農協の大罪 (宝島社新書)

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  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784796667203

感想・レビュー・書評

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  • 5月19日購入。これから読みます。

  • 農政をめぐるアクター間(官僚・政治家・農協)がどのように関係しているかについて見えてくる。農業の構造についての理解も得られるので問題意識がある方は読むといいと思います。

  • 元官僚が書いた告発書です。

    1)日本の農政はスローガンばかりが幅を利かせ
    実務が伴わない。

    2)米価が政治問題化しすぎ。

    3)農協+農林族(政治家)+農水省
    のトライアングルが自分たちの利権だけを考えている。
    「農協栄えて、農業滅ぶ」

    よくぞ、タブーに触れて書いてくれたという思いと
    いっぽうで単なるガス抜きじゃないかという失望と
    いろんな思いが交錯します。

  • 農家ための農協であるはずが、組織維持のために利益確保を優先し、農家を苦しめ、農業を衰退させているという話。

    この本では、農協によって及ぼされる悪影響として「ミニマムアクセス米」「減反政策」「政治家、官僚との悪の三角関係」の3つが大きく取り上げられている。 

    これだけ好き放題していてなぜ誰からも非難されずに長年組織を継続してこれたかというと、莫大な組織票をバックにした政治家への圧力がすべての原因だと著者は主張している。
    この問題の根は深く、少人数で改革しようとしても農協につぶされてしまうということが多々あったという。

    しかし、最近では明るい光も少しずつ見えてきている。
    農協の組合員の大幅な減少、サブプライムによる影響から農協事業の根幹である金融事業での大損失、農協に否定的な世論の増加によって少しずつ政治への影響力が低下してきているらしい。そしてJA農協とは別の農協を自分たちで立ち上げて運営しながら農業をしている農家たちも少しずつではあるが出てきている。

    日本の農業を復活させるためにも農協とは切り離した農政を早く行えるようになってほしい。一日でも早くその日が来ることを望む。

    ◆memo

    農協は売上を上げるたもに米を高く売りたいので、高い関税を維持したい。その代償としてミニマムアクセス米と呼ばれる輸入米(米について関税化の特例措置をとって輸入制限を維持した代償として、また、その後の 99年に関税化に移行し、輸入禁止的な778%という高い関税を設定したことの代償として、日本が消費量の8%に当たる77万トンを低い関税率で輸入すると、WTOに約束しているもの)を大量に輸入している

    保管費用と売却損益を合わせると、95年度から06年度までで、716億円の財政負担がかかっている

    政府はミニマムアクセスをさらに消費量の5%上乗せし、120万トン以上に拡大する方向で交渉を進めている

    工業用の糊として売却するとトン当たり1万円程度だが、焼酎、あられ、せんべいなどの加工用途だと7万円、食用なら25万円から35万円で売却できる。横流しすると必ず儲かる

    GDPに占める農業の割合は1%にすぎないのに、日本の成人人口の1割が農協の職員、組合員、准組合員ということになる―OECDが計測した日本の農業保護額は、農業のGDPとほぼ同じである。つまり、保護がなければ、日本の農業のGDPはゼロとなってしまう

    20ヘクタール以上の米作農家の平均農業所得は1200万円を越えている

    農協の融資に占める農業への融資の割合は60年代までは50%を越えていたが、70年代以降急速に減少し、2007年代3月末では、わずか6%に低下した

    農協はその組織維持のためには、農家戸数を維持する必要がある。多数は兼業農家なので、専業農家の利益よりも、兼業農家の利益および兼業農家戸数の維持が組織活動の大目的となる。与党政治家にとっても、自らの生計を維持するためには、農民票を獲得して選挙で勝つことが大目的である。農水省にとっても、農業存続に必要な予算を獲得するためには、政治力を発揮することが必要となり、与党政治家、農協、根元的には農家に依存することになる

    食料自給率を40%から100%にするためには、今ある農地を4倍にしなければならない

    日本の取水量は300ミリで世界平均の6倍(世界平均の6倍)

  • 農協職員が疑問に思うことがいくつかあると思う。その疑問の答え、背景が見えてくる本。

  • や~、本当に酷い、政治の力学ってこうなると悲惨。というのが率直な感想。
    食糧問題だけでなく、環境問題、土地問題、など関連分野が広いだけにこれまでの政策の取り返しのつかなさが悔やまれる。

