郊外の記憶 文学とともに東京の縁を歩く

著者 :
  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787234957

作品紹介・あらすじ

戦後の郊外住宅地の開発は、そこにあった地域生活を大きく変容させ、平板で奥行きがない空間を作り出してきた。一方で、近年では郊外や街の何げない場所に過去の痕跡を探り、その土地の固有性に光を当てる「街歩き」や「聖地巡礼」が注目されてもいる。では、郊外という均質な空間に眠る固有性は、どうすれば掘り起こすことができるのだろうか。

多和田葉子や三浦しをん、北村薫が東京の郊外を舞台に描く小説を読み、その街を実際に訪れ、ありふれた風景のなかを1人でゆっくり歩く。そしてあらためて小説を読み、また街を歩く――。この実践を繰り返すことで、場所・時間・物語の交差点に浮かび上がる「土地の記憶」に光を当てる。

東京の縁を読むことと歩くことを通して、郊外に眠る戦争の残痕や失われた伝統、開発の記憶、人々の生活史をよみがえらせ、「均質な郊外」に別のリアリティーや可能性を浮上させる。

目次
まえがき
序章 土地の記憶と物語の力――「郊外」の文学社会学のために
第1章 記憶の説話的媒介――多和田葉子『犬婿入り』と三浦しをん『むかしのはなし』を読む
第2章 越境の場所――『犬婿入り』の「町」を歩く
第3章 「町田」と「まほろ」のあいだ――三浦しをん「まほろ駅前」シリーズの「町」を歩く
第4章 郊外のアースダイバー――長野まゆみ『野川』の自然史的時空間の発見
第5章 記憶の伝い――古井由吉『野川』、あるいは死者たちの来たる道
第6章 この平坦な町で大人になっていくということ――北村薫「円紫さんと私」シリーズの「町」と「道」
終章 記憶の場所としての郊外

感想・レビュー・書評

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  • 2021年度第2回見計らい選定図書
    http://133.11.199.94/opac/opac_link/bibid/2003578180

  • ここに出てくる作品を読んだ上で、本書を読まないと意味がない。はずかしながら全部読んでいないので、それらを読了後に読みたい。

  • 歴史から、地形図から、昔の地図から…そういった視線での「町歩き」。アニメや漫画、小説等の「聖地巡礼」もそれに含まれる訳だが、副題の通り文学作品を元に、作品内部の登場する人物の心境、作品自体の解説を行いながら、作品に登場する場所を当てはめていき、その土地の近代からはたまた氷河期までの記憶、著者自身の記憶を巡るのが主な内容である。
    ブラタモリよろしく、川を見ると崖を探したり州を探したりしてテンションを上げる私だが、自然的ではなく、文化としての境界や記憶を垣間見る戦後の波に飲まれなかった土地を見るのも面白いなと、特に国立の部分では強く思った。

    田舎者的には東京近郊というだけで郊外…?と思うこともあるかもしれないが、人が今集まる土地と近郊だからこその郊外的な役割があって、記憶の多さと埋もれやすさが地方よりも強いのではないかなと。故に面白さがあるのではと。思いました。

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著者プロフィール

鈴木 智之 1962年生まれ。法政大学社会学部教授。著書に、『村上春樹と物語の条件――――『ノルウェイの森』から『ねじまき鳥クロニクル』へ』(青弓社、2009年)、『眼の奥に突き立てられた言葉の銛――目取真俊の〈文学〉と沖縄戦の記憶』(晶文社、2013年)、『死者の土地における文学――大城貞俊と沖縄の記憶』(めるくまーる、2016年)、『郊外の記憶――文学とともに東京の縁を歩く』(青弓社、2021年)、『ケアとサポートの社会学』(共編著、法政大学出版局、2007年)、『ケアのリアリティ――境界を問いなおす』(共編著、法政大学出版局、2012年)、『不確かさの軌跡――――先天性心疾患とともに生きる人々の生活史と社会生活』(共著、ゆみる出版、2022年)など。訳書に、A・W・フランク『傷ついた物語の語り手――身体・病い・倫理』(ゆみる出版、2002年)、B・ライール『複数的人間――行為のさまざまな原動力』(法政大学出版局、2013年)、M・アルヴァックス『記憶の社会的枠組み』(青弓社、2018年)、C・マラブー『偶発事の存在論――破壊的可塑性についての試論』(法政大学出版局、2020年)などがある。

「2023年 『断絶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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