ネット右派の歴史社会学 アンダーグラウンド平成史1990-2000年代
- 青弓社 (2019年8月14日発売)
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感想 : 15件
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Amazon.co.jp ・本 (514ページ) / ISBN・EAN: 9784787234582
作品紹介・あらすじ
保守的・愛国的な信条を背景に、その言動でしばしば他者を排撃するネット右派。彼らはどのように生まれ、いかに日本社会を侵食していったのか。政治・文化・社会問題・運動など、日本社会に全面展開するネット右派の現代史を圧巻の情報量で描き出す。
感想・レビュー・書評
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非常に示唆的。
いわゆる「ネトウヨ」的な言説に対する長年の疑問のいくつかに解答を得ました。
例えば、主張思想的には、完全に「保守」の産経グループのフジテレビがなぜネトウヨの敵になっていたのか?とか。
最終章で、「ネトウヨ」は停滞していったと過去の事象のように捉えられているが、変質してより、社会全体に蔓延しているといったほうが良い状況。
ぜひ、2010年代~現在を再度考察した論考を。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
NPOを始めとする社会課題解決の取り組みに関わる仕事をしていると「多様性への寛容」というのは核となる考え方であり、なぜそれが反発を受けるのか、なぜヘイトスピーチにまで至るものが受容されうるのか、社会課題の放置が容認されるのか、理解が難しく感じることがしばしばある。またそもそもNPOや関連するセクターに従事すること自体に対して戸惑うほどの不信感がぶつけられることがあるが、そうた感情はどこからくるのだろうと感じたことのある人は少なくないのではないか。
理解困難なままに、言説空間も感覚も断絶したままでひたすらに多様性やあるいはそれを前提とした各社会課題解決やその啓発を訴えても何も変わらないだろうということで、経緯や背景や論理や感覚を理解・想像したいということで手にとったのがこの本。
読んで良かった。500ページにも渡る本だし、拾い読みしては意味が薄くなってしまう本なのでなかなか読者の数を増やすのは難しそうにも感じるが、リベラルであることを自認する多くのNPOセクター関係者は読むべきであろうと思う。自分たちの言説がいかなる社会と対峙しているのか、その上で戦略を立てていかなければ、日本の行き着く先も欧米みたいな左右ともに極端なポピュリズムということにしかならないだろうから。
中身についても触れていきたいところだけど、この本の感想を短くまとめることはなかなか難しい。だからこそ500ページもの記述が必要だった訳で。よくこれだけまとめて書き上げたものだなと著者を尊敬する。ところどころ推測がすぎるというかやや強引な論旨も見受けられるけど、それでも平成の約20年間を中心とした右派的な様々な文脈の経緯や変遷についてまとめあげた構想力・構成力は素晴らしい。
ネット右派(いわゆる「ネトウヨ」も含め広く定義した言葉)には、独自の文脈を持ったさまざまなクラスタやアジェンダが含まれており、統合・分離を繰り返す中で現在のような大きな動きになってきたということは、当たり前といえば当たり前だけど、これまであまりはっきりとは意識しておらず、どこかざっくりと「ネット右派(ネトウヨ)という理解困難な人たちがいる」とくくってしまっていたような気がする。そして大事なことは、多くのNPOが激動する社会経済環境の中で翻弄される弱者への寄り添いや配慮というところから動いているように、ネット右派側の様々なクラスタの動きも当然ながら社会経済的文脈の中で変遷を重ねて今に至っているということ。そうした同じ人間的な次元からの理解や対話は、互いに前提の理解や想像さえ及べば、困難ではあっても不可能ではないと思える。
・ネット右派のさまざまなクラスタ
保守系セクター:サブカル保守クラスタ、バックラッシュ保守クラスタ、ビジネス保守クラスタ
