ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781617411

作品紹介・あらすじ

※アップ済

政府の監視も、グーグルのアルゴリズムも、企業によるターゲティングも、
さらには法律の手すらも及ばないインターネットの暗部=ダークウェブ。
「ネットの向こう側」の不道徳な領域を描き出す
ポスト・トゥルース時代のノンフィクション!!

知られざるインターネットの暗部――ダークウェブ。
その領域の住人たちは何よりも「自由」を追い求め、
不道徳な文化に耽溺しながら、「もう一つの別の世界」を夢想する。

本書ではアメリカ西海岸文化から生まれたインターネットの思想的背景を振り返りながら、
ダークウェブという舞台に現れたサイトや人物、そこで起きたドラマの数々を追う。
「自由」という理念が「オルタナ右翼」を筆頭とした反動的なイデオロギーと結びつき、
遂には「近代」という枠組みすら逸脱しようとするさまを描き出す。

【目次】
序章 もう一つの別の世界
分断されたインターネット
フィルターにコントロールされた「自由」…etc.

第1章 暗号通信というコンセプト
ダークウェブとは何か
「数学」という美しく純粋なシステムによる支配…etc.

第2章 ブラックマーケットの光と闇
「闇のAmazon」
思慮深きマーケットの支配者…etc.

第3章 回遊する都市伝説
殺人請負サイトQ&A
人身売買オークション
スナッフ・ライブストリーミング…etc.

第4章 ペドファイルたちのコミュニティ
児童ポルノの爆発的な拡散
フィリピンのサイバー・セックス・ツーリズム
おとり捜査…etc.

補論1 思想をもたない日本のインターネット
アングラ・サブカルとしての消費
アメリカのインターネットが反体制的な理由…etc.

第5章 新反動主義の台頭
哲学者、ニック・ランド
暗黒啓蒙(ダーク・エンライトメント)
恋愛ヒエラルキーの形成と闘争領域の拡大…etc.

第6章 近代国家を超越する
ブロックチェーン上のコミュニティ
バーチャル国家が乱立する未来…etc.

補論2 現実を侵食するフィクション
冥界としてのサイバースペース
現実認識を変容させる…etc.

感想・レビュー・書評

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  • 装丁、レイアウト、章タイトルなど、本としてのルックスが大変カッコいい本である。「本棚に並べておきたい」という気持ちになる。

    内容は、ダークウェブ(ネットの中にあるものの、アクセスするには特定のソフトウェア、設定、認証が必要な、特殊な〝闇の領域〟のこと)の世界の総花的紹介がメイン。

    違法薬物などが取り引きされる「闇のAmazon」、児童ポルノ愛好者たちが集うおぞましいフォーラム、殺人請負サイト(本書によれば、料金を詐取する詐欺サイトばかりらしい)など……。
    昔の『噂の眞相』風に言えば「ヒューマンインタレストあふれる」世界が展開され、なかなか面白い。

    だが後半、ダークウェブ上に出現した有名サイト主宰者たちの「思想的背景」を論ずるパートになると、途端につまらなくなる。
    前半の下世話なノリで最後まで突っ走ればよかったのに、「新反動主義」だとか「暗黒啓蒙」だとか、わかったようなわからないような衒学的論議がダラダラつづいてウンザリ。

    そもそも、著者の文章が青臭くて生硬だ。
    小難しい言葉をちりばめて虚仮威しをきかそうとしているものの、日本語として不自然な箇所が散見される。

    不自然な表現の一例を挙げる。

    《最後に、このような奇特な書物を企画した編集の方便凌氏に感謝を捧げたい(「あとがき」)》

    「奇特」は、「言行や心がけなどが優れていて、褒めるに値するさま」を表す言葉。普通、自著を「奇特な書物」とは言わない(それでは自画自賛になってしまう)。

    たぶん、「奇妙な」という意味で使っているのだと思う。ならば素直に「奇妙な」と書けばよいものを、「もっと難しい、カッコいい言葉が使いたい」と思ってこうなってしまったのだろう。
    本書は全編にわたって、そのような著者の「背伸び」が感じられた。

  • 2019年1月イースト・プレス刊。わざとタイトルを読み辛くした装丁にしてあり、書かれているウェブ世界を示唆する演出が秀逸。内容は、インターネットものだけあって、既に古い情報で、しかもこれは現在のダークウェブではないのですが、それでも、雰囲気は伝わってきます。

  • 印象にのこるのは、アメリカの革命権に根ざしたフェアネスがダークウェブを動かしていたことに比べ、単なるトラッシュを放り込むアンダーグラウンドとして享受された国内の在り方という比較。

