- Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
- / ISBN・EAN: 9784772695374
作品紹介・あらすじ
・人間はなぜ限りない可能性をもつのか?
・多宇宙と量子物理学の核心とは?
・人間原理をどうとらえるべきか?
・生命が遺伝暗号DNAへ飛躍した謎とは?
・文化と創造力はいかに進化するか?
・望ましい政治の選択とは?
・花はなぜ美しいのか?
・持続可能性は良いことか?
・・・
物理学、天文学、生物学、数学、コンピューターサイエンス、
政治学、心理学、哲学・倫理、美学を統合し、
限りない創造と探求へと開かれる「万物の理論」へ!
感想・レビュー・書評
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もう少し数学チックかと思いきや、結構哲学的です。
有限な脳からなんで無限の概念を産み出せるのか、的な。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あらすじを見てもレビューを見ても、とても難しそう…と腰が引ける。
しかし実際読んでみると、確かに難しいことは難しいのだが、リーダビリティは意外なまでに高かった。ラストは巻措くあたわず(内容を考えると、600ページで4日は自分としてはかなり速い)。
その理由は、著者が自論の難解さをきちんと認識していること。ゆえに非常にわかりやすい(かつお茶目な)喩え話を多用し、さらに各章の末尾には「用語解説」や「まとめ」まで。ここまで来ると怪しい自己啓発本のよう、と微苦笑すら誘うほどの親切設計。
「隷属なき道」(ルトガー・ブレグマン)にも同じようなことを書いたが、本書の場合は実際半端なく難解な内容なので、著者自身による要約はありがたかった。
パッと見ほどいわゆる「理系」的な内容ではなく、「文系」っぽいものもかなり含む。特に歴史の知識があることは、相当(物理学のそれに優るとも劣らぬほど)本書の理解を助けてくれるのではないかと思う。
初め、なんだって物理学者がこんな禅問答みたいなことを考えるに至ったんだろ…と首をひねったが、思えば「シュレディンガーの猫」なんてのも相当に禅問答的で、何事も極めれば観念的になるんだなあと腑に落ちた。
難しいことを易しく(当社比)解説できることといい、著者は本当に、ものすごーく頭がいい人なのだろう。「こういう人には、世界はこう見えるんだ…」「そりゃこんだけ頭がよけりゃ、このくらい壮大にややこしいことでも考えてなきゃ己の頭脳をもてあますよなあ」としみじみした。
天才の思考の一端に触れる、興味深い読書体験だった。
2021/11/4〜11/7読了
以下は個人的備忘録。
第1章:始まりにして終わりの書ならぬ章。本書のすべてを内包する。思いがけない読みやすさ。つかみは万全。
第2、3章:1章の続きで内容を発展させたもの。「99%の努力なんてもんは自動化できる(しちまえ)」という論が小気味いい。
第4章:ネオダーウィニズムについて。著者の論の主軸であるアイディアの複製(伝播)を述べるに際し不可欠な知識のため、ここで前説。とはいえ目的にあらず手段なので、生物学の素養は不要。
第5章:章題の「抽象」とは、物理学が「リンゴが落ちてきて頭に当たった」の域を超越した段階におけるものに近い(と私には思えた)。哲学的なのもさりながら、かなり「理系」的で難しかった。
第6章:しょっぱなの「treason」から非常に面白く読んだ。普遍性の獲得が歴史的にかくも遅れたことについて、「ゼロからつくる科学文明」(ライアン・ノース)が徹底的に揶揄していたのを思い出したりなど。過去の読書体験がつながってくる快感があった。
第7章:AIについて。内容は興味深いがこの問題は現状未解決であるため、必然的に他章よりも筆致は曖昧。
第8章:タイトルに冠している「無限」について。これまたかなり「理系」的かつ観念的だが、高1物理70点の私にも(なんとか、そこそこ)理解できるように書いてあるのはさすが。
第9章:個人的に一推し。神経症者必読。歴史好きにも面白い。
第10章:インタールード的。ここまでのまとめを読みやすく。
第11章:多宇宙(≠並行宇宙)について。「量子って何それおいしいの?」な人間(私)にはかなり難しかった。物理学の知見がある人には面白いのではないかと。
第12章:著者いわく、悪いのは誤りを犯すことではなく、正さないことである。
読者「では、どうして人は誤りを正そうとしないのですか?」
デイヴィッド「悪い哲学のせいです」
てな話(笑)。メディア・リテラシーの涵養にもつながり、現代人には重要な内容と思われる。
第13章:衆院選1週間後に読むとめちゃくちゃ刺さるw 言いたいことはわかるんだけど多分に理想主義的というか、有権者が賢くないと成立しえない社会という気も。ただ、「不正しない政治家(というか『人間』)を探すなんて不可能。んなことにエネルギーを浪費すべきでない」てのはごもっとも。
第14章:「客観的な美は実在する」と述べる。んなバカな、と思った人は一読を勧める。個人的には腑に落ちた。
第15章:抑圧的な文化について。政治的にアレなのか興味がないのか、「どこの」文化が「どう」ヤバいかを具体的に指摘していないので、個人的には値打ち半減。ジェンダーギャップ121位、この期に及んで女性議員の比率が下がった国の住人としては、そここそが肝だと思うので。
第16章:「これ(=前章にあるような文化を作りいまだに維持する)ほどアホな人類が、なぜこれほど優れた創造力を有するに至ったのか」という話。予想される反論への反論という感じで、個人的には(おそらくは著者としても)自明のことをわざわざくり返しているだけに感じた。
第17章:ロジックとしては興味深いし、説得力がある(し、ついでに目ウロコ)だが、15章と同じ匂いが。トランプなんかがドヤ顔して終わり、著者の知性は理解されない気がする。
あと、15章を読んだ時点で個人的に漠然と感じていた予測への答えがあるが、やはりこの人は「万一、最善を尽くしてなお問題の解決がその致命的な進展に追いつかなかった場合、われわれが力不足だったのだから従容と滅ぶべき」と考えているらしい…まあ、非常に頭のいい人ならではの割り切りだが、人類の大部分はそんな知性にも理性にも恵まれてないわけで…。
第18章:エピローグ。前半はシミュレーションの話で、物理学に暗い者には難解。ただしラストは簡潔にして明瞭。最も言いたいことを何度も、平易な言葉で、目立つ場所(冒頭、中間、ラスト)に置くあたりがやはり、賢い。
(上から目線で恐縮だが、こんな当たり前のことを「馬鹿な人間のためにやってやる」ことすらできない偉才が世の中には多いもので) -
数学
サイエンス -
献本にて頂く。
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1月に購入し、5月中旬から読み始め、今やっと読了。示唆に富む「良い説明」が盛りだくさん。人間と他の動物や人工知能との違いは、アイディアを生み出し続けそれを伝える続ける、永遠の建造者であること。進化論と利己的遺伝子の関係。自然数の総量=偶数または奇数の総量。もし牛馬が手をつかい描くことができたら彼らの神を牛馬の姿に描くだろう。選択と意思決定の罠。知恵と遺伝子。知恵はどうやって取得され、理解されるのか。オウムはなぜ犬の真似をして尻尾を振らないのか。世界のミニチュアであるところのイースター島。ジャレド・ダイアモンドの説に全面反論、現在の地位を築く元となったのはアイディアである。
ほぼ文字だけの610ページ。こんな分厚い本でも良き切れるようになったことは良し。 -
自己啓発を拗らせた物理学教授が始めた宗教のバイブルって感じ。