深読みミュージカル 新装版

著者 :
  • 青土社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784791771158

作品紹介・あらすじ

未来をきりひらく歌とドラマの力
『サウンド・オブ・ミュージック』『ジーザス・クライスト・スーパースター』から『ライオン・キング』まで。代表的名作の魅力を現代文化の力学のなかで読み解く、愛と知と葛藤の本格的ミュージカル論。待望の復刊!

感想・レビュー・書評

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  • 見解なんて人それぞれ、そもそも「深読み」って…この場合考え過ぎは作品の雰囲気や良さをぶち壊しかねないのでは?と、はなから斜に構えていた。だがその愚見は、第一章から覆される。

    論説の対象に選ばれたのは全10作品で、いずれも有名処。(自分は内8作品を鑑賞していた)そこから更に絞って、(特にお気に入りの)3作品の「レビュー」を振り返りたい。

    『サウンド・オブ・ミュージック』
    「ロマンチックな男女の恋愛物語を、中産階級の理想としての家庭神話と作りかえることに成功、そのことが(中略)観客をひきつけてきた理由です」
    家庭よりも恋愛的な観点が先行していた自分にとっては、思わず作品をプレイバックしたくなるような説。でもヨーロッパの古い階級主義を乗り越え、アメリカ的な自由恋愛で結ばれて見事家庭におさまるマリアを見ていれば確かに頷ける。
    しかもマリア本人は意図せずに(実は一家にとって思い出深かった)表題曲を子供達に教え、彼らは(同じく意図せずに)大佐の婚約者にそれを歌い、その場にいた大佐は愛に溢れたかつての家庭を思い出した。「君が必要だ」と言わしめたカラクリが明らかになり、気がつけば口が開いていた笑

    『メリー・ポピンズ』
    タイムリー!つい先日観劇したばかり。
    映画の方は遠い昔に観たきりで記憶も曖昧だったが、著者の言う通りもっと娯楽色が強かった印象。舞台版は陰と陽のコントラストが顕著で原作寄り。しかもバンクス夫妻の持ち歌や人柄まで変えていたというのには驚かされた。
    本作の魅力は、何と言っても思わず口ずさみたくなる楽曲!…なのだが、楽器で登場するアイテムの意味を把握できずにもいた。
    「煙突掃除」もその一つだったけど…
    メリー・ポピンズが春風に乗ってきたように、バートをはじめとした煙突掃除屋が春に煤をはらって家庭内の風通しを良くするという推察には思わず膝を叩いた。トータルで見ると、大人になってからの発見が圧倒的に多いな…

    『オペラ座の怪人』
    章全体で、大好きな劇中歌"Angel of Music"をフォーカスしてくれているのがシンプルに嬉しい^ ^
    聴覚のち視覚でクリスティーヌを認識したラウルに対し、音楽(聴覚)だけで信頼関係を築いてきた怪人とクリスティーヌ。だから姿を現してもなお、引き続き自分の音楽(聴覚)だけに身を委ねるよう"Music of the Night"であんなに強調していたのか。
    舞台版は敢えての「曖昧な終わり方」なんだろうけど、自分は映画版ラストの方を支持している。

    製作側は本当に意図していたのかと疑うような見解もあったが、それらがまた勉強になる。英文学者目線で作品を振り返っていく作業が、発掘調査に同行しているみたいで高鳴った。新たな視点もザクザク出てきたし♪
    疑ってしまい、申し訳ありませんでした汗

    • akikobbさん
      なおなおさん、こんばんは。
      ahddamsさん、またまた夜分に軒先で恐れ入りますが、おふたりのやりとりを拝見して、なおなおさんともつながりた...
      なおなおさん、こんばんは。
      ahddamsさん、またまた夜分に軒先で恐れ入りますが、おふたりのやりとりを拝見して、なおなおさんともつながりたい…と思いフォローさせていただきました。
      ご縁を与えていただき感謝です♪

