生きながら十代に葬られ

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781618333

作品紹介・あらすじ

世界中の誰もかれもが私のことを嫌っているみたいだ。

クラスメイトからのいじめ、親との衝突、諦めた夢。
満たされないまま大人になった「かつての十代」へ。
『この地獄を生きるのだ』著者が綴る仄暗い青春の記憶。

「学校はなんてつまらない場所なのだろう」。
田舎の閉塞的な学校でいじめられている「私」に差した小さな光、それは絵を描くことだった。
しかし、世界は「私」を受け入れてくれなかった。
やりたいことがあるのに、できない。なりたいものがあるのに、なれない。
未来を絶たれて絶望した「私」はやがて学校という社会の外へと飛び出していくが――。

十代は遥か遠くにあるのに、今起きていることのように胸が痛い。
そのたびに、私の十代はまだ終わっていないのだと自覚する。
私の心と体は生きながら十代に埋葬されている。
目を閉じれば私をあざ笑う同級生の姿が目に浮かぶ。
全く幸せじゃない時代、あの時代に私は復讐がしたい。
あの時代を乗り越えないと私はどうやっても大人になれない。(「はじめに」より)

《第一部》
一人ぼっちの世界
学校という社会
崩壊
解離
ジャニスの歌
高校入学
死にたい気持ち
「ちゃんと役に立ってるかな」
なりたいものがあるのに
学校の外で
卒業

《第二部》
人との出会い
クライ・ベイビー
十代の私に百合の花を

感想・レビュー・書評

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  • 「死にたくなった人」の処方箋を探して。

    前著『この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで。』に感銘を受け、購入しました。

    前著が"大人時代の苦しみ"をテーマにしていたとすれば、本書は"子供時代の苦しみ"を描いた作品です。

    著者が子供時代に受けた悪魔のような所業を読み、人を社会的弱者に追いやるメカニズムを垣間見た気がしました。

    そんな中、著者を救ったのは、"苦しみ"を歌うアーティストであり、いのちの電話であり、友達とのつながりだったように思えます。

    人とのつながりが大切だというのは、テレビ番組でも本でもよく聞きますが、そうは言っても、追い込まれている人ほど、人とつながれないのも事実です。

    やっとのところで、踏みとどまるにはどうすればよいのか、さらには、趣味との向き合い方に至るまで教わることが多々ありました。

    そして、本書に書かれていた様々が、追い詰められた人を救うには必要なものだと確信するに至りました。

    最後に、人生の重い枷を外された小林エリコさんに勇気をいただきました。

  • Twitterの酔っぱらったようなメンヘラ自分語りを延々と読まされた気分。私には合わなかった。

  • 小林エリコの3冊目のエッセイ集。

    今回はタイトルのとおり、10代のころの思い出が中心になっている。

    (おそらくは発達障害がおもな要因となって)イジメに遭い、学校で孤立し、家庭も崩壊状態で、やがて精神を病み……という、どこにも居場所がない暗闇のような10代の日々が、哀切なタッチで綴られる。

    しかし、その哀切さの中にどこか飄々としたユーモアもあり、「読み物」としてとても面白い。

    「メンヘラもの」のエッセイやコミックエッセイはいまや巷にあふれているし、著者同様のつらい10代を過ごした人も山のようにいるだろう。
    が、そのつらい日々をただ垂れ流すように列挙してエッセイやマンガにしたところで、読者は「さぞおつらかったでしょうね」と思うのみで、面白くもなんともない。

    それに対して、小林エリコのエッセイには自己を対象化する醒めた客観性があるし、自身の体験を「読ませるエッセイ」に仕上げる文才がある。
    私は彼女の著書を読むのはこれで3冊目だが、3冊とも「巻を措く能わず」で一気読みさせるパワーがある。

    印象的なタイトルは、ジャニス・ジョプリンの遺作『パール』所収曲「生きながらブルースに葬られ(Buried Alive In The Blues)」のもじりである。

    が、たんなる「もじり」にはとどまらない。
    というのも、10代のころの著者はジャニスの孤独な生涯と、孤独を放電するような歌声に惹かれ、深く心酔(著者は「信仰」と表現)していたからだ。
    ジャニスの歌はたんなるBGMではなく、著者の10代を象徴するテーマソングのようなものだったのである。

    そして、終盤の短い「第2部」では、20代以降、彼女のことを受け入れてくれる友人や恋人にも出会い、10代のころには想像もしなかった幸せを感じた日々について綴られる。

    つまり、『生きながら十代に葬られ』という一見ネガティブなタイトルには、自らの10代をきちんと〝葬り〟、新たな人生に向き合おうとするポジティブな決意も込められているのだ。
    ジャニスの「生きながらブルースに葬られ」が、タイトルとは裏腹に明るいアップテンポの曲調(ヴォーカル録りの前夜にジャニスが急逝したため、この曲はインストゥルメンタル)であるのと同じように……。

    そういえば、メンヘラ・マンガの最高峰(だと私は思う)『アスペル・カノジョ』にも、主人公がカラオケでジャニスの「クライ・ベイビー」を熱唱するシーンがある。
    小林エリコは『アスペル・カノジョ』を読んだだろうか?

    茨城県の片田舎で過ごした10代のころには話の合う人が周囲に一人もいなかった著者が、上京して初めて話の合う友人に出会う……というくだりなど、大いに共感した。
    私も栃木県の片田舎で10代を過ごし、同じような孤独を感じ、同じように東京で初めて話の合う人を見つけたから。

    いま10代でイジメに遭ったり、深い孤独を感じていたりする人には、心の奥まで突き刺さる本だと思う。
    そして、最後まで読めば心に一筋の光が射し込む本でもあるだろう。

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著者プロフィール

1977年茨城県生まれ。短大卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺を図り退職、のちに精神障害者手帳を取得。デビュー作『この地獄を生きるのだ』(2017年、イースト・プレス)が話題を呼ぶ。『家族、捨ててもいいですか?』(2020年、大和書房)、『私がフェミニズムを知らなかった頃』(2021年、晶文社) など著書多数。

「2022年 『マイノリティだと思っていたらマジョリティだった件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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