- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791755103
感想・レビュー・書評
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表題作はなかなか読ませる歴史フィクション。サン・マルコ美術館のフラ・アンジェリコ、ネットで検索すれば具体的に取り上げられているのがどの絵のことかすぐに分かり、理解が深まる。良く知られているアルコバサ修道院の墓にちなんだ「ドン・ペドロの愛」は伝聞ほぼそのままでひねりがほとんどないのが意外。その他意味不明な人を食った短編がいくつかあり、無条件にタブッキ好きという訳ではない私には難解だった。
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今月の猫町課題図書がタブッキなので、関連で一冊。超短篇を含む11作品からなる短篇集。
書簡風の短篇が 2作と、絵画をテーマにしたものが 2+1/3作含まれている他は作品の間に相互の関連はない、ように思われる。もっとも、超短編と言えども必要最小限の仕掛けは読み解かないとまったく意味が通らない作品もあるので、タブッキ、やはり油断がならない。
お気に入りの一作は何と言っても表題作「ベアト・アンジェリコの翼あるもの」。ぜひベアト・アンジェリコ(フラ・アンジェリコ)のフラスコ画『受胎告知』を眺めながら読みたい。次点はやや恐怖小説の気味を帯びる「マカオの文書館」。『インド夜想曲』に関する議論が往復書簡形式で描かれる「以下の文章は…」も興味深い。 -
アントニオ・タブッキのどこに強く影響を受けたのか、といわれると難しいんですが、短編であるからこその力強い訴える力、信念に基づいた「普通の人」の描き方、それから日常をほんの少しだけ飛び出したファンタジー、というあたりじゃないでしょうか。「ベアト・アンジェリコの翼あるもの」に出てくる天使の姿はきっとだれも想像のしたことがないもので、それだけにすごく印象に残っています。物語は淡々としていて、強烈なものはないんですが。フラ・アンジェリコの絵画を見ているのと同じ、じんわり、とした気分になれる。