THIS IS JAPAN――英国保育士が見た日本

  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315337

感想・レビュー・書評

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  • 「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が素晴らしく良かったのとタイトルに惹かれました。でも「英国保育士が見た日本」というより「英国保育士は日本のあちこちを見た」という印象です。論旨は散漫でまとまっていない、取材メモみたいで、読んでいて疲れました。ただ、鋭い着眼点は健在です。例えば、ネットを含めて突然言葉が過激になるのは議論に慣れていないからか、とか、人権意識が根付かないのは「権利と義務」とセットで教えるからかといった指摘です。貧困が人権問題に直結するという指摘もその通りです。勉強になりました。

  • 労働、経済、保育、貧困、人権について
    正直こんなに深く考えたことがあったっけ・・・
    と思ってしまいます
    日本人の中に「人権」って
    無いんだなぁって 私自身もそうだと思いました

  • 英国在住のエッセイスト、ライターで、保育士でもある著者の、2015年の日本での取材記。日本の保育園、政治運動、貧困問題をイギリスとの比較を絡めながら、現場目線で記している。
    平易で分かりやすい文章なだけに、問題の深刻さが良く伝わってくる。現時点で取材時から既に5年経過しているが、本書で描き出された問題はどれ一つとして解決、あるいは良くなっている兆しが全く無いところにものすごく閉塞感を覚えた。果たして、今からでも保育園不足、政治の劣化、貧困等々の問題が良くなっていくのだろうか?はなはだ不安である。

  • 一読するにはいいかな。ただ時間が過ぎた時には必要なのかな。
    イギリス在住の保育士が2015年日本へ取材滞在し書き上げる。労働者階級に棲み分けているという作者から見た日本の労働者、階級、政治、貧困や人権。
    冷静な切り口は面白い。

    また保育の話は色々比較されていて気付かされることが多かった。病児保育はそもそも必要か?弱った時は大切な人がそばにいるべきと考える英国と、たらい回しにされる病児の日本…


    親の労働条件が改善されない限り子どもの状況も改善されない。

    過酷な労働条件に慣れてしまった親は子どもの環境劣化に気づかない…

    階級なんて存在しない、格差はあるが自分たちはみんな同質だと言い続けてきた国は息苦しい、奇跡のような場所で閉塞に穴が開いている。251

  • 僕はイエローで…が良かったのでこちらも購入。
    前回は子供の視点から英国の貧富の差、他民族、政治施策と生活の繋がりなど、とても面白かったので、今回は英国の保育と日本の保育の差を描いているのかな、と思ったら、保育については1章のみで、キャバクラの不払問題、ドヤ街の雰囲気、左翼について、貧困層が権利を主張できない文化、1億総中流が崩れていることに気がつかない状況と想像以上の思い内容でした。。。
    考えさせられることは多く、筆者も現状だけでなく意見を述べてくれているのだが、章同士で繋がりがあったりなかったり、全体を通して繋がるものがなかったので、読見終わって、あれ?読みながら色々考えさせられたけど、何だっけ?という状況に陥ってしまいました。
    左翼や政治についての知見が薄いせいかなぁー。

    特に考えさせられた点
    ・1億総中流の崩れ。中流階級が英国と日本で年収300万ほど差があること。
    →日本では階層の意識があまりない。真ん中を選びたがる国民性にもあるかもだが、中流階級の範囲が下にも上にも広いのだろう。これは人種が限られているせいだと思った。敢えて階層を分ける必要がなくどちらかと言えば中流だろうという感覚になると思う。階層を分ける必要はないが貧困層の自覚、認識をすることで社会を変えるための動きが必要

    ・キャバクラで稼げないなら女性の稼ぎ方って?

    ・日本では義務と権利が紐づいている。納税できなければ人権を主張できない。
    →これは全く気がつかなかった!宗教で人権がベースになっておりそれを信仰している海外では最低限の人権は皆主張する、かつ人権を幼少期から教えられる。そういうのもあって信仰者もふえるのかーというのと教育の大切さを感じた。とはいえ、国民性ではなく日本の文化が権利を主張できなくしているとの話もあり、これはどうしたら変われるのか。。

    ・過酷な労働条件に慣れきっている親は子供が悪い環境に置かれても気がつかない。昔の英国で子供を工場や炭鉱の危険な環境で働かせても気にしなかったように。
    →劣悪ではなくとも親の慣れきった環境を当たり前と思わず、子供にとっての最適な環境を改めて考える必要がある。前に習えなら頭を使わないが、常に頭を使おう

    ・inclusion and diversity 地獄。マクロな視点で考える筋力を鍛える必要がある。
    →学生時代から義務教育の一環でやってほしい


    ・海外では政治の話をパブでも話す
    →どうやったら政治が生活に紐づくのか。アメリカもそうだが、選挙の話も話すなという暗黙のルールもあるし。生活に紐づかせるべきだがこれも何故なのか。

    ・「上」と「下」や「右」と「左」の概念が平気で混沌と入り混じり、そのことにあまり違和感を覚えていない日本
    →日本人過ぎてこの感覚が全く分からなかったけど、具体的なこの感覚を知りたい!

