機械より人間らしくなれるか?: AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

  • 草思社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219008

感想・レビュー・書評

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  • 5分のチャットでAIと人間の区別を当てるというチューリングテストに、人間として出場する話。AIの開発という話になりがちなところ、逆に、AIを乗り越えて、人と認めてもらえるかという面白い視点です。僕は本当に人間かな、誰にも証明してもらっていないな、と心配になります。実は相手が機械かも、というよりも、そっちのほうが怖い。Google日本語入力が変換してくれない文字は、もう僕の語彙にはなくなってしまった気がするし、同じく誤字は僕の誤字でもある。人間らしさとは何ぞや。それは僕には結局わからないのだけど。

  • AI開発の歴史を通して、コンピューターと人間との違いを論じる。軽い読み物的な雰囲気の一方で、人間とはなにかを深く考えさせられる哲学的な要素を含む。

  •  イギリスの数学者アラン・チューリングが提唱した「チューリングテスト」という実験があります。これはコンピュータに知能があるかどうかを判定するためのテストで,審判役の人間が姿の見えない2人(片方がコンピュータで,片方が本物の人間)とそれぞれ5分ずつ会話し,どちらが人間だと思うかを会話から判断するというもの。このテストを行って,審判役の30%をだませる(=人間だと思い込ませることができる)コンピュータは,人間と同じような知能があると言って差し支えないとチューリングは言っています。
     チューリングがこのテストを考えた1950年には,コンピュータはまだ人間と会話ができるようなものではありませんでしたが,今では人間とチャットで会話するプログラムはさほど珍しくありません(精度はともかくとして)。コンピュータにチューリングテストを受けさせて,最も「人間らしい」とされた機械に賞金を出す「ローブナー賞」という大会が毎年開催されるようにもなりました。本書は,このローブナー賞に挑戦した著者ブライアン・クリスチャンの記録なのですが,面白いのは,この人はコンピュータを開発して挑戦したのではなく,コンピュータと同じく姿を隠して審判役と会話する本物の人間の方(「サクラ」と呼ばれます)として参加し,会話だけで自分を人間だと信じさせ,コンピュータを負かして「最も人間らしい人間賞」を獲得しようとするのです。
     本書の面白さは,チャットだけで自分が人間であると信じさせるためにどんなテクニックを使ったかということではなく,「人間らしい」とはどういうことなのかということを真剣に考察していることです。著者が参加した大会の前年に「最も人間らしい人間賞」を受賞した人は,常にイライラして怒りっぽい態度で会話していたそうですが,それが人間らしさだとしたらあまりに悲しいことです。
     本書で著者が繰り返し述べているのは,機械が人間に近づいているということよりも,人間が機械に近づいてしまっているということです。仕事はルーチン化し,カスタマーサービスの電話応対は完全にマニュアル化され,チェスは定跡から出られなくなり,ナンパのような話術でさえマニュアルができる始末。このような状況を「メソッド化」と呼んでいますが,このメソッド化こそが人間を機械と同様にしている,と著者は言います。そして,メソッド化された仕事を得意としているのがまさにコンピュータであって,人間の仕事はコンピュータにとって変わられています。
     したがって,この逆をいくのが「人間らしい」ということにならないか,というのが著者の意見です。その時,その場所で,その相手としかできない会話こそが,「人間らしい会話」ということになるのです。これは会話に限ったことではなく,人生全般について言えることで,自分の人生をルーチンワークに落とし込むのではなく,いつも何か違うことを求めて活動し続けることが「人間らしい生き方」と言える,というのが著者が最も訴えたかったことのようです。
     途中,冗長に感じる所があったり(終盤の圧縮の話は正直退屈でした),ローブナー賞の大会当日のことはほとんど書いていなかったりと,ちょっと残念に感じる点もありましたが,著者の主張には大いに共感しました。著者は哲学と詩とコンピュータサイエンスの専門家なので,コンピュータを過大にも過小にも評価していないところに好感を持ちました。