    しかしながら大義名分は失われ、状況親和的に妄想が強度を増すところに合流する体たらくに、面白味はない。

  • ルポルタージュ風だが、壮大なフィクション(誇大妄想)にも読めてしまう。

  • 20200818読了
    読みやすい文章で、主に米国のインターネットにまつろうアンダーグラウンドの事件について紹介されていて、普段触れることのない情報なので興味深く読むことができた。アメリカって、近くて遠いんだなーって感覚は、町山智弘の本を読んだのと同じような読後感。ただ、町山智弘の方がまとまりがあって面白いけど

  • インターネットの世界には真偽が定かでなない
    都市伝説に満ち溢れています。

    グーグルで検索できるのは全体の4%程度であ
    り、残りの96%はいわゆる闇サイトであって
    そこに足を踏み込むと、あっと言うまに住所
    などを特定されてしまうとか。

    闇サイトを除いているとネットの向こう側から、
    「ほう、君は日本の首都であるトーキョーの
    世田谷〇〇という場所から訪問しているのだね」
    なんて語りかけてくるというホラー映画のよう
    な話もあるほどです。

    もはや宇宙空間にも匹敵するネット空間の内部
    を掘り下げた一冊です。

  • ‪マリアナウェブ、あったら面白いのになとロマンばりに思っていたがマジでないっぽいのが悲しいな‬

  • ダークウェブは、ただのアングラなネットワークではなく、ある通奏低音として響く思想のもとに構築された世界であることを知った。

    日本では、その思想部分の抜け落ちが多く、方法のみの享受が多いもんだとも感じた。

  • ダークウェブの技術的な内容に特化せず、ダークウェブを包括的に解説した本。サーフェスウェブ・ディープウェブと比較したダークウェブの特徴から、匿名性を可能とする技術の概論、そこで展開される違法ビジネスや住人・ダークウェブ発の哲学的思想まで幅広く解説されています。
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    https://flying-bookjunkie.blogspot.com/2020/04/blog-post_5.html
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  • 自分のダークェブについてのイメージが、まさにアクセスした途端に個人情報などを抜かれて云々だったので、作中でズバリと言い当てられたのには笑ってしまいました。

    ダークウェブの本だから、ペドフィリアとか麻薬とか殺人請負とかそういうサイトの話も出てきてそれもとても興味深かったのですが、前半のダークウェブができた歴史とか背景の話が面白かったです。
    匿名性というのは悪いことをする隠れ蓑ではなく、国や政府の監視からの自由、権利を守るための武器であるという考え方に目からウロコというか、あぁそういうことなのかと思いました。(そう思った自分も案外監視慣れしていたというか平和ボケしているというかw)
    疚しいことがないのならそんなのいる?みたいな意見をたまに見かけるけどそういう問題じゃないんだ。自分は、どんな情報だろうと知る権利がある。発言する権利がある。そういう発想なんだ。ということを知ること、気づくことができたのがよかったです。

    そして中盤の日本のインターネットには思想がないって話もなるほどなぁと思いました。海外のダークェブと日本のダークウェブの違いは何なのか。アングラだけが先行して思想が根付かない無法地帯の日本のインターネットには反体制的な部分がほぼない。だからこそ、私も上記のような自由のための匿名性なんて考えもしなかった。

    そして、後半の新反動主義について。正直これ難しすぎる。なんかうまく飲み込めないというか2回ほど繰り返し読んだけど、うまく理解できなかったです。
    昨今のトランプ支持者とダークウェブとその思想についての話なんだけど、新反動主義の説明がよくわからない。いやとても丁寧に解説してくれてるんだけど、新反動主義の考え方が理解できないんだと思う。
    何となくですが、この本後半の方が言いたいことなのかなという気がするのですが、クトゥルフの狂信者みたいで。。
    ただ、新反動主義やネット界のトランプ支持者たちの自由(またはユートピア?)が、私には良いものには思えなくて。前半の公開鍵の話で感じた自由と後半の新反動主義の話で感じた自由が同じものだとは思いたくない。
    (あとウィキリークスとかについて少し懐疑的になった)

    ネット知識と哲学知識がないとなかなか難し本(文章もやや読みにくい)ですが(あと英語もわからんので私はそれもきつかった)、とても読み応えのある本でした。

    (あと、インセルの話のときに出てくるアルファ男とベータ男っていうのはオメガバースのアファとかベータにも関係ありそう??とか思った)

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著者プロフィール

木澤佐登志 SATOSHI KIZAWA
1988年生まれ。文筆家。思想、ポップカルチャー、アングラカルチャーの諸相を領域横断的に分析、執筆する。
著書に『ダークウェブ・アンダーグラウンド――社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』(イースト・プレス)、『ニック・ランドと新反動主義――現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(星海社新書)、共著に『闇の自己啓発』(早川書房)、『異常論文』(ハヤカワ文庫)がある。『SFマガジン』にて「さようなら、世界――〈外部〉への遁走論」を連載する。

「2022年 『失われた未来を求めて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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