その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く――

  • 青土社
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レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791769315

感想・レビュー・書評

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  • 自殺希少地域には
    「生きやすさ」のヒントが
    あるのではないか…

    そうした考えのもと、
    著者が行ってきた
    フィールドワークの様子が
    書かれた本です。

    「はじめに」では
    こう述べられています。

    「これが正しいとかこうすべきだとか、そういうことを書きたいわけではない。」
    「本書が何かを考えるきっかけになったらと願っている」(12~13ページ)

    その言葉通り、
    この本には「生きやすさ」の
    ヒントになりそうな出来事は
    かかれていても、

    こうすれば生きやすくなる!
    というような
    こたえそのものがズバリと書かれている本、
    ではありません。

    むしろ
    8割以上がエッセイです。

    そのため
    「今すぐ生きやすさが知りたい」
    「生きやすさとは何かを言いきってほしい」
    「手っ取り早く、自殺を少なくする方法が知りたい」
    という方には、正直オススメできません。

    ここには
    自殺希少地域で暮らす人たちの日常が
    著書の体験を通し、記録されています。

    読みすすめているうち、
    自分にとっての「生きやすさ」とはなにかを
    自然と考えている自分に、
    きっと気づくはずです。

  • 生きる勇気が湧くとか、癒されるとか、そういう本じゃない。直面した現実の、多様で複雑な生きづらさを見つめて、どうしたらより生きやすくなるのかを淡々と、一緒に考えさせてくれる本だ。
    読むと自分を振り返ってつらくなる。けど、つらさがあることに素直になれる。
    共感できなくてもいいから、多くの人に共有してほしいことがたくさん書いてある。押し付けがましい善意の本ではない。

  • 自殺率の低い地域「自殺希少地域」には心地よく生きる知恵があるのではないか。そう考えた精神科医が現地の雰囲気を肌で感じてきたリポートです。
    あくまで外から見た環境なので、根拠があるわけではないのですが、オープンに人の役に立つことを喜べる地域に居る事は、精神衛生上とてもいいと思います。人と関わる事が辛い人にはちょっと受け入れがたいかもしれないけれど、自分ひとりならそういう村にいるのもいいかなあと思いました。
    先日読んだ「つけびの村」も田舎の集落ですが、何が違うんだろうと思って読みました。うわさ話が好きだったり、悪口だって言ったりする。それは共通しているのに何がちがうのか。
    この本を読むと、人への関わりがあまり濃密ではないけれど、誰にでも親切にする事が基本になっている場所なのかなという気がします。ゆるやかな共同体というんでしょうか。
    僕的に思っているのは自殺の原因には孤独以上に「世間の目」というものが作用しているような気がしています。
    世間という概念を改めて突き詰めると、仮想された不特定の人々なんですよね。はっきり面と向かって何か言われない限り無効だと割り切れれば、とっても生きるの楽になると思うのですが、こういう事を考えている事自体そうなれない証拠でもあるんですが・・・。

  • 自殺で亡くなる人数が少ない「自殺希少地域」を訪れるドキュメントですが、思っていたほど堅苦しくなく、気軽に読めて、為になりました。

    その地域では、挨拶はもちろん、会った時に何らかの声かけや会話が自然に発生する。声かけは、見知った人のみでなく、観光で来ている等、知らない人にも声をかける。慣れないと、戸惑う人もいるかもしれないが、そこでは、それが当たり前になっている。

    なぜかといっても、特別に変な意味はなく、単に助けになると思って、声かけをしている。これについては、孤独を望んでいる人に対しても、孤立はさせない効果があり、単純なようで侮れない。声かけだけでも続ければ、自然とその人のことも分かり、ありのままを認めてくれていると実感できて、生きやすい環境になる。

    フィンランドで実践されている「オープンダイアローグ」というものがあり、そこの人が言っていた言葉にいたく感銘を受けた。

    「ひとが呼吸をするように、ひとは対話をする」

    私自身、時折、息苦しいと思うことがあり、そういうときは大抵、何かしらのストレスを感じていることが多い。大人になって、呼吸の仕方も忘れたのかと、愕然としたりもしたが、そういえば、色々な人と対話を自然にできているのかと言われれば、それもできていないと思う。習うより慣れろの精神で心掛ければ、周りの人たちも生きやすくなり、それが自分にも還ってくるということに、すごく納得させられた。



  • 自殺率の低い田舎町を歩く旅のエッセイ。
    そこでの出会いや出来事から文化を読み解く。
    著者の人柄が滲み出てゆるゆると読め、その風景から、人を生かすのは理屈ではなく在り方(行動)だと思い直すことができる。オープンダイアローグを牽引する実践家の実証研究のようでもある。

  • なぜ自殺率が低いのか?
    「病は市に出せ」っていう、この町の文化。

    自分用memo
    自殺をテーマにした異色の2冊の著者が語る「なぜ徳島県海部町は日本一自殺率が低いのか」
    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/40182
    ーー
    シブヤ大学
    徳島県の海部町というところでは「病は市に出せ」という言葉がある。悩みや心配事やうまくいっていないこと諸々あれば、口に出そう。口に出せば周りの人が助けてくれるよ。って内容。そういう文化があるおかげか、海部町は「うつ病」に対してもあけっぴろげなのだそう。
    https://www.shibuya-univ.net/club/yononaka/2014/03/post.php

