極限の状況でそこまでの人間性を期待するのは酷かもしれないが、人間は自分より下位に誰かを位置づけてプライドを保たずにはいられないのだろうか…とも思った。

  • ナチス時代の同性愛について書かれたものは少ない。筆者の父親はオーストリアの官吏だったが、息子を救うために努力したが無理で自殺した。

  • 1?年ぶりに再読。

    ゲイという「犯罪」のために、強制収容所に入れられたある男の手記。

    身を守るための「愛人関係」、看守たちの残虐な仕打ちなどが赤裸々につづられている。

    しかし、「現実のことなのか?」というような世界をやっと生き延びてきたが、戦後になっても彼らにはなかなか安息が訪れなかった(ゲイはなお「犯罪」だったから)のは悲しい。

  • ある人物のナチ強制収容所での体験が克明に著された一冊。その人物は、告白の合間に"これらの出来事を、私たちの体験を知っているのか?そして、今もまだ虐げられている私たちの存在を知っているのか?"と、この本を読む者に度々問いかけてくる。読む者は、その事実を知らなければならない。ほんの僅かであったとしても感じ取らなければならない。告白の言葉に切りつけられる必要がある。あのような蛮行が繰り返されない為に、今この時も現れつつあるその蛮行の芽を見逃さない為に。

  • 珍しい視点、勉強になった。

  • 同性愛に偏見ある人こそ読むべき。

  • 人間って怖い

  • ピンクトライアングルと呼ばれる標識を付けられていた、ナチスドイツ時代の強制収容所でのゲイ囚人の話。
    実体験から書かれている。強制収容所の恐ろしさが、同性愛者の観点から書かれていて、興味深い。

  • ちょっと異色のナチスドイツの話。

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