  • "人間らしい人間である事を5分間のチャットのみで表現する"ことを求められた人間の奮闘。このシチュエーションを取り上げたアイディアの勝利。内容と文章は若干散漫な印象を受けた。言語表現も関わるので、通訳を介さず原語で読んだ方が一層楽しめるのかもしれない。

  • 日経新聞書評 2012.7.15 内田麻理香選

  • P377
    ローブナー賞とは、コンピュータがどれだけ知的であるかを測定するために、審判員がコンピュータと人間(サクラ役)の両方とチャットをして、どちらが本物の人間であるかを判定するチューリングテストを利用して、どのコンピュータ(チャットボット)が最も人間らしいかを審査するコンテストだ。最も人間らしいと判断されたチャットボットには《最も人間らしいコンピュータ》賞が贈られる。ところが、このコンテストには別の賞が用意されている。それがサクラ役を務める人間のなかで最も人間らしいと判断された人間に贈られる《最も人間らしい人間》賞である。ほとんどだれにも見向きもされない、ニュースで取り上げることもまずないこの賞に目を付けたのが本書の著者ブライアン・クリスチャンである。四人いるサクラ役のなかで《最も人間らしい人間》賞を勝ち取るには、さらにはコンピュータよりも人間らしいと判断されるためにはどうすればいいのか。それが本書のテーマとなっている。

    目次
    プロローグ
    第1章 《最も人間らしい人間》賞への挑戦
    第2章 ボットにアイデンティティはあるのか
    第3章 「自分」とは魂のこと?
    第4章 ロボットは人間の仕事をどう奪う?
    第5章 定跡が人をボットにする?
    第6章 エキスパートは人間らしくない?
    第7章 言葉を発する一瞬のタイミング
    第8章 会話を盛り上げる理論と実践
    第9章 人間は相手の影響を受けずにいられない
    第10章 独創性を定量化する方法
    第11章 最も人間らしい人間
    エピローグ ガラスの食器の得も言われぬ美しさ

  •  読んで良かった。お話の主題は、チューリングテスト。とても、興味深かった。
     とても、とても、興味深かった。だって、人間らしさについて、積極的に
     哲学してるんだもの。だって、多角的な線引きが、妥当性を伴って、大きく
     自我を覆っている感じを享受ってしまったのだもの。心地よし。だもの。
     いつか、また、そして、ややもすると、読めと呼らば、ささと読まんとす。
     我、迷いて迷わらんとすれば、読まんとす。読まんとすれば、そこに耽けなむ。

  • チューリングテストに人間として参加する、という面白い状況。著者は人間であることを5分間のチャットで表現しつくすために、あらゆる面から「人間らしさとは何か?」を考察する。言語学的な話が英語になってしまうのでなんとなくしか理解できなかった(でも訳者はうまく翻訳していたと思う)。チェスの話「AIに負けたのではなく過去のパターンに負けたのだ」という結論はなかなか面白い視点ではあった。

  • 人口知能の研究を通じて、にんげんらしさを探求する~らしいよ☆

    読んだらまたレビューしまぁーす☆

    読んでます!!
    人間とは何か?という問に対してチェスやナンパと様々な角度から探求しています。さらに歴史上の人物の名言や映画ワンシーン、様々な文学や詩歌からの引用ととても知的な刺激に富んでいます。

    いやぁ~面白かった!
    凄く深い!!

  •  「人間らしさ」とは何か「機械と我々の違い」は何かという事をあらゆる面から解いていく一冊。筆者の書き方、表現の仕方も内容と同じくらい面白く、次々と読んでしまう本。実際にある「人間らしさ」を競う大会に人間代表として出場した筆者の感想や考えがとても面白かったです。是非読んでほしいです。
    (匿名希望 外国語学部 外国語)

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著者プロフィール

ブライアン・クリスチャン(Brian Christian)
ブラウン大学でコンピュータサイエンスと哲学の二重学位を、ワシントン大学で詩の美術学修士を取得。文学作品と科学ジャーナリズム作品を執筆している。

「2014年 『文庫 機械より人間らしくなれるか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ブライアン・クリスチャンの作品

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