  • 題名がインパクトあり。友人に薦められて読んだ。
    ちょうどオープンダイアローグを調べていたところだったので読みやすかった。
    フィールドワークのお仕事大変だけどすごく魅力を感じる。
    応援したい。

  • 『漂流老人~』でも感じたことなんだけど、やさしいというかふんわりしているというか…つかみどころがないようなところがある。

    本書の〈はじめに〉でも触れられているけど、“結論を早く知りたい方は終章を読んでください、終章にすべてまとめました。”とあったけど、本当にその通りでものの見事に終章にぎゅっとまとめて書かれていた。終章だけ読んでもわかるけど全部読んだ方が伝わるものは多いかな…とそう感じた。NPOを頼るにはまだまだ問題が多すぎるかな…「朋輩組」みたいな助け合いも一歩間違うと…問題がこじれてしまう可能性がある。人と人、人と支援の距離感が大事なのかもしれない。

    第6章からぐっと引きつけられて終章までたどり着くことができました。

  • なるようになる、なるようにしかならない。
    工夫しよう、受け入れよう、ありのままを認めよう、
    自分はどうしたいかを大事にしていく、
    人を追い詰めたり孤立させたりしない、
    ひととひととの関係の中で精神病は発症する、
    できることは助ける、できないことは相談する、
    世間の狭さは変化や異なることへの対応の弱さ、
    対話をしよう‥などなど、生きていく上での当たり前のことを気づかされた。

    社会は常に変化することを主眼とするとルールは最小限になる、ルールが組織の機動性を奪う、課題は現場を見ないと当事者の話をよく聴かないと解決できない、
    企業のマネジメントとは人を管理するシステムではない、人を大事にするための仕組みづくり、
    大切な情報は誰でも見えるようにすると困り事が生まれない‥などなど、難しい理論はいらない、より効果のあることはよりシンプルなことである、組織のあり方に納得。しかし、できていないな~私の属する組織は。

    読みやすい文章に森川氏の優しさや穏やかな人柄が伝わり、弱者とされている方々への支援活動を行っている点にも興味を抱いた。

  • 自殺の原因を分析して、その原因になるものを改善していこうというアプローチではなくて、自殺の少ない町などを観察して、自殺防止に関係しているかもしれない特徴や要因を探してみようというアプローチかな?

    自殺希少地域のフィールドワークを行った岡檀さんの研究をもとに、実際にそうした地域を訪問して、いろいろな人の話しを聞いてみたというお話。

    いわゆる問題解決型ではない、ポジティヴ・アプローチな感じかな?このアプローチでは、自殺が少ないこととその要因らしきものとの間の因果関係は本当のところわからない。

    という方法論的な課題はあるのかもしれないけど、それを超えて、とても説得力がある内容。それは、一般的な常識や精神医学の生半可な知識を裏切る目から鱗な内容。

    たとえば「人の話はよく聞きましょう」みたいなものじゃなくて、「人の話を聞かない」んだから、驚く。

    でも、本を読むと、なんだか、あ〜、それもそうだろうな〜と深く納得してしまう、説得力がある。

    そして、自殺希少地域におけるそれらの観察は、フィンランドのオープンダイアローグの特徴にほんとよく合致している感じ。

    より厳密にいうと、「アーリー・ダイアローグ」→「オープン・ダイアローグ」という流れによく似ている。つまり、大きな問題になるまえに、「心配事」を早めに話しあおうという「アーリー・ダイアローグ」的な風土が自殺を未然に予防しているという話しなのかな?と思った。

    「オープン・ダイアローグ」は、すごく面白いな〜と思うのだけど、なんだかフィンランドの文化のなかで機能しているもので、日本で同様な取り組みがうまくいく気がしなかったのだが、これを読むと、もしかするとうまくいく可能性もあるのかも?という希望がわいてくる。

    もっとも、これらの自殺希少地域の文化は、
    ・一人一人の人間の個が立っている
    ・不確実ななかで、問題は当然起きる前提で、起きたときにどうするかということに意識が向いている
    ・他者を助けるのは、あとで自分が困ったときに助けてもらうという期待感はなしで、自分がそうしたいから助けている
    などなど、かなり日本全体のものとは異なる感じもある。

    でも、日本人といってもいろいろな人がいるし、いろいろな地域や組織による文化差もあるだろうから、この本には、たくさんのヒントがあると思う。

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著者プロフィール

森川すいめい(もりかわ すいめい)
1973年生まれ。精神科医。鍼灸師。現在、医療法人社団翠会みどりの杜クリニック院長。阪神淡路大震災時に支援活動を行う。また、NPO法人「TENOHASI(てのはし)」理事、認定NPO法人「世界の医療団」理事、同法人「東京プロジェクト」代表医師などを務め、ホームレス支援や東日本大震災被災地支援の活動も行っている。

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