右翼系セクター:既成右翼系クラスタ、新右翼系クラスタ、ネオナチ極右系クラスタ
・ネット右派に扱われるさまざまなアジェンダ
嫌韓アジェンダ、反リベラル市民アジェンダ、歴史修正主義アジェンダ、排外主義アジェンダ、反マスメディアアジェンダ
→さまざまなクラスタがあり、文脈や人脈を共有しているものもあればしていないもののある。また、アジェンダについてもそれぞれの経緯や論理がありそれら一つ一つは必ずしも飛躍しすぎた理解不能なものはあまりない。また、アジェンダごとに関心のある層も異なっている。問題は、これらの複数のクラスタやアジェンダ(とそれらの担い手自身も)が平成の20年間の中でそれぞれ社会経済的な影響を受け変遷するなかで悪魔的な合体の果てにモンスター化していることが問題。
・例えば、嫌韓アジェンダの背景の一つとして冷戦体制の終結がある。それまでは東西冷戦の枠組みのなかで、貿易摩擦問題を筆頭にとりわけ日米間の問題に、そして経済問題に焦点化されるきらいがあった日本の外交問題の主要なアジェンダに、国際情勢の流動化に伴ってさまざまな国との間のさまざまな政治問題が入り込んでくるようになる。そうしたなか、とりわけ従軍慰安婦問題などをきっかけに、アメリカに変わる新たな「反日国家」として立ち現れてきたのが韓国だった。 -
実に豊穣な本であった。ネット右派についてはそれを糾弾する本ばかりが多いが、それだけに、このようなある程度はネット右派を弁護する立場の本が欲しかった。
この本では1989年頃から2010年前後までのネット右翼各派(右翼系の既成右翼・新右翼・ネオナチ右翼、保守系のサブカル保守・バックラッシュ保守・ビジネス保守)それぞれがどのような課題(アジェンダ。嫌韓・反リベラル・歴史修正主義・排外主義・反マスメディア)を提示して活動し、糾合されていったのかを解き明かしている。非常に内容が豊富であり、まとめるのは難しい。ただ、それらに対する反対陣営のまとまりの悪さを感じた、ということは言える。
……………ぜんぜんまとまらない文章になったので、気が向けば書き直すことにしたい。 -
朝日新聞20191012掲載 評者: 宇野重規(東京大学教授・政治思想史)
読売新聞20191027掲載 評者: 森健(専修大学非常勤講師、ジャーナリスト)
東京新聞20211016掲載 評者: 栗原裕一郎(評論家)
BRUTUS202111合本掲載 評者:田野大輔(社会学、歴史学) -
いわゆる「ネトウヨ」の興亡史。いかに発生し勢力を増し、頂点に達した後停滞したかが歴史物語を読むように語られる。政治的に中立であった初期の2ちゃんねる、善悪二元論を排したアニメを享受していたはずのサブカル層が、嫌韓になだれ込んでいく姿はワイマール共和国がナチスに飲み込まれていくようで、あまりに面白くて逆に疑わしさも感じてしまう。
嫌韓本を販売していた出版社が、青林堂、宝島社と、かつては優良なサブカル本を出していたところなのに、と疑問を持っていたが、本書を読んでサブカルを支えた層の変質に沿っていたのかな、となんとなく納得できるようになった。 -
著者は成蹊大学文学部教授だが、1997-2009までソフトバンクのメディアコンテンツ部門に在籍していたとのこと。
特に2ちゃんねる以前のアングラネットについては初めて知るところが多かった。 -
本来であればその背景を探るのが社会学の仕事なのだが、伊藤にとっては「ネトウヨ」こそが問題であり、行き過ぎた差別発言をあげつらうことで、保守層から安倍首相を支持する人々までをこき下ろすところに目的があるのだろう。
https://sessendo.blogspot.com/2020/01/1990-2000.html -
「ネトウヨ」って言ってしまうとしょうもないねんけど、蚊だってボウフラだって研究すれば有益なこともあるわけで。いやはや、しょうもない言うてたらそれなりに力は持ってはるし、出自から成長過程から懇切丁寧に説明してくれてるので、恐いもの、汚らわしいモノ見たさでも一読の価値あり。
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東2法経図・6F開架:361.65A/I89n//K
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