生き物の死にざま

著者 :
  • 草思社
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感想 : 180
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224064

感想・レビュー・書評

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  • 語り口調がとても良く、詩的で淡々と、それでいて深い話の数々久しぶりに、誰かに薦めたくなる本でした。

  • メメントモリ=死を思え、という言葉が思い浮かんだ。
    陳腐な表現になるが生命の尊さを知るにはとてもよい事例が並んでいる。次は子供と読みたい。

  • 様々な生き物の死について、科学的に正確な知識を詩情を
    もって紹介するという稀有なエッセイ。受け付ける人と全く
    ダメな人に別れる文章だと思うが、極端な擬人化に走って
    ないという点で私にとっては許容範囲。好き嫌いで言うと
    微妙だが。あえて詩情を一切盛り込まない方が抒情的になる
    という場合もあるのではないか、などと。

  • セミ…昆虫は硬直すると足が縮まり関節が曲がる。なのでひっくり返ったまま力尽きる。

    ハサミムシ…子育ては子供を守る強さを持つ生き物だけに許された特権。生まれた幼虫は母の体を食べる

    サケ…海は危険な場所。卵の生存率を高めるため川に戻る

    カゲロウ…成虫は子孫を残すためだけのステージ

    カマキリ…雄を食べた雌は通常の2倍以上もの卵を産む

    アンテキヌス…繁殖期間は2週間。その後雄は死ぬ。

    チョウチンアンコウ…雌に癒着した雄はヒレも眼も失う

    タコ…交接は生涯一度。雄は死ぬ。雌も孵化したら死ぬ

    ベニクラゲ…プラヌラから、ポリプ→ストラビラ→エフィラム→成体→ポリプ→とループする

    シロアリ…ゴキ〇リ目。歩けない女王は、卵を産めなくなると置き去りにされる

    兵隊アブラムシ…生まれながらの少女兵。(アリは成長後に兵隊の役割を果たす)

    ワタアブラムシ…春から秋は雌の単為生殖。クローンなので環境が合わなければ全滅するので、秋の終わりには雄と交配し多様な子孫を残す。

    ハダカデバネズミ…老化という仕組みを退化させた。

    ミツバチ…寿命は一ヶ月。後半の2週間が蜜を集める期間

    ヒキガエル…昔は蝦蟇(がま)と呼んで蛙と区別していた。ピョンピョン跳ねずにのそのそ歩いて移動する。

    ミノムシ…別名「鬼の子」。雌は成虫になったらミノから出ない。

    シマウマ…老衰はない。その前に食べられてしまうから。

    ライオン…一度の出産で二〜三頭産む。シマウマは一頭。ライオンはシマウマより生き残る確率が低い。

    ニワトリ…世界で200億羽が飼育。人口75億の2.5倍。生きたまま首を切るのは可哀想と、電気の流れる水槽に逆さ釣りのまま頭をつけられて、気絶させてから首を切る

    ゾウ…寿命は70年。死んだら食べられ、骨は風化する

  • 2時間程度で読み終わる量で気分転換にちょうど良かった。

    生きることとはなんなんだろうと思った。
    子孫を残せたタイミングで命が終わるようにプログラムされている生き物たち、効率よく子孫を残すためにプログラムされている生き物たち。

  • 身近にいる(あるいは、TV番組などで度々取り上げられている)動物や昆虫がどのように生き、どのように死んでゆくのかを簡潔にまとめた作品集です。
    それぞれの生きものの「死にざま」に対して、筆者がひとこと添えているのですが、そのコメントが秀逸で、読んでいて思わず一緒に考えさせられます。
    また、これまでに知っていた(思い込んでいた)知識が修正されたり、全く知らない情報に触れたりすることもあり、興味深く読むことができました。

