旅行ガイドブックから読み解く 明治・大正・昭和 日本人のアジア観光

著者 :
  • 草思社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224026

作品紹介・あらすじ

昔はアジア旅行も大らかだった。
日露戦争後、明治末からとたんに東アジアへ旅行に行く人が増えて、各種旅行ガイドブックが刊行されてきた。
読み捨てられたそれらのガイドブックを古本で集め、丹念に読み解く作業を続けると、歴史のリアルな実相が見えてくる。

船や鉄道の乗り継ぎ、観光地、旅館、ナイトライフ、通貨、パスポートなど、
現代の旅行客と同じ問題を当時はどうやって解決していたか。
鉄道や旅行の歴史に詳しい著者が、時刻表や路線図などを駆使して、昔のアジア旅行の実態を検証。
楽しい観光旅行を追体験したり、戦後の団体旅行ブームや、閉鎖的な社会主義国への旅行など、
朝鮮・満州・中国・台湾の激変する歴史を旅行という観点から見直した稀有な論考。写真、図版多数挿入。

感想・レビュー・書評

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  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001174837

  • ●大正8年、朝鮮、満州、支那、ガイドブック。今で言うと2万くらい。万里の長城より南を中華という考え。
    ●団体旅行が主。割引もあった。10日程度で給料1ヵ月分くらい。今と同じくらいか。
    ●東アジアはパスポートなしでも。
    ●飛行機の定期では昭和3年から。鉄道と船の5倍の料金。
    ●沖縄渡航は準外国扱い。パスポートなしだが、所持が前提での許可。
    ●女性は着物姿での外国旅行が推奨されていた。

  • 2019年10月読了。
    旅行ガイドから見た「旅行」(主に東アジア地域への)の変遷。「旅行の歴史」を過去の旅行ガイドから遡って見ていく、資料をふんだんに使っていて読み応えあり。
    今でこそ旅行は手軽な娯楽として誰もが楽しめるわけだが、そのようになるに至るまでにはかなりの遍歴があり、今や大抵の国にビザなし渡航できる「ほぼ無敵の日本国パスポート」を得るまでは大変に海外渡航はリスクもあった。他方で戦争や戦間期に獲得した日本の海外領土(台湾、朝鮮半島、南洋諸島、満州)は、一部の人に限られていたものの、娯楽を提供するだけでなく、手近な「海外体験」の提供地でもあった。
    図表、写真、資料の画像等、豊富な視覚資料が盛り込まれていて読んでいて楽しい。
    「自分が当時旅行をし得る立場にあったなら、こんな旅行をしたかったなあ」とか「次の旅行にはこんなエリアに行ってみよう」とか、あれこれ考えながら読んだ。

  •  過去のガイドブックの記述を紐解くもの。全体の2/3は戦前の記述。大正から1930年代いっぱいは、都市部の中流階級以上の日本人にとって東アジア旅行は国内旅行の延長感覚で手の届くものだったという。パスポート不要の地域や期間もかなりあったようだ。旅行記ではないのでそれほど生々しくはないが、それでも費用や言葉、周遊割引切符、金剛山登山案内などの旅行情報は読んでいて楽しい。当時の旅行者が何を見て何を思ったのか思いを馳せる。
     残り1/3は戦後の旅行事情。金さえあれば一般人が自由に旅行できるようになったのは昭和40年代からだが、特に中台に関する記述は当時の政治情勢が色濃い。また、『ブルーガイド』のような一般ガイドブックでさえ、東アジア旅行での売春役立ち情報を婉曲にせよ書いているのには隔世の感がある。社会通念の変化もあるだろうか、著者は女性の旅行者が増加したことを理由もして指摘している。

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著者プロフィール

昭和50年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業科学専攻博士後期課程単位取得退学。日本及び東アジアの近現代交通史や鉄道に関する研究・文芸活動を専門とする。平成7年、日本国内のJR線約2万キロを全線完乗。世界70ヵ国余りにおける鉄道乗車距離の総延長は8万キロを超える。平成28年、『大日本帝国の海外鉄道』(現在は『改訂新版 大日本帝国の海外鉄道』扶桑社)で第41回交通図書賞奨励賞を受賞。 『鉄道と国家──「我田引鉄」の近現代史』(講談社現代新書)、『旅行ガイドブックから読み解く 明治・大正・昭和 日本人のアジア観光』(草思社)、『宮脇俊三の紀行文学を読む』(中央公論新社)、『アジアの停車場──ウラジオストクからイスタンブールへ』(三和書籍)、『「日本列島改造論」と鉄道──田中角栄が描いた路線網』(交通新聞社新書)など著書多数。日本文藝家協会会員。

「2022年 『アジアの一期一会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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