  •  農林水産省の元キャリア官僚のいうことだけに、説得力がある。 都市住民が、農家を等閑視しているその背景に、農林水産省・農政族・農協の愛憎半ばする「トライアングル」が存在しているかを描き出している。 「農業バブル」といわれるこのタイミングで、都市住民(マスコミ)の浮ついた気分に一石を投じる一冊であろう。 もちろん、現状の農業や農政の問題の全てを述べているわけではなく、また、農林水産省・農政族・農協それぞれ抱えている事情もあるのだろうが。 また、サイドストーリーではあるが、農地(水田)の「多面的機能」特に「水」に関する指摘は、以前から言われていることだが、着目に値する。

  • 汚染米発生の根本的な原因は「高米価」「減反政策」
     「高米価→高関税→ミニマムアクセス(輸入米)→汚染米」
     国産米:60キログラムあたり1万4000円⇔輸入されている中国産米:1万円

    ミニマムアクセス米がなくなれば、汚染米は発生しない
    それどころか国産米の価格は輸入米を下回るので輸出できるようにもなる

    経済原理から外れて高米価政策に転換した農政に対して、
    皮肉にも多数の農家は米単作兼業という経済原理に即した対応を取った。
    「高米価」「兼業」「農地転用によるキャピタルゲイン」

    農協(JA)
    食管制度の下、政府に対する米の供出期間として活用するために、
    戦前の統制団体を改組してくくった食管制度のもとで
    高米価の実現→農協の販売手数料の増加→農家が高い肥料・農薬を購入可能
    米代金は農協の口座経由で支払い→農家の諸経費を除いた余剰金(農地転売費用)は農協の預金となる
    農業が衰退する中で、農協は食管制度や農地制度を利用しながら順調に成長

    (途中)

  • 200911/「汚染米横流し事件」の背景/保護なしでは「GDPゼロ%」の日本農業/誰が日本の農業を衰退させたのか?/農協の台頭と「大罪」/農政トライアングルとは何か?/農協・農林族議員・農水省の「壁」/揺らぐ農協/農政が脅かす「食料安全保障」/強い農業を築くためにするべきこと//WTOは高関税を認める際、代償としてミニマムアクセスという低関税の輸入枠を提供させる⇒ミニマムアクセス米は政府で長期間保管⇒汚染米の原因/GDPに占める農業の割合は1%なのに、日本の成人人口の10%が農協職員・組合員・准組合員/通常農業は労働力の通年平準化が困難だが、中産間地域では標高差などを利用すれば、田植えと稲刈りにそれぞれ2~3ヶ月かけられる/減反がなければ1俵9500円で買える米に消費者は15000円を支払っている/国家がその存立によりて代表し、かつ利益を防衛すべき人民は、現時に生存するもののみにはあらず、後世万々年の間に出産すべき国民も、また之と共に集合して国家を構成するものなればなり(柳田國男)/農業団体が食料自給率向上を叫ぶ欺瞞/畑に花を植えることは食料自給率向上には貢献しないが、農地資源を確保できるので食料安全保障に貢献する。しかし花農家に農業保護政策はない/「水資源大国」だから発展した日本の工業/

  • 091027金子ゼミで推薦

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著者プロフィール

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
1977 年東京大学法学部卒業。ミシガン大学行政学修士、同大学応用経済学修士。博士(農学)。農林水産省ガット室長、地域振興課長、農村振興局次長などを経て、2008年より独立行政法人経済産業研究所上席研究員、2010年よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
主な著書に、『国民と消費者重視の農政改革 ―― WTO・FTA時代を生き抜く農業戦略』(東洋経済新報社、2004年)、『食の安全と貿易 ―― WTO・SPS協定の法と経済分析』(編著、日本評論社、2008年)、『環境と貿易 ―― WTOと多国間環境協定の法と経済学』(日本評論社、2011年)、『日本農業は世界に勝てる』(日本経済新聞出版社、2015年)など。

「2016年 『経済政策論 日本と世界が直面する諸課題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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