リフレクティング: 会話についての会話という方法

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  • ナカニシヤ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779510991

感想・レビュー・書評

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  • 以下引用

    病院と言う場で、一患者、あるいは一病例という医療者側から一方的に押し付けられた単一文脈にはめこまれていた個人が、地域においては、生活と言う豊かな文脈を生きる人間として、多様であり、かつ時間とともに可変的な存在として理解されるようになる

    リフレクティングとは、何事かをじっくりと聞き、考えをめぐらし、そして考えたことを相手に返すこと

    既存の文脈を踏まえたうえで、なされた、既存の文脈に決定的な変化をもたらすための絶妙な際

    何らかの問題を抱えたクライエントの家族システムを
    観察対象としてその外部から観察してきたありかたありかたから、双方向的なコミュニケーションの水準をひらき、協働の場に転換させた

    背景化しているコンテクスト(文脈)を前景化し、テクスト化していく身振りこそ広い意味でのリフレクティングの可能性の中心

    断定的な話し方は避け、私は、、、、感じました。僕には、、、聞こえた。ひょっとすると、、、、かもしれない。といった話し方を用いる。

    リフレクティングの会話の作用は、参加者を編み込んだコミュニケーションのながれ、とりわけ、参加者にとって固着し、揺るがし難いものとなっているような何らかの文脈をほぐし、可能な変化に向けてひらいていくことにその重点が置かれている

    適度な差異の生成。

    かたるとはなしによって、ゆるふ

    はりつめた状態をゆるめること、ゆるふこと。許すこと。

    ODではリフレクティングはさりげなく遂行される。

  • 3月頃、リフレクティングの研修会に出たとき読み始めた本をようやく読み終えた。なんというか、文系の本を読んだな、という感じ。内容としてはかなり通ずるものがあるのに、オープンダイアローグの本を読んだ時とまた少し違う読後感。

    それはおそらく著者が文学や社会文化学を専門としていることと無関係ではない。語源に関する議論などもあり、国語にばかり向かっていた学生時代を懐かしく思い出した。
    このような、一見してどう役に立つのか伝わりにくい事柄を、医療という実学は軽視しがちであると思う。しかしその実学が葉を茂らせている土の下には、それを支え裏付ける学問が隠れている。

    こうして社会文化学の方から、医療の方から、互いに歩み寄り重なり合える部分にリフレクティングというものはあるように感じる。自分と異なる背景をもつ人の存在に意識的になれる。その意識は実践にも反映させうるだろう。

    それにしても著者の実践の幅広さには感じ入った。オープンダイアローグは医療としてスタートしているが、リフレクティングは医療の専売特許では決してない。その図を俯瞰してみると、医療が対象とする範囲についても、この広さでよいのか、この関わり方でよいのか、これまでと違う視野を持ち始めていることに気付く。

  • ナラティヴ・アプローチの一つの流れである「リフレクティング」(「リフレクティング・チーム」とは最近は言わないらしい)の日本での事例も含む入門書。

    入門書レベルで表現はわかりやすい感じなんだけど、理論解説の部分とか、結構、深いな〜と思うし、著者が日本の文脈を重ね合わせて、解説しているところは、説得力がある。

    そして、日本での事例、とくに逐語的にどのような会話がなされるのかは、とても具体的なイメージがわく。

    精神をちゃんと理解せず、形式的にリフレクティングをやるのはよくないが、いろいろな分野で「使える」と思った。

    ナラティヴ・アプローチといっても、マイケル・ホワイトらのナラティヴ・セラピーとこのリフレクティングやオープンダイアログなどは質感がだいぶ違うと思っていたのだけど、その辺のところが明確になった。

    広い意味でのナラティヴ・アプローチと日本で呼ばれているものは、「ナラティヴ」というより、「社会構成主義的アプローチ」とでも言ったほうがいいのか?

    リフレクティング、コーポラティヴ、オープン・ダイアログは、親和性があって、相互に影響関係がある一方、ナラティヴ・セラピーは、それらとは共通点や類似性はありつつ、それらとは違うユニークさをもっていると思う。

    あと、家族療法、いわゆるシステム・アプローチからリフレクティングが生まれてきていて、社会構成主義的なアプローチの本を読むと、構造主義、システムアプローチへの批判が結構書いてある。しかしながら、実際のところ、その辺のアプローチを体験したことはなくて、その限界を実感として感じていない状態にある。

    たとえば、ファミリー・コンステレーションといったアプローチが、今、「新しい」ものとして、一部で注目されつつある状態があるわけで、それはそれとして機能しそうな気はしている。

    そういうシステム論と社会構成主義の関係を理解したと思った次第。

    知的探究の好奇心は止まらないな〜。

  • 技法ではなく思想。改変可能性を含んだ可塑性の高い思想。
    こういう本で成立までの経緯はあまり面白くないことが多いが、リフレクティングに関しては不可欠な情報だと思いました。この本はコンパクトにまとめられていて素晴らしい。読んでもそれだけではなんの役にも立たないことを痛感させてくれる点もいい。

  • オープンダイアログで注目されているリフレクティング。オープンダイアログだけでなく、スーパービジョンや事例検討会など話し合いの場に色々と応用できる。その基本精神は「はなすことときくことのうつし込み合いの方法」。創始者のアンデルセンの訳本では十分な理解が出来ずモヤモヤしていたところ、オープンダイアログのWSで一緒になった方から紹介された本。理解が進む良本。紹介していただいた方に感謝。家族療法や社会学の概念も基礎としているので、こちらの理解もあれば、より良いと思われる。最後にアンデルセンのリフレクティング・チームの3つのルール。1.その場の家族たちの会話内容に基づいて反応や解釈を行い、他の文脈からそれを持ち込まないこと(ヒア・アンド・ナウ?)、2.(家族が聞いている会話で家族について)否定的ないことを言わない、3.チームのメンバー同士で向き合って話すこと。3つのルールに通底しているのは、物事には多様な見方があり、様々な意見の交換からさらに新たな会話が展開していくことを望ましいとする考え方である。

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著者プロフィール

1968 年/宮崎県生まれ1991 年/九州大学文学部卒業2000 年/九州大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学現在/広島国際大学医療福祉学部教授共著書に『[新版]構築主義の社会学』(世界思想社,2006)『ナラティヴからコミュニケーションへ―リフレクティング・プロセスの実践』(弘文堂,2008)『ナラティヴ・アプローチ』(勁草書房,2009)『家族療法テキストブック』(金剛出版,2013)共訳書にJ. A. ホルスタイン& J. F. グブリアム『アクティヴ・インタビュー― 相互行為としての社会調査』(せりか書房,2004)T. マリネンほか『会話・協働・ナラティヴ―アンデルセン・アンダーソン・ホワイトのワークショップ』(金剛出版,2015)

「2016年 『リフレクティング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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