  • 『This is Japan』。
    「これが日本だ!」というよりは、そっと近寄ってきて『これ、日本なんだよ」と指差される感じ。

    日本という国のイメージを国民ももう見誤ってるのではないかと昨今思い始めていたのだけれど、まさにそのことを社会の端端で起きている事柄を通して見せてくれた。

    日本が少子高齢化し、長いデフレでどんどん貧しくなり、疲弊し、イライラし、徐々に気力を失ってきている。

    相対的貧困で日本が世界6位というのは衝撃だったな…

    右とか左の偏りを感じさせないポジショニングは、とても気をつけたんだろうなと感じた。

  • 借りたもの。
    日本とイギリス、子供支援の“福祉”の現場から比較し、日英双方のメリット・デメリットを挙げる。
    この本を通して思うのは、「次世代を育てる重要性」だ。
    それがひいては政治・経済への関心――すなわち国を維持すること――に繋がっているのに、日本では蔑ろにされている現状への危機感だった。
    イギリス、世界の情勢を通して、常識的な中道政治が人気(というのも不思議な話に聞こえる…)を取れなくなり、世界が右か左か(保守 対 革新)の平行世界での分断から、上か下か(貧富)の分断になりつつあると明言する。
    日本でいうところの「失われた30年」、ジェネレーションY世代の政治への無関心さは、未来への理想を持てないこと、自身の問題と社会問題がリンクした実感が無いことにも起因すると説明。政治力の低迷にも起因する模様(ソ連・社会主義の崩壊と混乱、英・金融政策失敗の後遺症…日本はバブル崩壊か)。当時の若者が抱える問題が、政治的議題に上がらなかったことへの……
    話はイギリスと日本の保育園問題へのうつる。(2000年に入りジェネレーションYは子育て世代に)
    日英の保育園事情を比較している。
    低賃金で画一化して同じサービスを提供する故に融通がきかない日本(決められたこと以上は求められない。ある意味、社会主義的)と、オプションとしてお金を払った分だけ質の高いサービスを享受できるイギリス(ネオ・リベラリズム)。どちらが良いのか、という日本礼賛でも外国礼賛でも、disってもいない。
    一長一短で、悩ましい。
    ‘未来の世代のために借金を残すべきではないと言っても、その未来の世代が存在しなくなったら国は滅亡する。日本の反緊縮運動は保育園からはじめよう(p.139)’ という言葉は日本への処方箋の一つだった。
    安宅和人『シン・二ホン』( https://booklog.jp/item/1/4910063048 )然り。
    思えば、夏目祭子『知られざる最強の創造エネルギー』(
    https://booklog.jp/item/1/490502742X )で、80年代の加入への謳い文句に「来る少子高齢化の時代に向けて貯蓄をするか」という、お金を増やす発展性(未来への投資)ではなく貯める視点だった事を指摘していた。そうした考え方は巡り巡って、より少子化に拍車をかけていた気がする。

    この本は2016年出版。
    2020年の東京オリンピック後に不況に喘ぐ可能性を指摘していたが、2021年、コロナ禍で無観客開催となりインバウンド需要が見込めなくなった…何となく時間的には当たっているが、この変化の時代に日本は何を目指そうとしているのだろうか?

  • 英国に渡り保育士となった主婦が主には貧困問題に対して、日本滞在時代に行った取材を基に書かれたノンフィクション。ここ数年話題作を世に送り出しているため、興味をもちまずは、一冊読んでみた。
    貧困問題、格差社会、人権などの社会的課題について、支援の現場に入り込んで実体験して、飾らない言葉で自身の考えが紹介されている。
    労働者階級の目線で、各国の緊縮財政路線が悪の根源であるとばかりに再三批判しているものの、借金まみれの日本で財政健全化の視点を欠くとそのしわ寄せがどこに来るのか、未来の世代につけがまわるのは自明の理であると思うので、著者の主張の極端さは否めないと思った。
    ただ視点は面白くまた読みやすくもあり、一気読みで完読。著者の作品をもう何冊か読んでみよう。

  • 読み応えがあったし、とても勉強になった。

    日本には「人権」が無いんだと
    気づかせてくれた。
    いいあてている。
    日本に住む人々の意識は、
    「貧困やホームレス。
    そうなったのは自分のせい」みたいな。

    英国に住みながらも、
    よくあるセレブ目線の話題ではなく
    みか子さんの生活目線からみたお話で
    すっと心にはいってくる。

    終わりは、なぜか凄く泣けた。

  • 冒頭の水商売の女性の給料を店に求めに行く場面、印象深かった。水商売って、けっこういいお金になるからやるという漠然とした印象があるのだけれど、なんともしんどい場面だったな。そこに自尊心を下げられた人たちの共食いみたいな様相が現れる描写は凄惨ですらある。そんな風に言ってしまうとすごい怖い話みたいだけど、実際のところ、文章は明るくてすらすら読めた。リベラルとか左翼とか、ってそういっていいかすらわからないけれど、問題意識として、必要な視点だと思ったね。

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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