品格なくして地域なし

著者 :
  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794962898

感想・レビュー・書評

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  • ウィキペディアによる「地域おこし」の定義は以下の通りだ。また、その歴史的な背景が下記の通りまとめられている。

    【引用】
    地域おこし(ちいきおこし、地域興し)とは、地域(地方)が、経済力や人々の意欲を(再び)向上させる、人口を維持する、(再び)増やすためなどに行う諸活動のことである。地域活性化、地域振興、地域づくりとも呼ばれる。

    次のような問題が地方に複合的に起きている。
    ■産業の空洞化と雇用の減少
    ■人口の流出、人口の減少
    ■地域文化の伝統の途絶
    よって次のようなことのいずれか、あるいは複数、全部を目的としているのが地域おこしである。
    ■産業の立て直しによる雇用の創出や維持
    ■若者の人口流出の歯止め・回復。新規住民の呼び込み。子供のいる家族の呼び込み
    ■地域文化の担い手の確保と継承
    【引用終わり】

    本書は、関川夏央・日下公人・奥本大三郎・森まゆみ・津野海太郎による共著である。実際に地域おこしの現場を調査してみてレポートを書くことを目的に「地域文化研究小組」という研究チームをこの5人でつくり、実際にレポートを作成してみたものが本書である。
    5人とも、基本的に地域おこし活動に対しては辛口である。辛口の彼らが、それでも、将来に向かっての可能性を感じた地域おこし活動を本書で紹介している。
    ただ、彼らの立場は、「経済を向上させる」「人口を維持する/増やす」等といった上記で掲げられていた目的を所与のものとせず、そこに住んでいる人たち自身が、まず目的設定から考えることが必要、というものである。そして、それらは、例えば、郷土資料館や博物館や劇場等を建設するといったありきたりのものではなく、その地域の人たちのオリジナリティが必須のものであるとしている。
    「地域おこし」とか「町おこし」について詳しい訳ではないし、成功例や失敗例を具体的に知っているわけではないが、共著者たちの感覚には、賛成だ。

    本書を読んでいたちょうど同じ時期に、日経新聞の夕刊に、Walk Japanという会社のCEOであるクリスティ・ポールさんという方が、ご自身の来歴と共に、Walk Japanの活動の紹介を連載されていた。
    Walk Japanは、インバウンド観光コースを外国人向けに提供している会社だ。そのコースが、一般的にイメージされる観光コースとは全く違っていることに新鮮な驚きを感じた。Walk Japanのコースは、日本国内のあちこちを回るのではなく、一つの地域を徒歩で巡り、その地のローカルの日本人と接触することを含めて、地域を深く知ることをコンセプトに設計されている。
    例えば私の故郷でもある、大分県の国東半島を巡る徒歩の旅、「Self-Guided Kunisaki Wayfarer」は、5泊6日で18万円のコースとなっている(なお、Wayfarerは、徒歩の旅行者という意味)。国東半島は、奈良時代から平安時代にかけて寺院群が築かれ、「六郷満山」と呼ばれる独自の仏教文化が栄えた場所であり、数多くの寺院・神宮が存在し、また、山岳美を感じる自然に恵まれた地域でもある。その国東半島を、6日間かけて、1日あたり10-15km程度トレッキングし、地域の旅館で温泉や美食も楽しみながら巡る旅である。Walk Japanのホームページで、このコースを見てみると、非常に魅力的なコースに思える。クリスティ・ポールさんご自身が国東半島を気に入り、イギリスから移住をしており、ご自身も自信をもって設計したコースなのだろうと思う。
    私の言いたかったことは、このような、地域の全ての魅力を満載した、すなわち、地域の自慢と誇りを世に問うような活動が、本書で共著者たちが主張している「地域おこし」のコンセプトにぴったり当てはまるのではないかと感じたということだ。願わくばイギリス人に先を越されるのではなく、地元の人たちで先につくって欲しかったが、逆に、外国人だから・ここに住んでいる人でないから、この地の魅力を客観的に見つけ出すことが出来たというのも当たっているだろう。

  • 1996年12月20日 2刷、カバスレ、帯付
    町おこし「ブーム」は終わった。
    2014年2月28日鈴鹿白子BF

  • 地方出身の自分は地方に住みたくないと考えてしまった。
    地域のレベルが落ちている。TV,雑誌に載ることが自慢⇒レベルが低い!
    地方に残る人は高齢者、低学歴者、自営業者⇒厳しいがするどい!
    一番得をするのは地方政治家⇒選挙のため⇒本当の発展とは異なる。
    地方でも結局同じ建物。(フランチャイズ店、しゃれた西洋料理店等)

  • ナガオカケンメイ氏が薦めてはったので



    2016年1月16日読了。

    若干時代錯誤な内容もありますが、20年前の本とは思えない指摘がされています。
    今の地方自治体で働く人、”まちおこし”なんちゃら係とかで働く人には是非一読して頂きたい本です。

  • 内子・湯布院・米子(今井書店 本の学校)・函館野外劇
    優佳良織・的矢牡蠣・松坂牛

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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