- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781605999
作品紹介・あらすじ
萩尾望都が祝福する世界に、私たちは生きている。 三〇年の時を経ていま甦る、ことばの芸術。 圧倒的な感性で紡がれた、著者唯一の小説集。 著者が20代のときに執筆、『奇想天外』に掲載されるや否や話題を呼んだSF小説を待望の書籍化。 人生賛歌ともいえる表題作に、豊かなる想像力に満ちあふれた傑作「ヘルマロッド殺し」。 そして、作者にとって永遠のテーマである「神への挑戦」と「自我の芽生え」を描いた中編「美しの神の伝え」など 12編を収録した、その後の名作マンガとも呼応する、萩尾望都の原点的作品集。 *「ヘルマ
感想・レビュー・書評
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思えば、この人の場合、見えるのは常に後ろ姿だったよう気がする。
ラブコメ全盛の少女漫画界にあって、その王道ラブコメも描けば、一方でSFやファンタジーや吸血鬼や心理系も描く。2歩も3歩も先を行くこの人の背中を追いかけついて行くのがやっとで、それが誇らしく楽しかったのだ、読者は。
1977年〜91年の、短篇小説が12本と、漫画が1本。
最初の短篇「ヘルマロッド殺し」と、最後の漫画「左ききのイザン」が呼応する。
「ヘルマロッド殺し」での設定は、1970年代のジョン・ヴァーリイ「へびつかい座ホットライン」やら2001年の平山夢明「テロルの創世」やら、SFとしての作品を経て、今や「わたしを探さないで」の純文学にも使われる設定となっている。「ヘルマロッド殺し」が書かれたのは1970年代終わりなので、その揺籃期に、既にその設定を先取り、共有していたということになる。
読みながら、やはり文字の向こうに存在する絵が見える。漫画が存在していることを感じる。
何の先入観も予備知識もなしにこの作品を読んだら、物足りないのだろうか?
物足りないというのとは違うように思う。文字でしか書いていない、という意味では小説なのだけれど、絵が見えてくる、という意味では、小説でも漫画でもない、その間にある別のジャンルのようにも思われる。
「CMをどうぞ」はちょっとシニカルなオチを用意しているところが星新一のようだし、「守人」はドタバタの感じが筒井康隆のようでもある。「闇夜に声がする」は少々オトメチックでまとまりもいい(タイトルもいい)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海外物のSF小説を読んでいるようだった。
絵のない萩尾望都も、やっぱり天才だった。 -
萩尾望都さんの短編集。巻末の1作を除き小説。初出を見ると古いものばかりだけど、小説も書かれるんですね。
表題作「音楽の在りて」が一番面白かった。よくまとまっていてじんわり感動。
一番長かった「美しの神の伝え」がわたしには今ひとつちゃんと理解できず、残念。
巻末の漫画「左ききのイザン」は巻頭の短編小説「ヘルマロッド殺し」の続編だったのね。漫画のほうだけどこかで読んだことがあったけど、両方読むと内容が深くなって感慨深い。
SFとまではいかない内容の短編も入っていたり、バラエティに富んだ一冊。 -
「音楽の在りて」萩尾望都著、イースト・プレス、2011.04.29
351p ¥1,785 C0093 (2021.07.10読了)(2011.05.22購入)
【目次】
Ⅰ
ヘルマロッド殺し
子供の時間
おもちゃ箱
クレバス
プロメテにて
Ⅱ
音楽の在りて
闇夜に声がする
マンガ原人
CMをどうぞ
憑かれた男
守人たち
Ⅲ
美しの神の伝え
special
左ききのイザン
☆関連図書(既読)
「春の小川」萩尾望都著、小学館、2011.03.15
「なのはな」萩尾望都著、小学館、2012.03.12
「愛の宝石」萩尾望都著、小学館、2012.12.12
「アウェイ(1)」萩尾望都著、小学館、2014.07.15
「アウェイ(2)」萩尾望都著、小学館、2015.09.15
「王妃マルゴ(1)」萩尾望都著、集英社、2013.01.30
「王妃マルゴ(2)」萩尾望都著、集英社、2013.12.30
「王妃マルゴ(3)」萩尾望都著、集英社、2015.01.28
