文庫 絵で見る明治の東京 (草思社文庫 ほ 2-2)

著者 :
  • 草思社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223005

作品紹介・あらすじ

建築イラストの第一人者が絵と文で再現した明治の東京。築地ホテル館、鹿鳴館、浅草12階、新橋ステーションなど主要建物を網羅。遊び、服装、馬車など風俗も活写。

感想・レビュー・書評

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  • 明治の東京について、精巧なイラストと文章で表した本。
    明治と言っても45年あるわけで、かつその間に江戸時代の風俗から洋風なものに変貌するので、動きがかなり有りますが、じっくりと描いています。

    特に良かったと思うのが、「庶民がどのように生きてきたか」という点に焦点が当てられているところです。歴史の書籍だと偉人の話しや、歴史的な出来事については詳述されているものの、市井の人がどのように生きてきたかはよくわからないもので。

    ついでに、関東大震災から太平洋戦争までの間の東京についても描いて欲しいと思いました。

  • 明治150年にあたる今年、明治関係の本も多く読むことになりそうなので、参考本として購入。
    ぱらぱらとめくったら止められなくなってしまった。
    面白い!

    元号が変わったからと言って、生活が一気に変わるわけではない。
    街並み、生活習慣、祭りやファッション。
    明治の初年から末年まで、いろんな視点から明治を描写。

    小説を読むときにも参考になる。
    読む明治図鑑のような感じ。

  • ・穂積和夫「絵で見る 明治の東京」(草思社文庫)で 気になつたのは後半のいくつかの章であつた。要するに政治等の明治国家の問題よりも庶民生活である。例へば明治座がある。現在の明治座は浜町公園横のビルに入つてゐる。隅田川は公園の向かうになる。ビルになる前も今の位置にあつた。本書に載る明治座は明治26年完成の初代明治座 (231頁)である。川のほとりに建つてゐるらしい。明治座の歴史を見ると、関東大震災で焼失するまでは久松町の川筋にあつたといふ。明治時代の明治座は、従つて、現在地にはなかつ たことになる。現在の久松警察署のあたりにあつたといふ。このあたりが浜町河岸であつたはずであるが、本書にそれに類することは書かれてゐない。どこが浜町河岸かといふのは興味あることである。個人的な興味によるのだが、例の「明治一代女」である。新内の「梅雨衣酔月情話」、あるいは 「花井お梅」である。 お梅は峰吉殺しの後に久松警察署に自首したといふ。事件のあつた酔月楼は浜町河岸にあり、それは現在の久松警察署のあたりだといふ。 つまり、時の明治座もお梅の酔月楼も隣接してゐた(?)らしい。私は、明治座はずつと現在地にあつたと思つてゐたから、このことに気づかなかつた。この事件は劇化されて有名に なつた。しかも、お梅は後に自らお梅を演じたといふ。最初から芝居に縁のあつたお梅の事件だと変に感心したりするのであつた。それにしてもあのあたり、現在は水路が埋められて当時の面影はない。明治座の絵に見えるのは埋められる前の水路であつたらしい。狭さうである。河ではない。あんなものであらうか。同じ頁に歌舞伎座も出てゐるが、これも同じこと、現在地ではあつてもである、この面影はない。100年以上前のことである。そんな変化は当然である。
    ・まだあつたのだと思つたのが水売りである。江戸の地下水は塩分が多くて飲用には適さなかつた。だから飲料水は買つた。水売りがゐて水瓶が必要だつた。明治にはこれが解消されてゐるのかと思つたのだが、さうではなかつた。やはり水売りがゐた。どうも江戸と同じやうなものであつたらしい。しかし、非衛生的な水事情であつたのはまちがひない。そこで上水道に関する調査が明治20年に始められ、明治も終はらんとする44年に完成したらしい。 つまり、水事情については、ほとんど明治の間中、江戸を引きずつてゐたのである。さう簡単には近代化できないのは分かるが、この切実な水問題でさへかくも時間がかかつた。かういふのは多い。本書は「絵で見る」書である。水売りの絵(143頁)も出てゐる。江戸時代のを流用してゐる。他の物売りや芸人も出て ゐる。この絵を見ると 江戸と同じやうなものだと思はれるものもある。門付け芸人、例へば三河万歳や鳥追ひ(226頁)などといふのは変はりやうがなからう。文明開化で散切り頭だからといつて万歳が洋装で舞ふのはをかしい。鳥追ひとて三味線捨ててとはいくまい。ところが、おいちにの薬売り(227頁)や演歌師(229頁)はアコーディオンやヴァイオリンである。明治に出てきたのだから当然である。それでも、江戸と変はらない方が多い。庶民には、明治はほと んど江戸だつたのであらう。撒水車(228頁)が出てゐる。当時は舗装道路でなかつたゆゑに、土埃がひどかつたらしい。その対策である。原理は同じだが、 大八車のやうに見えるのに水を積んで撒いてゐる。これではあまり多くは撒けまいと思ふのだが、これでよかつたのであらう。などと書いてゐると、明治は、たぶん庶民の明治は江戸を引きずつてゐたのだと思ふ。金がなければ変はりやうがないといふことか。

  • 絵はきれいで眺めていて楽しいのだが、素朴な昔は良かった史観なので、ほんとに明治はこんなに小ぎれいだったわけもないし、文章の内容も一部真偽のあやしいところもある。
    歴史家じゃなくてイラストレータの本なので、見たいものを見るのにはこんなものでよいのかな、と思う。

  • 明治が舞台の作品を創作する人も、読む人も参考になると思う良い御本でした。このコンパクトな中にすごい量の情報が入っているので(それ故、一つ一つの項目は、かなり表面をなでただけのコラムみたいな説明になっちゃうところもありますが)、「明治」の時代をいろんなテーマで切り取って、どのように変化していったかを説明してくれているので、これ1冊でかなり「明治の東京」の変遷が理解できました。
    例:東京市民の服装の変遷(和装→洋服の流れとか、髪型の話とか)
    浅草の繁華街として開けていく流れ、下町と山の手の話、銀座や丸の内界隈の開発計画の話

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著者プロフィール

穂積和夫 1930年東京に生まれる。東北大学工学部建築学科卒業。セツ・モードセミナー創設者の長沢節氏に絵を学ぶ。メンズファッションを中心に、車、日本の古い建築のイラストレーション、ファッション評論などで現在も活躍中。著書に『文庫 着るか着られるか』(草思社)、『大人の男こそオシャレが似合う』(草思社)、『文庫 絵で見る明治の東京』(草思社)、『絵本アイビー図鑑』(万来舎)など。絵を担当した作品に『新装版 法隆寺』西岡常一・宮上茂隆著(草思社)など。訳書『男の着こなし』チャールズ・ヒックス著(草思社)。子どもの本に『宇宙ステーション』長友信人著(福音館書店)などがある。

「2021年 『すてきなタータンチェック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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