- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788515642
作品紹介・あらすじ
人間にとっての「最低限度」の生活って?
〈できる〉か〈できない〉かで人間の価値が決まる。できれば「多くとれる」。
そういう考えは、まったく正しくない。それはなぜか──人間がそのままの姿
で生きている、そのことの価値と意味を、さまざまな運動の歴史と深い思索の
数々を丁寧に参照しながら、論理的に解き起します。成果主義、能力主義、自
己決定、尊厳死、介護、格差、貧困、税。それらはいままさにその内実を再検
証され、この国に生きる人々とシェアされるべきでしょう。著者の生涯をかけ
たテーマがマンガやイラスト交え、易しく描かれます。憲法二十五条をめぐる
インタビュー「健康で文化的な最低限度?」を増補。
感想・レビュー・書評
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新宿紀伊国屋別館にて購入。
マンガ「ダルちゃん」作者はるな檸檬さんによる関連著作フェアにて。
関連図書と言われてこの本が真っ先に思い浮かんだ、とのこと。ダルちゃんがとても素晴らしかったので読んでみました。一読し蒙を啓かれた思い。新たな視角をもらいました。
いまの社会の根本にある自己責任論/能力主義にとてもアクチュアルで徹底的なほど論理的に一石を投じています。
いか自分のためのまとめ。
[能力について]
・自分の能力によって得られたものならばすべて自分のものとしてよい、というのは自明ではないのではないか。
・自明のものとした結果自己の行動あるいは能力だけにより人間の価値が設定されている。
・しかし能力によって得られたものは畢竟交換可能な手段に過ぎず、その人が所有していると言えるものはその人自身の存在や能力である。
[他者について]
・自己が制御できない存在を他者とする
・すべてを制御可能=私とする欲望がある一方、それを望まない欲望もある。
・それはつまり他者が存在することを積極的に欲望し快とするということでもある
村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」のなかで、戦後日本は「効率」という価値以外に有効な価値体系を持たなかった(大意、記憶違いありかも)というくだりがあったかと思います。ああそうだなと思う反面、効率に代わる価値判断て難しいよなあと思っていたのですが、人の存在そのものを中心に置こうやというのは有効なオルタナティブであるなと思いました。
他者への欲望についても非常に納得のいく話で、本を読んだり映画を見たり美術に触れたりというのもこの原理かもと納得いきました。ここから考えられることはとてもありそう。
よりみちパンセシリーズということもあり、非常に明快に、かつ論理的につながった話がされているのでわかりやすい。
著者の立岩さん、弱くある自由や、生存権など気になる著作が多いので勉強しようと思う所存。
古市落合対談(とのその後の議論)にモヤついた自分にとって時宜を得た本でした。
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「できることはよいことか」ーそんなこと考えたことさえなかった。
しかし、一度このことを考えると、いかに自分が「常識」にとらわれていたのか、がわかる。
そして、「できない」人たちを排してきたのかを。
●「不自由」をどう考えるかということ。したいことができないのはたしかに困ったことです。でも、自分ができないことを他人にやってもらったらちょうど同じになる場合もある。
●「できる」「できない」ということの意味をもっと考えたほうがいいだろうと思っています。 -
「できる」が人の存在価値なのか。長年仕事で育成に関わって、ここ数年、能力主義や自己決定マネジメント(そこで起こる内面化)にうんざりしていた(社会と会社の境界のようなカイシャだから余計に)。やればできる・やれば報われるって随分雑で乱暴な考えじゃないのか。この本を起点に改めて考えてみる。
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生産能力にはどうにもならない差がある。なので、生産能力に応じて収入を得るのは公平ではない。
そもそも生産した「から」自分のものであるという根拠はない。
ラディカルに聞こえるが、「生産したものは自分のもの」という前提への疑問は結構ゆさぶられる。 -
相変わらずのぬたぬたした文体だけど,妙にクセになる.言っていることはとても平易だけど,その理路は険しいと思う.
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全文ルビを振ってあるので、読みづらかった。分厚い本しか出してくれない立岩先生の貴重な薄い本なんだけど。。。残念。