- Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
- / ISBN・EAN: 9784769905981
感想・レビュー・書評
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マスコミによる公務員叩きは非常に面白く映している。某テレビ番組や最近の事業仕分け、脱官僚等は国民の不満を和らげる効果があるようだ。ところが、官僚に対して早くから考察を行った人物がマックス・ウェーバーである。本書によると「政治的な意味において近代国家、資本主義において完全な発達を遂げた」という。
マックス・ウェーバーは本書の書き出しにおいて官僚制の特徴を
①目的活動の遂行に必要な活動が明確な形で分配されているが、規則によって厳格に制限されている
②上級官庁が下級官庁を監督する(大政党や私的大経営においても見られる)
③職務執行は文書に基づかれる
④専門化した職務活動は専門的訓練を必要とする
⑤俸給という形での貨幣報酬と恩給による老後の保障を受ける
⑥任用の前提条件に専門試験がある
としており、その前提には貨幣経済の発達の意義に注目している。確かに我が国で言えば鎌倉時代の荘園制度、中国の王朝による支配などの封建社会は家産的であり、現物による俸給は不規則になりがちである。土地を仲立ちにした現物支給では歴史的に組織の仕組みが崩壊している。これが時には官職売買を生じ、結果として統制を弛めることは十分に考えられる。
このようにマックス・ウェーバーの考察は単なる経済だけではなく、歴史・社会だけではなくひいては宗教にまで及ぶ。そして行政の任務が増えるに従い、諸葛孔明やナポレオンに代表される名望行政家や一人の英雄に限界点が訪れることを引き合いに出し、官僚組織が技術的にも優越していることを指摘する。
我々は官僚組織=お役人 というイメージは誰もが持っているが、マックス・ウェーバーによると今日においては社会の隅々まで官僚制が及んでいるという。なるほど、すべての企業はこの官僚制を取るし、社長の下に重役、その下に部門長等、さらには平社員といった具合に個々の組織の専門が組織を構成しているのは周知のとおりであろう。
マックス・ウェーバーは官僚制が資本主義の利益に寄与し、封建的特権を破壊したことを主張するが、同時に他に対しても影響が及ぶであろうことにも注目する。官僚制の進行は秘密の順守が必要となる。しかしそこには当然権力が発生する。一人の英雄の判断が政治を取り仕切る恣意性を打ち破った官僚制、それが自由を奪うという逆説性。マックス・ウェーバーは官僚制が徹底した管理社会になると予測し”鉄の檻に囲われる”と例えた。
そして現在。リッツァの「マクドナルド化する社会」によるとマクドナルドこそ官僚制の最たるものであるという。形式化されたバンズ、パテの大きさなど客だけではなく店で働く人ですらそこには裁量が無い。
管理された社会において官僚叩きをしているのは気分がよいかもしれないが、その我々ですら官僚組織に組み込まれており、お役人叩きで喜んでも問題は何も解決しないであろう。むしろ我々の作り上げた資本主義が逆に我々を縛る…我々は健全に官僚組織のあり方を考える時が来ているのではないだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さっと読めるかと思いきや、なかなか手ごわくて苦戦した。
「行政の官僚制化がひとたび完全に実施されているところでは、実際上ほとんど破壊しがたい支配関係形式がつくり出される。個々の官吏は、自分がはめ込まれた機構から脱出できなくなる。名誉職や兼職として職務をつかさどる「名望家」とは異なり、職業官吏は、物質的、観念的な全存在を挙げてその仕事を拘束されている」(p53)
という部分が印象的でした。 -
権力とは自己の意思を他人の行動に対して押しつける可能性(黙って言うこと聞け)。支配される側が支配を「正当」だと考えることで支配が成立する。自分が相手を支配することを相手も受け入れている状態。支配が正しいかではなく、支配される側がその支配を正当だと考えるか(cf. ヴェーバー客観性)。▼支配される側が支配を受けるという行為に与える意味によって色んな種類ある。相手が自分を昔からの伝統だと認めている場合。相手が自分を呪術的・超人的な資質を持っていると認めている場合。そして、支配される側が合法だと認めている場合。▼合理的に支配する方法。権限は明確に限定する。職務上の序列を作る。職務と私生活は別にする。文書で事務処理する。フルタイムで働いてもらう。規則を習得してもらう。組織はとても強くて壊れない。人は精密機械のように働く。秘密主義。マックス・ヴェーバーWeber『支配の社会学』1922
工場の作業の過程から徹底的に無駄をはぶき、効率的に編成しよう。科学的に管理しよう。F・テイラーTaylor
米イリノイ州の家電機器の工場。自分たちは実験に参加して、見られているという意識が作業効率を上昇させる。物理的な条件よりも、社会的・心理的な条件が大切。E・メイヨ―Mayo, ホーソン実験1932
ゴールドナー1954
権力。さもなければBがしなかったような事を、Bにさせる度合いが強ければ強いほどAはBに対して権力をもつと言える。ダール1957
官僚的な人の特徴。形式・儀礼を重視。規則だからやっているだけ。規則や礼儀作法がこまごまとしていて煩わしい。細かい手続きミスにうるさい。 無用の虚礼。繁文縟礼(はんぶんじょくれい)。手段が目的になっている。「これまでそうしてきたから」。なんのための仕事か自覚がない。前例がないからダメ。現行法に反するからダメ。組織が硬直。業務を効率的に行うのを阻害する。▼合理的であることを目指していたのに、非合理的な結果になってしまう。逆機能。R・マートンMerton、1957
効率的。無駄を省く。時間を節約。分業を徹底。メニューを限定。▼予測しやすい。マニュアル。誰でも作れる簡単な調理。熟練の料理人に依存しない。▼社会が合理化=マクドナルド化している。チェーン店(スタバ、タリーズ)。コンビニ(全国どこでも同じ商品)。G・リッツァRitzer『マクドナルド化する社会』1993
※スローフード運動。かたつむり。イタリア、トリノ。昔ながらの喫茶店。
官僚制は公私の領域を明確に分けることで、私的な利害によって公共性が害されるのを防いでいる。また、私生活の自由を公的な圧制から守っている。Du Gay, 1996 -
組織を考える上での古典。でも、この本の段階(1987年)ですでに官僚化が組織を硬直化を呼ぶなどを指摘していて面白い。そのメリット・デメリットを分析する土台となった書籍なのであろう
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目次
一 官僚制の特徴
二 官吏の地位
三 官僚制化の諸前提と諸根拠
1貨幣経済的および財政的な前提と根拠
2行政事務の量的発達
3行政事務の質的発達
4官僚制的組織の技術的利点
5行政手段の集中化
6社会的差別の平均化
四 官僚制機構の永続的性格
五 官僚制化の経済的および社会的結果
六 官僚制化の権力的地位
七 官僚制化の発展段階
八 訓育と教育との「合理化」 -
官僚制とは知識の囲い込みと特権的専門性を持ち得る集団の匿名化である。匿名化により一定の地位と知識を個が保持するのではなく、集団として保持するようにし、知識の囲い込みによって専門性という特権を獲得する。また、内部での合理化を教育と訓練、つまりは専門試験制度などで行い、流動を潤滑にしていく。永続的で崩壊しにくいシステムにある官僚制は、規則、目的、手段、即物的非人格性が支配しながら既存体制の『非合理的』支配構造方式を一新するものとなった。