残酷人生論

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784795811935

作品紹介・あらすじ

気鋭の哲学者が当たり前の人生観・見せかけの知性を一刀両断する!

感想・レビュー・書評

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  • 以下 引用(途中)。

     何の書かというと、たんなる嗜好の処である。しかし、この「たんなる」の、世にいかに困難なことであることか、まさにあれら凡百の人生論示すところではなかったか。
      考えることは、悩むことではない
     世の人、決定的に、ここを間違えている。人が悩むのは、きちんと考えていないからにほかならず、きちんと考えることができるなら、人が悩むということなど、じつはあり得ないのである。なぜなら、悩むよりも先に、悩まれている事柄の「何であるか」、が考えられていなければならないからである。「わからないこと」を悩むことはできない。「わからないこと」は考えられるべきである。ところで、「人生いかに生くべきか」と悩んでいるあなた、あなたは人生の何をわかっていると思って悩んでいるのですか。(「プロローグ」p.8)

    普通に人が、死ぬのは嫌だと思っているのは、死んだら、したいこと、したかったことが、もうできなくなるという理由によるようだ。しかし、これはおかしい。なぜなら、死んだら、したいことができないと悔やんでいるところの主体も無いはずだからである。可能性を失ったと思うところの主体が無いのだから、可能性を失うということもないのである。すると人は、何を失うことを恐れて、死を恐れているのだろう。(「人はなぜ死を恐れるのか」p.17-18)

  • 「一般的に『不幸』に類する境遇にあるように見える人の口から『それでも私は幸福だ』の一言を聞くと我々は驚く。同時に驚いた自分の不遜を恥じる。幸福である能力において、この人は数段優れているのだ。宿命を認め、宿命に沿うこと。それが幸福つまり心の平安である」

    「生死」「自由」「善悪」「魂」「幸福」など、人間の本質的なテーマを主題として、著者の考えが展開されている。

    その他、「倫理と道徳」では『倫理とは自律的なもの。道徳とは他律的なもの。倫理的行為は、内的直感によって要求されるが、道徳的行為は、外的規範を参照にして課せられるもの』など。

  • 他人を説得しようとする気が感じられない。
    一人相撲をしている感じ。

    著者は、「「哲学」というものの考え方は、誰がどのように考えてもそのように考えられるという仕方で、これらの事柄を「考えられる」のであって」(9頁)と言っているが、そうすると著者のやっていることは「哲学」ではないのだろう。
    日記かエッセイか。

    他の学者には「モノローグ」とか言われているようで、私も同じように感じた。
    著者自身も何故かそれに肯定的だが、それでいいのか?

    論理もガバガバ。
    例えば、著者は「死は存在しない」(117頁)としていて、それを前提に話を進めているんだけど、「死が存在しない」理由は全く説明されていない。
    存在しない作り話に恐怖することは普通にあるし、死という状態が観念できる以上、少なくとも「死が存在しない」ことは自明とはいえないのではないの?

    また、「考えること」や「論理」が大事などと散々言っておきながら、「わかるのである、わかるものなのである。」(198頁)とか、「体質的に」(204頁)とか、やたら感覚的なことを理由にしている。実に自分に都合がよろしい。

    なお、「残酷」人生論というタイトルは、「考えることは、残酷なことである」というところからきているようだ(10頁)。
    私は、この本には「残酷」というより「適当」という言葉の方があっていると思ったが。

    「14歳の哲学」を読んだときにも思ったけど、なんでこの人の本が人気あるんですかね。

  • 彼女こそ哲学者だと思う。中島義道氏然り、考えることに全力を注ぎ込む姿は圧巻。どこぞの大学教授のようにパズルを作って悦に入っている馬鹿とは違う。

  • (2001.06.01読了)(2001.03.02購入)
    (「MARC」データベースより)
    生きて死ぬのはなぜ? 人を殺して何が悪い? 体を売って何が悪い? あなたがあなたであるのはなぜ? あなたはこれらに答えられますか。当たり前の人生観・世界観、見せかけの知性への哲学者からの異論。

    ☆池田晶子さんの本(既読)
    「帰ってきたソクラテス」池田晶子著、新潮社、1994.10.15
    「オン!」池田晶子・埴谷雄高著、講談社、1995.07.07
    「悪妻に訊け」池田晶子著、新潮社、1996.04.25
    「メタフィジカル・パンチ」池田晶子著、文芸春秋、1996.11.20
    「死と生きる 獄中哲学対話」池田晶子・陸田真志著、新潮社、1999.02.20

  • 2011.10
    残酷人生論
    精神の本質が善であると精神が認識する限り精神はそれを要求せざるを得ない
    悪いことはしたくないからしないということと、悪いことはしてはいけないからしないということとの決定的な断絶
    善悪を知らないというそのことが悪い
    知らないということが悪いことだと知らないことが悪い
    それは誰にとっても悪くはないが、お前にとってだけは大いに悪い
    人は真理を知るべく創られている
    その受動のられる、の能動の主語が、信仰によらない事実としての神である
    救いというのはありのままの事実を認めること
    これは存在は存在すると認識することにほかならない
    自分を救うとは存在に救われること

  • ものすごく嫌いだけど大好き.
    小林秀雄が本当に好きなんだね.

  • 世界が変わりました。何度でも読みたい本です。

  • 大学一年生の頃にハマっていた、池田晶子氏の本を本棚か引っ張り出して久々に読んでみた。三年前に一読した時よりも理解度は上がっていたが、やはり観念的に物事を解釈するのは私に向いてないようだ。しかし、池田氏の良い意味での自己陶酔した文章には魅了された。

  • 衝撃でわらけます。「在る」に目覚めます。中毒です。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。文筆家。専門用語による「哲学」ではなく、考えるとはどういうことかを日常の言葉で語る「哲学エッセイ」を確立して多くの読者を得る。とくに若い人々に、本質を考えることの切実さと面白さ、存在の謎としての生死の大切さを語り続けた。著書多数。2007年2月23日没。

「2022年 『言葉を生きる 考えるってどういうこと?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田晶子の作品

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