- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794207616
作品紹介・あらすじ
生命の歴史についてはよく語られてきたが、死の歴史についてはこれまでほとんど語られてこなかった。生き残りをかけた生命の進化は、同時に死の機構をも進化させてきたのだ-。なぜ老化がおこるのか、死は生命にとってどのような役割を果たすのか?死の本質に迫る。
感想・レビュー・書評
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上橋菜穂子が、この本を読んで「鹿の王」を書いたとされるので読んでみました。
意外と古い本だったので驚きました。
テロメアが短くなることで、寿命が縮むと書かれているお医者さんもいらっしゃいましたが、どうもコトはそんなに単純じゃなかったようです。
挿絵は素晴らしいのに図解が全くなくって、昔の知識と想像力を駆使して読みました。
体細胞は一代で死ぬのに、生殖細胞はなぜ生き続けるのか。36億年、命は続いているのである。
これを読んだ時に、初めて出産した時に「これで死ぬのが怖くなくなった」と感じたことを思い出しました。
自分の遺伝子は引き継がれたから、と。
もちろん「自分自身」の死は、今でも怖い。とっても怖い。
でもきっと本能のどこかで引き継がれていることに安心したものがあったのだと思います。
それと、自分の体からこんなに新しいものが出てきたことにも驚きました。自分は老いていくのに、そこから生まれるのもはこんなにも若いのか、と。
これが、生殖細胞には淘汰はあっても、老いも死もないということなんでしょうね。
私の細胞は、日々生まれ死んでいく。私の体から見れば、一つひとつの細胞の死は、新陳代謝に過ぎない。
私も生まれて死んでいく。生命界全体から見れば、私の生と死も新陳代謝の一つなのかもしれない。
死を見つめることは、生を見つめること。
葉っぱが落ちるときに静かに落ちていくように、そうして、大地に新たな栄養となってくれるように、私も、生きているとき、死んだとき、静かでいいから何かの役に立っていたらいいなと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遺伝子レベルから、老化と死の宿命について考える。
36億年と言う想像を絶する時をかけて進化してきた、驚くべき意味を、科学者の目で解き明かす。
一般人向けの本のはずが、難解な事も詳しく、正しく、私について来て、と著者の声が聞こえる様な内容。
死と言う逃れられない究極の命題を、自然界と一体となった気持ちになって、納得と共に不思議な感動をもって、読み終わることが出来た。 -
生物学的な「死」というものを見つめた。一般的には宗教的な、哲学的な物の見方をしているが、この本は生物学系の私としては、理解しやすく書かれている。
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生物の進化と個体の死についての歴史をまとめた本。縦書き全角アルファベットの図無しで記述されたアポトーシスや細胞分裂の章は何のジョークかと思うけれども、分子生物学の知識を持った上で読み返してみれば面白い、はず。
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『死』とはなにか?
多分みんなあんま考えたことがないと思います。
だってみんな死ぬのは怖いから!!
怖いことは考えませんよね・・・・
しかし、この本を読んで『死』について考えることは『生』についても考えることだと思いました。
人間の細胞は死んでいきます。つまり生物の死とは細胞の劣化や死について基礎づけられていることがわかります。
能管や心臓などの、生存にとって重要な器官の細胞が昨日を失えば、人間の個体の死につながるわけです。
ということは、人間は産声をあげる10ヶ月も前から死に向かって歩み始めているということです。
細胞って歳をとるごとに死んでいくから・・・・・
そう考えると人間って生まれた時は死の出発駅で細胞が死にきった時が死の終着駅だと思った。
でもよく考えてみるとそれって違くて、避けることができない細胞の劣化や死があるからこそ『生』が成り立っているのではないのかなと。
つまり、『死』によって『生』は支えられているのであり、『死』から目を背けることは『生』に目を背けることになるのだと思う。
死について考え、理解することが『生きる』という意味を考えることにつながるのではないのか?
人はこの世に『生』を与えられ、死の刻印を押されたとしても、
また死の恐れを知ってしまったのだとしても、
『死』を認め、『死』に怯える人々の苦しみを思いやるとともにそこから何かを学ぶことが『生』の証なんじゃないかな。
人間は死を運命づけられてこの世に生まれてきた。
でも、その死を刑罰として受け止めるのではなく、永遠の解放として、安らぎの訪れとして受け入れることができるはず。
また、死の運命を背負わされた囚人として生きるのではなく、
誇りと希望を持って自分に与えられた時間を燃焼し尽くすことが大切なんだと思います。
今日も皆さんは死にむかって1日を歩みました。
寝る前にその1日を思うとき、
死への1日としての重みに耐える時を刻んだと言えますか -
タイトルの前半部分に哲学的なモノを勝手に感じて購入。しかしあくまでも生命科学の面から死にアプローチした本であり、死を冷静に見つめるきっかけとして良い本であった。そこからどう『死』を認識し、イメージするかは人それぞれ・・・
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死んだ時、その生物の中で何が起こるのか。
生と共に死の機構も進化してきた。
その歴史を優しく分かりやすい口調で教えてくれる。
死から始まる、小さな生き物たちの大繁殖は、なにかお祭りのような感じさえした。
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柳沢桂子さんが書いているからこそ説得力がある。
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精霊の守り人シリーズの作家、上橋菜穂子さんが
獣医さんとの対談集の中で、最近読んだ本について
書かれている部分があって、
そこの登場したのがこの柳澤桂子さんの「われわれは〜」
副題は『死の生命科学』1938年生まれ、
お茶の水女子大理学部卒アメリカに留学。
分子生物学の勃興期に立ち会う。コロンビア大学大学院修了後
慶応医学部助手を経て、三菱化成生命科学研究所主任研究員。
30代より激しい痛みと全身のシビレを伴う
原因不明の難病に。
病床で多数の科学エッセーを執筆。
遺伝子にはあらかじめ「死」がプログラムされてる。
なぜ生命に死が組み込まれたのだろうか。
36億年かけて生命が進化させた「死の機構」とはいかなるものか。
淡々と綴られる死についての例は、
単細胞から人にまで幅広く網羅され
死という言葉が持つ不安を伴うイメージは
果たして正しいのか?とさえ思わせる。
なんども読んでみたい1冊。
巻末の『おわりに』を読むだけでも。。。