ライトノベル・スタディーズ

制作 : 一柳 廣孝  久米 依子 
  • 青弓社
3.29
  • (1)
  • (2)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 72
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787292162

作品紹介・あらすじ

アニメ・漫画・映画・文学にも大きな影響を与え続けるライトノベル。ラノベの過去から現在までを押さえたうえで、ジャンルを越境するラノベの可能性やより深い作品読解を大胆に提示する。海外ラノベ事情を紹介するコラムや年表も所収するラノベ研究入門書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2022/2/12読了。
    短期集中独学講座「ライトノベル概論」の九冊目として読んだ。
    この個人的な短期集中独学講座は、「僕がライトノベルを読むときに高確率で感じる、あのフィジカルな反応を伴う生理的な不快感、傍ら痛さの正体は何か」を探るために始めたもので、前回八冊目の時点で「僕の不快感の出所はライトノベルに固有のものではなく、文体論として小説全般に存在しうるものであり、たまたまそれが表面化しやすい小説のあり方が、ライトノベルと呼ばれるカテゴリに集中している」との仮説に至っている。
    本書に収録されたレポートのうち、この仮説に立つ位置から興味深く読めたのは以下の三編だった。
    大島丈志「再創造されるライトノベル」
    犬亦保明「ライトノベルが『子どもの読み物』になるとき」
    太田睦/山口直彦/山川知玄「ライトノベル作品群の統計解析」
    いずれも、作品の文章表現や装丁造本といった表層レベルにあらわれるものに着目し、ライトノベルと非ライトノベルの差異を(差異があるのかないのかも含めて)明らかにしようとするものだった。差異が認められた部分も、一般に流布するイメージに反して差異が認められなかった部分も、ともに僕が仮説をこねくり回して考え事をするための良い材料になりそうだと思った。
    上記の三編以外にも参考になりそうな論旨を持つものはいくつもあった。ただし第三部「ライトノベルを読む」の中にはひとつもなかった。個々の作品論の中にはひとつもなかったという事実が、たぶん僕が参考にすべきことなんだろう。
    ――もとい、追記。ひとつもなかったというのは言い過ぎだった。下記のようなフレーズは参考になる。
    大道晴香氏の「テクストへと取り込まれるに際し、それぞれの〈知識〉が従来帰属していた文脈から切り離され、『断片化』された状態になっているという事実である」の一文などは、それこそこの作品論の文脈から切り離せば、僕の仮説の文脈の中で使うこともできそうだ。樋渡隆浩氏の「硬質な漢語群も合わせ、『ハルヒ』全体にこのような衒学的な言葉はありふれている」も使い出がありそうだ。
    以上おおいに参考にはなったが、答えはまだ得られていない。ということは、本書に含まれていない、本書の論者たちが見落としている(あるいは不問に付している、無視している、ないことにしている、論じるまでもない自明なことと認識している)論点があって、答えはそこに潜んでいるのかもしれない。

  • 授業で指定された教科書なので購入。しかし挙げられているラノベは基本的に私の読まないものでちょっとよくわからない…笑 授業聞いてみてもう一回読むかもしれない。でも橋本紡さんのラノベ版と一般のの比較は面白い。

  • 読み物としてはおもしろかったけど研究書としてはいまいちかもしれない

    個々の原稿にむらがあるのも楽しめないこともないが、これでいいのかと思えるようなものもあった

  • そんなに多くライトノベルを読んでるわけではないのだけれども、オタク文化の批評本はなぜか興味がある自分。というわけで読んでみた。
    ライトノベルの物語における特徴ははるか江戸時代の歌舞伎などにも共通することらしい。何人もの声の寄り集まる場における創作という点で共通しているらしいのだけれども、正直よく分からなかった。源氏物語のほうがライトノベルっぽいような気もするけれども。
    後、児童文庫についても少し書かれていたのが興味深かった。ライトノベルと児童文庫の違いについて書かれていたのだけれども、結論としてはほとんど違いはなさそう。もちろん、性的な表現が少なくなったり、あとがきがなくなったりしているようなものはあるようなのだけれども、本書を読んでいると、むしろ一般文芸とライトノベルのほうが違いが多そうな印象をもった。
    ところで、ライトノベルには書かれてる文章とイラストにちょっとした食い違いがあることはあるようなのだけれども、よりキャラクターの魅力をましたり、残虐な描写を中和するためにあえてそうなっているらしい。ようは、読者に配慮したということなのだと思う。そういえば、なれる!SE10でも本文では立華は、長い髪をアップにまとめて申しわけ程度にバスタオルを巻いていると書いてあったけど、カラーイラストのほうは髪をおろして真っ裸の立華が描かれてたなぁ。いやでも、個人的にはできるだけ本文に忠実なイラストのほうが見たいのだけれども・・・。
    ところで、こういうオタク文化系の批評本を見ていると名前をよく見る『僕は友達が少ない』という話。『はがない』という略称は聞いたことあったのだけれども、なんと海外版ではそのまま『HAGANAI』として流通しているっぽい(それにしても、なぜ略称に助詞? 自分なら、『ともすく』とかにしそう。と思って調べてみたらもともと作者が後書きでそう略したことが始まりのよう。後、タイトルの平仮名部分のみを読むと『はがない』になるんだとか。なるほど)。
    また、ライトノベルといえば『涼宮ハルヒシリーズ』という人も多いようで、この本にもあちこちでハルヒの名前がでてきた。自分も初めて読んだライトノベルは涼宮ハルヒシリーズだったけど、すごい作品だったんだなぁ。ところで、ハルヒの続編はまだでないのだろうか・・・(アニメは諦めてる)。

    本書の最後に著者略歴として、19人の著者・編著者の紹介が書いてあったのだけれども、そのうちの1つに『自分の人生(or 近状)をラノベ風に言うと?』という項目があり、これが案外面白かった。

  • ライトノベルに関するレポート集。海外紹介の変遷とか一般文芸への進出とか各論は面白い。総論は、いろいろ語ってはいるけれど定義が不明瞭で例外が多すぎ、そもそもアンケートの段階で一般文芸とラノベの区別がつけられないという状態で強引に語りきった感じが強い。ライトノベルは一般文芸や従来のエンターテイメントとは別の流れから生まれた特別なものであって欲しいという願望はひしひしと伝わってきました。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

一柳廣孝(いちやなぎ ひろたか)
1959年生まれ。横浜国立大学教育学部教授。日本近現代文学・文化史。『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉』(講談社)、『催眠術の日本近代』(青弓社)、『無意識という物語』(名古屋大学出版会)、『怪異の表象空間』(国書刊行会)。

「2022年 『「日本心霊学会」研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

一柳廣孝の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×