しあわせとお金の距離について

著者 :
  • 晶文社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794970848

作品紹介・あらすじ

老後の不安はお金があれば解消するのだろうか? 守るだけでは楽しい老後は手にはいらない。
高齢になっても家を維持できるか? 趣味こそリスク分散? 高齢者の楽しい働き方は? 同窓会に着ていくスーツは買うべき? 
大きな問題から小さな問題まで、人生100年時代のお金としあわせの距離を測る。
自分の人生を楽しく生き切った、そう思えるように、私たちがほんとうに準備しなければならないことがわかる本。

感想・レビュー・書評

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  • 長寿化はその分お金がかかるという不安があるが、かといって金を貯めたら安心できるというわけでもない。これから老後を考える上で参考になるヒントを教えてくれる。
    自分の人生とか人との付き合いの終わりを2年とかで終わるものと考えて行動したら充実したものにできる。この考えは自分の今の時間にゆとりある生活と茶の湯との向き合い方についてまさにそう。資産を今さら増やすことを考えるのではなく、いかに使うかを考える。ここはゼロで死ぬに同じ。人への親切やお裾分け、適度な距離感が幸福に繋がる。終の住処の考え方、保険と健康、海外旅行の面白さ、終活、賢い買い物についてなど。

  • 使って楽しむのがそれなりに難しい、は確かに同意する。
    賢く買い物をする。ポイント還元をもらう。ああ、この人は今日は気持ちがいっぱいで大変なんだ。医者に、皆さんこそ大変なお仕事ですから体を大切にされてください。組織のルールを受け入れて働く、理不尽に耐える力、特に年を取ってから。趣味のリスク分散。スポーツ、ゲーム系、芸術鑑賞、表現。人間関係の複数化。手放すときにブランド物のほうが手放しやすい。

  • 資産形成のための方法を考える本ではなく、しあわせに人生を全うするためにお金とどう向き合えばよいかの心得について語った本。

    資産運用を考えるためにいろいろな書籍を読む前に、この本を読んで少し視野を広げておくことは、有益なのではないかと感じさせられるような内容だった。

    人生100年時代と言われる中で、老後の生活を成り立たせるためには貯蓄や資産形成が必要というのは、ある程度は正しい。ただし、老後の不安が心理的に増大しすぎて、様々な運用手法に手を出して資産を増やすことにのみ必死になると、逆に過剰に自分の資産をリスクにさらすということにもなりかねない。

    本書の中で「老後破産教」と述べているが、不安が増大して1,000万円よりは2,000万円、それよりは3,000万円を貯める方法はないかというように、少しでもお金が多く有った方が良いという考え方に憑りつかれてしまう。

    筆者は、どう貯めるかだけではなく、どう使うかということにも目を向けるべきだと述べている。どう使うかを考えることで、いくら貯めるか、どう貯めるかということにももう少し冷静に向き合うことができる。

    筆者がお金の使い方に関して繰り返し強調しているのは、しあわせになるためにお金を使うということである。自分が充実した時間を過ごすことができると感じられること、何度も使ってその度に快適さや美しさを感じられる服や日用品、他人のためになるような贈り物や寄付など、人によってそれぞれではあるが、自分の心にしあわせが感じられるような使い方が重要であるということだ。

    逆に、お金を節約するためだけの我慢や、使うかどうかわからないけれどもバーゲンだからと言って買う品物などは、しあわせを感じられるというよりは、それによってお金を得したように感じられることに意味を見出している。結果として、自分のしあわせよりもお金の額に向き合った人生を送ってしまうことになると、筆者は警告している。

    本書の中盤から後半では、住宅、保険、終活といった老後の生活を考えるうえで大きなテーマとなる事柄について、それぞれの章を設けて筆者の考えをまとめている。

    住宅というのは、多くの家計にとって最大の資産であると同時に最大の負担にもなっている。これは、住宅ローンという意味での負担だけではなく、それを維持管理していくこと、いざというときに現金化することが難しいという意味でのリスク、相続するにあたっての親族間での調整の難しさなど、様々な要素を含んでいる。

    そのため、筆者は資産としての住宅にあまり肯定的な評価をしていない。むしろ、売却やリースバックなどでいざというときに身軽に動くことができるような方法を、早いうちから確認しておくべきだということを述べている。

    保険も、いざというときに思ったほどに役に立たないという性格があるということで、肯定的な評価をされていない。医療保険などは、80代、90代になった時には適用できないものも多く、そうであればそれまでの20年、30年間に毎月一定額を貯金しておいた方が結局は多くのお金を自分のために充てられるということもあると述べている。

    いずれも、老後の賃貸住宅を借りることの難しさや、60代、70代での病気に対する備えといった点で、気をつけるべきことはあると思うが、老後の備えに対して別の考え方を指摘してくれるという意味で、有意義であると感じた。

    終活については、とても心を楽にしてくれるような内容だったと思う。趣味や生きがいは無理して見つける必要はないし、何かひとつのことに打ち込むよりもリスク分散をしておいた方が末永くしあわせに過ごすことができる。副業や海外旅行は、定年退職後と言わず、今すぐに始めればよい。お墓や葬式のことで頭を悩ませすぎない方がよい。どれも、誰かかから言われて何となく考えていた正しい老後や正しい終活のあり方を、もう一度考え直してみるきっかけになる指摘だと思う。

    全体を通して、お金を軸に考えるのではなく、自分がしあわせに人生を過ごしていくためにはどう行動すればいいのかということを軸に考えるべきであるというのが、筆者の一貫したメッセージであると感じた。本書で述べられているような考え方をひとつの参考にしながらも、自分の生活を見つめ直してみることが大切なことだと思う。

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著者プロフィール

経済評論家、ジャーナリスト。1961年、東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、東京大学社会情報研究所教育部修了。JPモルガン、チェースマンハッタン銀行で銀行員としてデリヴァティブを担当。その後、短期の国連ボランティア、企業コンサルタント、放送作家を経て、テレビ、ラジオ、雑誌などで経済やマネーについての経済評論家、コメンテーターなどを務めている。
近著に『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』『年収300万~700万円 普通の人がケチらず貯まるお金の話』(ともに扶桑社)、『なぜかお金がなかなか貯まらない若いサラリーマンが知っておきたいお金の教科書』(大和書房)、『お金が増える不思議なお金の話』(方丈社)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)などのほか、趣味の海外旅行を活かした『ガイドブックにぜったい載らない海外パック旅行の選び方・歩き方』(アスペクト)や『海外パックツアーをもっと楽しむ本』(PHP研究所)、『アジア自由旅行』(島田雅彦氏との共著、小学館)などの旅行関連の著書がある。

「2021年 『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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