      25周年のは、最後に豪華なセレモニーがあって、サラ・ブライトマンも登場して歴代のファントムたちと歌いますよ~
      四季のは観たことがないのですが、日本語でダイレクトに歌詞を味わうのも体験してみたいです。

      どうぞよろしくお願いいたします。
      2022/05/31
    • なおなおさん
      ahddamsさん、こんにちは。お久しぶりです。
      akikobbさんもこんにちは。

      こちらの本、読みました!(新装版ではない方)
      しかし私...
      ahddamsさん、こんにちは。お久しぶりです。
      akikobbさんもこんにちは。

      こちらの本、読みました!(新装版ではない方)
      しかし私には難しくて(;_;)、図書館本返却の延長を繰り返し、約2ヶ月借りておりました^^;
      でも、観たことのあるミュージカルの、ああ、あの曲ね!と脳内で音楽がかかったり、
      あの場面ってこういう事だよね?という確認や、こういう事なのね?などの解釈を楽しむことができました。
      特に私の好きな「オペラ座の怪人」「ジーザス〜」は、ふむふむと読みました。
      また劇場に行きたくなってしまう…
      ご紹介をありがとうございました(^_^)

      またどこかでミュージカル話ができたら嬉しいでーす(^_^)/~
      2022/07/26
    • ahddamsさん
      なおなおさん
      お久しぶりです。
      コメント有難うございます♪

      読んでくださったとの事、とても嬉しいです!もう記憶が薄れかけていますが汗、確か...
      なおなおさん
      お久しぶりです。
      コメント有難うございます♪

      読んでくださったとの事、とても嬉しいです!もう記憶が薄れかけていますが汗、確かにアカデミックな視点で観たことのないミュージカルの章は少し厳しいものがありました(^^;;
      脳内再生…!共感です(*'▽'*)私もまた観たくなって読後は本当に再生して余韻に浸っていました笑

      はい!akikobbさんも、その際は是非盛り上がりましょー!!
      2022/07/26
  • NDC774.5
    [未来を切りひらく歌とドラマの力。『サウンド・オブ・ミュージック』『ジーザス・クライスト・スーパースター』から『ライオン・キング』まで。代表的名作の魅力を現代文化の力学のなかで読み解く、愛と知と葛藤の本格的ミュージカル論。]

    目次
    1 家族(『サウンド・オブ・ミュージック』継母への跳躍、あるいはミドルクラスの神話;『ライオン・キング』異文化共生、あるいは血統の呪縛;『メアリー・ポピンズ』ネオリベラリズム、あるいは乳母の魔法)
    2 言語(『マイ・フェア・レディ』言語帝国主義、あるいはジェントルマン/レディの資格;『ウエスト・サイド・ストーリー』人種主義、あるいは記号の専制;『キス・ミー・ケイト』植民地主義、あるいは引用の政治学)
    3 身体(『ラ・マンチャの男』ヒロイズム、あるいは歴史の相対性;『ジーザス・クライスト・スーパースター』民主主義、あるいはメディアとしての偶像)
    4 他者(『オペラ座の怪人』エキゾチズム、あるいは仮面の下の天使;『レ・ミゼラブル』階級社会、あるいは敗者の正義)

    著者等紹介
    本橋哲也[モトハシテツヤ]
    1955年東京生まれ。東京経済大学コミュニケーション学部教授。専門はイギリス文学、カルチュラル・スタディーズ

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著者プロフィール

1955年、東京生まれ。東京大学文学部英文科卒業後、ヨーク大学で博士号取得。現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専門はイギリス文学、カルチュラル・スタディーズ。著書に『ポストコロニアリズム』(岩波新書、2005年)、『ディズニー・プリンセスのゆくえ』(ナカニシヤ出版、2016年)、『深読みミュージカル』(青土社、新装版2019年)など、訳書にヒューム『征服の修辞学』(共訳、法政大学出版局、1995年)、バーバ『文化の場所』(共訳、法政大学出版局、新装版2012年)などがある。

「2020年 『帝国の島々 漂着者、食人種、征服幻想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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