立ったまま埋めてくれ: ジプシ-の旅と暮らし

  • 青土社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791756728

感想・レビュー・書評

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  • ユダヤ人が世界的陰謀を企てる集団として密告されたのに対して、ジプシーは数世紀前からスパイというレッテルを貼られ、今や生まれながらの犯罪者として攻撃されていた。後者の誹謗中傷は時間という試練にじつによく耐えた。戦争犯罪を裁く裁判でナチスは、ジプシーは犯罪者として罰せられたのであり、ジプシーだから殺されたわけではないとして、ジプシー殺害を正当化、または別扱いにしようと、それに成功した。戦後早い時期だったので、まだ十分な証拠書類がそろっていたにも関わらず、ニュルンベルク裁判でロマとシンティの大量殺害は裁かれることなく、ジプシーの証言者はだれ一人召喚されなかった 。

    シンティとロマに対するナチスの大量虐殺は1982年に、ようやくヘルムート・シュミット首相によって公式に認められた。ところが事態は何も変わらなかった。ジプシーのわずかな生存者が官僚主義の煩雑な障害を乗り越えてかろうじて得られるのは、わざわざ面倒なことをやる価値などないということだった 。

  • テーマ『知らない世界を覗ける本』

  • 気が滅入った。

    ロマ(ジプシー)と呼ばれる人々がいて、ヨーロッパでは差別される立場の人たちらしい、ということはなんとなくは知っていた。ナチスに迫害されて大勢殺された、ということも知っていた。が、ユダヤ人やアメリカ黒人と比べて、ロマ迫害を非難する声も、差別と戦う彼らの姿もちっとも伝わってこない。不思議だった。

    ロマをとりまく圧倒的な貧困と不寛容。悪意と無知。差別、というよりはいじめ。この本の中には、アメリカ黒人におけるキング牧師や、ユダヤ人におけるフランクル博士のような、ロマを代表するアイコンは出てこない。だから読者はロマに移入ができず、感情による「かわいそう」「こういうことをしてはいけない」という安直な指針を与えられないまま、ロマをめぐる物語に放り込まれることになる。これは著者の計算なのかもしれない。

    ぼくの正義というのは、たとえばその辺の中学校のPTA会長が、中東やアフリカの紛争地帯で「みなさん仲良くしましょうね」みたいなことを言うレベルにすぎないのだろうか? 正しい、間違っている、だけでは当事者の耳には届かないのだろうか?

  • 色々な国のジプシーの話のレポートなので、おもしろいと言うわけじゃないけど、内容の濃い話だし、展開がよくて読みやすかった。

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