- Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794809957
作品紹介・あらすじ
賽銭箱に100円玉投げたら、つり銭でてくる人生がいい」。これは長渕剛の名曲「RUN」の一節だ。大学について、これほど的確にいいあらわしたことばはない。わたしはもう大学をでて五年になるが、おもっていることはただひとつだ。カネを返せ。
おさないころから大学にいけば幸せになれるといわれ、そうかとおもっていってみれば、とんでもない授業料を請求される。しかも、学部四年かよってみてもぜんぜん幸せにならない。それではとおもい、大学院にもいってみたところ、状況はさらにひどくなる。さらに、カネがないなら奨学金があるよといわれ、もらってみればじつのところ、多額の借金。いまや635万円にふくれあがってしまった。カネ、カネ、カネ。地獄である。きっと、これはわたしのような院卒ばかりでなく、おおくの卒業生にもいえることだろう。
ほんらい、大学とは幸せの賽銭箱みたいなものである。幸せをねがい、あればカネを投じるし、なければ両手をあわせて祈ればいい。仏はひとを差別しないし、見返りも期待しない。カネを投じたひとにも、両手をあわせたひとにも、なにもしなかったひとにも、つり銭がでてくるはずだ。そして、ひとの幸せに尺度はない。恋がしたい、酒がのみたい、おいしいものが食べたい、本がよみたい、おしゃべりがしたい。どんなことをねがってもいいわけだし、どんなねがいかたをしてもいいわけだ。幸せは、ふくらめばふくらむほどいい。大学には仏がいる。真実だ。
でも、いまの大学は、「社会に役だつ人生」「役所や企業でのしあがる人生」だけが幸せなんだとウソをつき、大金をむしりとって、やれ就職だ、やれはたらけと、みんなを地獄におもむくように駆りたてている。まるで、仏ではなく、強欲な生臭坊主がいるみたいだ。どうしたらいいか。ヤッツケルしかない。本書では、そのための武器として「学生に賃金を」ということばを提示した。これほどまでの高学費は、なにを意味するのか。学生を借金漬けにすることで、だれが得をしているのか。そんな問いをひとつひとつ考えながら、まずはカネを返してもらうところからはじめよう。(くりはら・やすし)
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
「学生に賃金を」というのは、70年代のイタリア・アウトノミア運動において提唱されたスローガンで、時代の変化とともに労働の形態が変化する中で、大学生が労働者としての性質を帯びるようになった事態を強く告発する言葉として出てきた。早い話が、「うちらの勉強していることって、好きにやってるわけだけど、同時に社会の要請の中でやってるわけで、少しはカネ出てもよくね?」という話で、特に学費の無償化のための運動として訴えられた。学費はタダにしろ。さらに分け前をよこせ、ということ。
昨今、何かと話題を集める学費・奨学金問題について、単に「それひどいよ」というだけではなく、もっと掘り下げたところで「なぜ大学はタダでなければならないのか」というところを考えている。借金たくさんしょい込むのはつらいが、実務的な解決策にとどまらない、思考のラディカルさが、生活の豊かさとどこかでつながりうるのではないか、とか考えつつ。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784794809957 -
奨学金っていう借金もち。