ヒットラーのむすめ (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち 1)

  • 鈴木出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784790231493

感想・レビュー・書評

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  • 2005年出版産経児童文学賞を受賞。原作はオーストラリア作家。
    内容は、4人の子ども達がスクールバスを待つ間、バスの待合室の中で語られたお話ゲームでお話の上手なアンナによって語られた物語。主人公のマークは、この「ヒットラーのむすめ」の話に引き込まれ、自分だったらどうだろうか?など様々な事を考え、夢中になっていく。ただの子どもの作り話という形で始まるが、1番真剣に聞き、深く考えていたマークには最後にこれがどういう話で、なぜアンナが知っていたかがわかるのです。
    訳者のさくまゆみこ氏のあとがきに、日本では特にヒットラーという名前やユダヤ人虐殺の事は知っていても、そんな事は遠い昔に終わり、今はもう幸せな暮らしが出来、ありえない事と考えがちでしょうが、現実には今も理不尽な弾圧を受ける人がいるのではないか?いつヒットラーのような恐ろしい考えを持った人があらわれるか?あるいは、もうあらわれているのかもしれないと深く考えるきっかけを投げかけています。

  • オーストラリアの田園地帯に住む子供たち。スクールバスを待つ間、一人の女の子がヒットラーの娘の話を始める…ヒットラーには実は一人娘がいた。彼女は生まれつき顔に痣があり、片足が短かった。父としてのヒットラーは優しかったが、彼女の存在は隠匿され、ドイツの田舎で隔絶されて孤独に生きていた…その話に引き込まれた男の子は、「親が悪い人だったら子供も悪い人になるのか?」「何故ヒットラーのような男が総統として国を率いることになってしまったのか?」「本当に人種的な優劣があるのか?」等の疑問を持つ。
    児童文学と分類される本ではあるけれども、大人が読んでも色々考えさせられる内容で、非常に面白かった。
    参院選が終わったばかりだが、投票率は悪く、新聞には「自分には関係ない」「どうでもいい」「政治には興味が無い」という人達のコメントが掲載されていた。子供時代にこういう本を読んでおくことは(もちろん大人になって読んでも良いのだが)、意味のあることだと思う。

  • アンナの空想ではなく、アンナのお祖母さんがハイジだったとは。
    マークが幼いなりに深く物事を考えようとしているのに、その邪魔をする両親はレベルが。。。
    それも含めて考えさせられた。

  • もしもヒットラーに娘がいたら、という空想ゲームから、なぜあんなことが実際起きたのか考えていく男の子。両親に尋ねても次第にうっとうしがられ、怒られるという顛末。とにかく正義や正しい事というのは主観でもあるので、きちんと自分の頭で考え行動することが大事。

  • 夏休みの課題図書だったかなんであったか。
    物語はもし、自分がヒットラーのむすめだったら?というお話ゲームから始まる。
    児童向けということもあって問いが提示されるだけで特に掘り下げられることもない。お話しゲームを聴くマークもそこまで考えないでただ聞いて自分に問うだけだ。周りに話しても面倒くさがられて捨て置かれる。年を経るにつれてどんどん考えなくなる。そして、結局最後にはこれはゲームだからと、読んだであろう子どもたちに投げかける形で締めくくられる。
    こういう形が子どもいいかはわからないが、思うに、あまり哲学的に意味をなさない。
    ヒットラーのような行いをするということと、自分の親がヒットラーであるということはまったくもって別の次元の話なのだ。何もヒットラーに限った話ではない。親が英雄であろうとその英雄的行いと関係がないように。自分が自分であるということは親とは関係ないところにある。確かにこの肉体は親から与えられたに違いない。だが、それが自分であるということは親とは別のところにある。行為もまた同じである。ひとを殺す、そこにどんな理由もつけられない。ただ、殺すという行為が実現するに過ぎない。だから、家族であろうと、恋人であろうと、ヒットラーの行為を誰も止めることなどできない。どうやったら善悪の区別がつくのだろうとか、自分の周りが全員間違っていたら、ということを問うのは意味をなさない。書いた人間も無責任と言えば無責任だと思う。しかし、どんな英雄的と言われる行為も残虐と言われる行為も同じものの裏表なんだというよりは、そういうことはしていけませんと言う方がいろいろ都合がいいに違いない。

  • (2015-03-25)

  • 難しいかな、と敬遠していたけれど、思っていたよりもさくさくと読めた。
    突き詰めて言えば「正しいこととは?」ということのおはなしかな。
    いろいろなことについてちゃんと考えよう、と思える小説。

  • もしヒトラーに娘がいて、彼女が大戦を生き延びていたら?
    もしそのことが人に知れたら、彼女はヒトラーの娘としか見てもらえなくなるだろう。

    でも、どうしても胸に収めておけなくて、もしかしたら孫娘に「もしもの話」として話していたかもしれない。

  • 雨の日のバス停で行われる「お話遊び」。今日から始まったお話は、ヒットラーの娘「ハイジ」の物語。子供たちは、ハイジのストーリーを聞きながら考えるのだ。

    もしも自分の父親がヒットラーだったらどうする。
    自分の父親が悪いことをしていたらどうする。
    父親が悪人なら自分も悪人になるのか。
    子供は親の悪を止めることができるのか。
    周りみんなが、それが悪だと気がつかなかったら、
    気がつかないふりをしていたら、
    自分はどうするんだろう。

  • 中学生の頃、この本をもとにした台本で初めて主役級の舞台をやった、思い出深いお話。
    そのぶんもしかしたら正しい内容で覚えていないかも。あれは書き換えた話なのかな..
    けどおもしろい発想です。
    (思い返すとショパンの「月光」のBGMが必ず浮かんできてしまう..っていうのは本には関係ない)

著者プロフィール

オーストラリアの児童文学作家。シドニー生まれ。ニューサウスウェールズで、ワラビーやウォンバット、いたずら好きのコトドリ、オオトカゲたちにかこまれて暮らしている。『ヒットラーのむすめ』は、イギリスでの受賞をふくめ、現在、10 の賞に輝いた。主な邦訳書に、『ダンスのすきなジョセフィーヌ』(鈴木出版)などがある。

「2018年 『ヒットラーのむすめ〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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