    例えば、「ゾウの墓場」として知られるように、ゾウが死期を悟って群れを離れてゆく、というエピソードは事実ではないということや、クラゲやハダカデバネズミは「不老長寿」で老いることはない一方で、事故や病気、捕食されることなどから逃れることはできずに「不老不死」でありながら「死と隣り合わせ」という環境にあるということ。
    これらの知識は新たな発見で、面白く読むことができました。

    「死」を理解するとされる人間と、それ以外の生き物の間に、はたしてどれだけの乖離があるのか(人間だけが万物の霊長としておごっていてよいのか)、考えさせられます。

  •  働き蜂として40数年生き(結構充実し、今思うと楽しかったですw)、子供二人、この本を読むと、もう往生していていい身分ですがw。有難いことです。稲垣栄洋「生き物の死にざま」、2019.7発行。29の生き物の限られた命を懸命に生きる姿を描いた作品です。蝉、ハサミムシ、鮭、やぶ蚊、カマキリ、蛸、ウミガメ、アリ、蜜蜂・・・。子孫を残すための壮絶な生き様に感動しました。ニワトリ(ブロイラー)、実験動物のネズミについては、生き方とは言えない哀しい生涯、ただ、御免なさいのひと言です。

  • 面白いです。寝る前に読むのにちょうど良い。いや、あんまり気持ちよく眠れないかも?でも、私にはちょうど良い知識と、文章。声に出して読むにもちょうど良く、子どもがまたいいリアクションで聴いてくれます。息子は「なんか切ないな~」と言っていたけど、生き物はシンプルで潔い!無駄がなくて美しい!!それに比べて人間は…と、ぼやくしかない。子どもと生物について、環境について、生死についてなどなど一緒に考えられる一冊です。

  • 静岡大農学教授稲垣栄洋さん著
    メスに食われながらも交尾をやめないカマキリのオス。
    海の生物で珍しく子育てをするタコの壮絶な最期。
    卵を産めなくなった女王蜂をさっさと見捨てるシロアリ。50日間で無理矢理太らせ出荷するブロイラー。
    実験室で生まれ実験室で死んでゆくマウス。
    売れ残ったペットショップの子犬は殺処分。
    終盤は悲しい気分に

  • ●蝉は必ず上を向いて死ぬ。昆虫は硬直すると足が縮まり関節が曲がる。そのため、地面に体を支えることができなくなり、ひっくり返ってしまうのだ。最後に空が見えない。
    ●ハサミムシは、母親が卵をまもり、最後は孵化した子供に身を捧げ果てる。
    ●水温の低い川は餌が少ない。だから海へ出て行く。しかし海は天敵が多い。卵の生存率を上げるため、自らの危険を顧みずに川に戻る鮭。
    ●蚊は普段は花の蜜や植物の汁を吸って暮らしている。産卵期だけメスが血を吸う。
    ●兵隊アブラムシはクローン兵
    ●しろばんば。雪虫と呼ばれるアブラムシは何種類かあるが、秋の終わりに翅のあるメスが生まれ、空を舞って移動する。そしてオスとメスを産み、交尾をして冬を越える卵を産む。春から秋はクローン、翅で移動して、新しい環境に分布しながら多様な子孫を残すという二つの戦略を使い分けている。
    ●ミノムシのメスは一生蓑の中
    ●シマウマに老衰はない。その前に食べられてしまう。ライオンやハゲタカに。
    ●象は本当に死を悼むのか?

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著者プロフィール

稲垣 栄洋(いながき・ひでひろ):1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する記述や講演を行っている。著書に、『身近な雑草の愉快な生きかた』『身近な野菜のなるほど観察録』『身近な虫たちの華麗な生きかた』『身近な野の草 日本のこころ』(ちくま文庫)、『植物はなぜ動かないのか』『雑草はなぜそこに生えているのか』『イネという不思議な植物』『はずれ者が進化をつくる』『ナマケモノは、なぜ怠けるのか』(ちくまプリマー新書)、『たたかう植物』(ちくま新書)など多数。

「2023年 『身近な植物の賢い生きかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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