人類を変えた素晴らしき10の材料: その内なる宇宙を探険する
- インターシフト (2015年9月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784772695473
感想・レビュー・書評
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人類を変えた素晴らしき10の材料 マーク・ミーオドヴニク著 身の回りのモノと科学の力
2015/11/15付日本経済新聞 朝刊
「材料科学」というと地味でとっつきにくい印象を受けるかもしれない。しかし、テーブルは金属やプラスチック、本は紙、住居はコンクリートやガラスでできているなど、身の回りには科学の力で優れた性質を持つようになった材料であふれている。本書は日々の生活でお世話になっている10の材料を例に取り、生い立ち、改良の歴史、進歩の可能性などをわかりやすく解説する。
まずくて口にできないカカオの種が、いかにして世界の人を魅了する味わいをもつチョコレートという食べ物に変身するのか。どんな化学反応が決め手になるのか。砂粒に多く含まれる石英から作られるガラスはなぜ透明なのか。強化ガラスはどのような物理現象を応用して開発され、銃弾をも食い止めるまでに進化したのか。
種明かしで化学式なども時折登場するが、難解さを感じさせないのは著者自身の経験に基づいて物語を展開しているからだろう。高校時代にカミソリの刃で背中を切られた経験をきっかけに、材料に興味をもった。以来、金属材料に関心を抱きジェットエンジン用の合金の研究で博士号を取得したという。未来にはまだまだ面白い材料が登場し、人生をもっと豊かにしてくれるかもしれない。そんな期待を抱かせる。松井信彦訳。(インターシフト・2100円)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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自分たちのために大活躍しているこの材料を、私たちはどうしてほとんど話題にしないのか?9
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手持ちの本の集合は蔵書以上の存在だ。それはアイデンティティの主張である。47
本は愛されている。もしかすると文字で記された言葉以上に。人は本を自分が何者かを定義する手段として、また自分の価値観の物的証拠として用いる。本棚やテーブルに載った本は一種のマーケティング訓練になっており、自分が何者でどうなりたいかを各人に再認識させる。64
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パーティーで見かけた素性の知れない客のように、何と声をかけたものかわからなくても、とにかく傍らにいたくなる。
そんな材料には違う未来がふさわしい。忘れ去られたり、粒子加速器に埋め込まれたりする未来ではなく、そのものが高く評価される未来が。
そして青空の素材があるとすれば、それはエアロゲルなのだから。133
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