- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791713950
感想・レビュー・書評
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食料生産が及ぼす気候変動への影響について興味があり、手に取った。私の問いに対してそのものずばりのテーマではなかったので、さらっと目を通して終わりかなと思っていたが、予想に反して面白い論稿がいくつもあった。また、参考書籍で読んでみたい本も見つかった。
山内明美「明日なき《世界》」は、自動車社会や東日本大震災を例に挙げ、故郷を失われた人たちの「喪失」は外部へと追いやられ、自己回復が困難であると述べる。
藤原辰史「「規則正しいレイプ」と地球の危機」では、食料生産が気候変動に与える影響についても言及。化石燃料を手にした人間は、その「高速回転」の力を手に入れた。そしてその大きさ・速さに思考を奪われ、自らもその回転の中に巻き込まれている。
また、足達太郎「気候変動とアフリカ」は、定住農業がもたらした影響、それと比較したアフリカの農業形態についての論。生産性を高めることをよしとして、それを押し付けてきた「先進国」側の施策に対して、その土地に暮らしてきた人々が営んできた環境と共生する農業のあり方こそが、人間と生物の多様性の保全にとっては見直されるべきではと説く。
芳賀浩一「気候変動をめぐる「遅い暴力」」からは、今後読みたい本を見つけた。一冊は、原発事故を契機として政策転換をしなかった日本の未来を描いた多和田葉子『献灯使』。そのディストピアでは、老人の方が若者よりも頑強であるという。また、髙村薫『土の記』は、原発事故後の世界を表面上は何事もなく平穏に過ごす主人公の生活や内面世界を軸に、「人間が永遠にわかり得ない謎を秘めた存在であることを語ると同時に、あらゆる人間は地球の大きな循環の一部でもあることを表現」しているとのこと。
最近は知識欲のために、文芸作品を読む余裕があまりなく、しかしそれも寂しいと感じていたので、今の問題意識につながるような作品を知ることができて嬉しい。
山口未花子「「動物」にとっての気候変動はいかに経験されるのか」は、本書の中で一番気に入った「作品」。動物と人間の目線を行き来して語られる物語と、その背景にある思考のあと。その視点の持ち方は、普段生活する中でなんとなく想像するものであり、共感を覚える。「気候変動」という壮大な課題に対して、こんな入り口があってもいい。
文芸雑誌というものを普段読まないが、様々な著者の考えをいいとこ取りしてつまみ食いできるようで、そのテーマが自分の興味関心に合っていればとても「お得」。また気になるテーマがあれば手にとってみてもいいかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
目標13. 気候変動に具体的な対策を
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20/09/17。
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カテゴリを地学にしたように、どちらかというと理系寄りの話を期待していたが、行政の話などが多かった。まだ中盤ですが。
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このところ大注目されてるマルク主主義経済学者の斎藤幸平さんが気候危機について寄稿されているということで読んでみました。気候危機は将来のことではなく既に始まっていると指摘、その上で危機を脱するための政治のあり方を検討しています。経済成長と気候危機回避が両立、専門家集団が中央集権的に推し進めていくことなど、これまでの社会システムの枠内(資本主義や社会主義)では解決不可能で、それらを超えた新しい民主主義システムを追求すべきだと述べています。
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【特集】気候変動