「王妃マルゴ(4)」萩尾望都著、集英社、2016.01.30
「王妃マルゴ(5)」萩尾望都著、集英社、2017.01.30
「王妃マルゴ(6)」萩尾望都著、集英社、2018.02.28
「王妃マルゴ(7)」萩尾望都著、集英社、2019.02.28
「王妃マルゴ(8)」萩尾望都著、集英社、2020.02.29
「ポーの一族 春の夢」萩尾望都著、小学館、2017.07.15
「ポーの一族 ユニコーン」萩尾望都著、小学館、2019.07.15
「ポーの一族 秘密の花園(1)」萩尾望都著、小学館、2020.11.15
「一瞬と永遠と」萩尾望都著、幻戯書房、2011.06.14
「マンガのあなた SFのわたし」萩尾望都著、河出書房新社、2012.02.28
「コトバのあなた マンガのわたし」萩尾望都著、河出書房新社、2012.05.30
「物語るあなた 絵描くわたし」萩尾望都著、河出書房新社、2012.11.30
「愛するあなた*恋するわたし」萩尾望都著、河出書房新社、2014.05.30
「ピアリス」萩尾望都著、河出書房新社、2017.07.30
「私の少女マンガ講義」萩尾望都著、新潮社、2018.03.30
「芸術新潮2019年7月号 特集萩尾望都」
(「BOOK」データベースより)
著者が二〇代のときに執筆、『奇想天外』に掲載されるや否や話題を呼んだSF小説を待望の書籍化。人生賛歌ともいえる表題作に、豊かなる想像力に満ちあふれた傑作「ヘルマロッド殺し」。そして、作者にとって永遠のテーマである「神への挑戦」と「自我の芽生え」を描いた中編「美しの神の伝え」など、その後の名作マンガとも呼応する一二編を収録した、萩尾望都の原点的作品集。 -
萩尾先生の漫画は大好きで、たくさん読んでますが、小説は始めて。とても良かったです。
何度生まれ変わっても、その人だけを求め続ける。ヘルマロッド殺しは好きな話です。
何かの拍子にパラレルな世界にトリップしてしまったり、ESPであることに悩んだり、地球人とは明らかに違う宇宙人がでてきたり…。
上質なSFで、ほとんどが1970年代に書かれてるのも驚きでした。
もう一度、『半身』(単行本マンガ)を読むことにします…。 -
2011-5-14
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文字だけでも萩尾先生の絵が脳内に浮かぶ。凄い。
ヘルマロッド殺しから他短編、音楽の在りて、全てにおいて満足した本でした!それぞれの話が同じ世界の別の場所で起きた出来事かもしれないと想像してワクワクしました。話は終わっても登場人物達の物語はまだまだ続いているような、ワクワク?
萩尾先生の作品は私の読解力、想像力が乏しいせいか一回読んでも理解出来ない時がある(それでもストーリーや美しい絵、キャラ達の動きに否応なしに萩尾先生の世界に引き込まれるんですが)。しかし、数年後読み返してみると、あー!そういうことね!とストンと納得できる時が来るんです。読み返せば読み返すほどに新しい発見がある。
美しの神の話は、あー萩尾先生の世界だな、とか何となく雰囲気を掴めた程度なのですが、また数年後、何度か読み返した時に新しい発見がある作品なのかな。 -
正直、あまり期待していなかったので、おもしろくてビックリしました。(←すごく失礼ですが…)
前半は普通の古典的なSFだったので、単純に「久々のSFだ♪」という感じで読んでいました。小説にすると萩尾望都っぽさはなくなるけど、SFってやっぱりおもしろいな、と萩尾さんの作品だということをすっかり忘れて読んでいました。
でも、後半の「美しの神の伝え」は、すごく萩尾望都さんらしくて、マンガの世界と空気が同じで、またまたビックリ。
なんだ、小説でも萩尾望都さんの色は出てくるんだ!と前半で感じた感想がひっくり返ってしまって、ある意味感動しました。
きっと作者にとっては、小説にするのとマンガにするのとで、手法というか、物語の詰め方とかアプローチはずいぶん違うのではないかと思うのですが(あくまで推測ですが)、この「美しの神」に関しては、読み手の私は全く表現手法の違いを感じませんでした。
一番好きな作品は「子供の時間」です。古典的なSFという感じで、この作品じたいに萩尾さんカラ―は特に感じられませんでしたが、ぬいぐるみにぐっときました。