子どもたちと話す 天皇ってなに?

著者 :
  • 現代企画室
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本棚登録 : 20
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773810127

作品紹介・あらすじ

「天皇」は、私たちの生活とは縁遠いもの? 祝祭日はどこからきたのか。戦争を経て、「天皇」のあり方はどのように変わったのか。日の丸や君が代、元号とどう向き合うか。おじいちゃんと孫たちは、世代を超えて自由な意見を交わす。この問題にはさまざまな立場、違う意見がある。背景をきちんと知った上で、考え続けよう。

感想・レビュー・書評

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  • 考えてみれば「天皇制」について、深く考えたことはなかった。
    口語体でわかりやすく、とても勉強になった。
    一番驚いたのは、「君が代」「日の丸」が1999年に「国歌」「国旗」になったという件。特に「国旗」の「日の丸」が日本軍の旗だったというのは、衝撃。そりゃあ、中国の人達も怒るよね・・・。

  • 天皇制、天皇について考えるきっかけになった。

    ~印象に残った言葉~
    <人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ><堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。>坂口安吾『堕落論』

    たとえば何かを決めるとき、自分にとって大切な人や、大切な友人たちとじっくり話し合って決めるのではなくて、こういう決まりになっているからとか、こういうことをするとみんなから白い目で見られるかもしれないからとか、そういうことを基準にして決めることがないだろうか?
    自分の生き方は自分で決める、ということに、こだわりたいと思うんだ。もちろん、自分ひとりでは決められない。でも、いっしょに考えてくれる人が一人でもいれば、それができる。すぐにできなくても、できるようになるための知恵が、一緒にしぼれるんだよね。

  • 現代企画室のこの「娘/子どもと話す」シリーズは、これまでもいろいろ読んでいる。この『天皇ってなに?』が出ているのに気づいて、図書館へリクエストして入るのを待っていた。その間に、チリのアルピジェラ展で、現代企画室の太田昌国さんの話を聞いたりもして、まだかな~と思っていたら、やっと届く。

    子どもたちと、どんな風に「天皇」について話すんやろと思っていたら、この本は「暦」を切り口に、おじいちゃんと子どもたち(孫)が、天皇を考えていくのだった。

    暦!

    いまの祝祭日のほとんどは、天皇がらみのものなのだった。明治維新から6年目、太政官布告によって定められた祝祭日はすべて天皇関係だったが、明治維新から3年目の太政官布告で定められた祝日は天長節をのぞき、すべて旧暦の節句だった。「明治維新後の日本の進路が、この3年の間に大きく変わったことを、物語っているといってもよい」(p.36)と、おじいちゃんは語っている。

    天皇カレンダーに変わった年は、太陰暦が太陽暦に変わった年でもあり、明治天皇の誕生日9/22が新暦で11/3にあたり、ここが天長節になった。そして、元号が天皇と結びつけられたのは明治維新よりあとで、天皇と元号が1対1でぴったり対応しているのは、まだ「大正」と「昭和」だけである。

    もう一つ、暦に関してびっくりしたのは戦争のカレンダーで、日本という国が「天皇に関係する祝日に重要な軍事行動を起こす」(p.48)ということは、敵国も知っているほど有名だったらしい。例えば、

    ・日本軍がバターン半島の総攻撃を開始したのは4月3日=神武天皇祭
    ・日本軍のミンダナオ島への上陸作戦を敢行したのは4月29日=天長節(昭和天皇の誕生日)
    ・日本軍が中国南部の海南島に敵前上陸したのは2月10日、敵の裏をかいて1日早めた=予定では2月11日=紀元節
    ・中国への本格的な軍事攻撃開始は11月5日=敵は明治節(11/3)に日本軍が来ると待ちかまえているだろうと2日遅らせた

    そして、「戦後」にも天皇カレンダーが関わっている。

    ・新憲法の公布は11月3日(明治節)→半年後に施行(=5/3=憲法記念日)
    ・東京裁判の起訴状発表は4月28日=翌日(4/29=天皇誕生日)の新聞に掲載
    ・起訴状が極東軍事裁判所に提出されたのは4月29日
    ・28人の戦犯のうち最後に拘束された松井石根の収監は3月5日=翌日(3/6=地久節=皇后誕生日)の新聞に掲載
    ・7人のA級戦犯の処刑は12月23日=皇太子(現天皇)の誕生日

    いまの「祝日」のなかで、明示的に"天皇"が見えるのは、12/23の天皇誕生日ぐらいで、昭和天皇の誕生日だった「昭和の日」のほか、少し詳しければ「建国記念日」や「文化の日」や「海の日」が天皇がらみだと分かるぐらいだろう。

    この「見えなさ」が、天皇制が日常生活のいたるところにある、ということなんやろうなと思う。

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著者プロフィール

1940年、大津市に生まれる。
1968年から2004年まで京都大学、
2004年から13年まで京都精華大学に在職。
専攻は、現代文明論、ドイツ文学、ファシズム文化研究。
 
著書
『戦争に負けないための二〇章』(髙谷光雄との共著、共和国、2016)、『ヴァイマル憲法とヒトラー──戦後民主主義からファシズムへ』(岩波書店、2015)、『石炭の文学史──[海外進出文学]論・第二部』(インパクト出版会、2012)、『虚構のナチズム──「第三帝国」と表現文化』(人文書院、2004)、『池田浩士コレクション』全10巻(刊行中、インパクト出版会)など多数。
 
訳書
エルンスト・ブロッホ『この時代の遺産』『ナチズム──地獄と神々の黄昏』(後者は共訳。いずれも水声社、2008)、『表現主義論争』(れんが書房新社、1988)、『初期ルカーチ著作集』全4巻(三一書房、1975‐76)など多数。

「2018年 『[増補新版]抵抗者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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